
術後に起こりやすい「無気肺」。
無気肺は、術後によく起こる合併症の1つです。無気肺を起こすと呼吸状態が悪化したり、肺炎になったりします。
ただし、無気肺を起こした患者さんへの具体的なケアがわからず悩んでいる方もいるでしょう。
本記事では、術後の無気肺を起こす原因や予防方法、肺炎との関係を解説します。無気肺を起こした患者さんのケアや観察項目を知り、日々の実践で活かしましょう。

大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟、循環器内科などで看護師として14年間勤務。主に急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療・看護・育児にまつわる記事の執筆や監修に力を入れている
X(Twitter):@shota_papa37
無気肺とは「痰や異物などにより、気管支または肺が閉塞もしくは狭窄して、その先に空気が入らなくなること」です。
無気肺を起こすと、肺の一部が膨らまなくなります。
臨床の場では、無気肺を「アテレク」と呼び、無気肺の状態を「肺がつぶれる」とよく表現します。
一般的に、無気肺の原因は以下のとおりです。

上記原因に加えて、術後は全身麻酔や人工呼吸器の装着、安静臥床の長期化などによって無気肺を起こしやすいです。
また、創部の痛みが無気肺の原因になる場合もあります。
というのも、心臓血管外科や呼吸器外科の術後では、胸の創部の痛みがあってうまく咳嗽できないためです。咳嗽できなければ、痰を出しづらく、その状況が続くと、痰が溜まり無気肺を起こすのです。
そのため、術後の患者さんは無気肺を起こしやすい状態といえます。
無気肺の範囲が狭い場合は、自覚症状はほとんどありません。
ただし、無気肺が広がると、低酸素血症や肺炎、呼吸困難、胸痛などの症状が現れます。ときには、喘鳴や咳嗽などが現れる場合もあります。
そのため、術後は無気肺の予防と拡大防止が大切です。
術後の無気肺は、3日以内で起きやすいといわれています。
特に人工呼吸器を使用するケースでは、無気肺を起こすリスクが続くと考えられます。患者さんの状態により無気肺のリスクは異なるため、注意深く観察を続けましょう。術後に起きる無気肺の観察項目は、以下の見出し「術後の無気肺の観察項目」で詳しく解説します。
ここでは、術後の無気肺の予防と看護ケアを解説します。
術後の無気肺の原因が胸水や腫瘍などではなく、長期臥床や人工呼吸器によるものであれば看護ケアで対処できる可能性があります。
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術後の無気肺のリスクを知るためには、術前の状態の把握が欠かせません。
というのも、喫煙習慣のある患者さんは、術後に無気肺を起こしやすいためです。ほかにも、高齢や肥満も無気肺を起こしやすい要因です。
特に、喫煙している患者さんには、禁煙を指導してください。手術の6〜8週間前から禁煙すると、無気肺のリスクを軽減できるでしょう(ただし、手術の2週間前からの禁煙でも、術後の呼吸器合併症は増加しないとされる調査もあります)。
病院によっては、検査入院した後に一度退院して、あらためて手術前に入院する場合があります。そのため、検査入院した段階で、禁煙を指導すると効果的です。
以下の呼吸訓練が、術後の無気肺を予防するために大切です。
インセンティブスパイロメトリーとは、呼吸練習器具を用いた呼吸訓練であり、腹式呼吸とともに、呼吸訓練法として古くから用いられています。患者さんにマウスピースをくわえてもらったうえで、長く息を吸い、3〜5秒間維持してもらうように指導します。
ハッフィングとは、排痰の訓練の1つです。術後は、創部の痛みによりうまく咳ができなくなります。そのため、咳ができるように、術前からハッフィングを指導しましょう。ハッフィングの方法は、以下の手順のとおりです。

この手順で実施すると、うまく咳ができるため痰を出しやすくなるでしょう。
臨床の場では、これら3つの呼吸訓練を術前に理学療法士が指導する場合もあります。この指導のあとは、患者さんの理解度に合わせて看護師と一緒に実施したり、患者さん1人で行ったりします。
術前から呼吸訓練を繰り返すことで、術後の無気肺の予防につながるのです。
早期離床を促すと、術後の無気肺の改善が期待できます。
具体的には、ベッドから足をおろして座ったり、ベッドサイドで立ったりなどします。ただし、術後は患者さんの状態が不安定であるため、離床を開始する際は患者さんの状態の変化に注意しなければなりません。
臨床の場では、理学療法士と看護師、もしくは看護師のみで離床を行うため、離床を中止する基準を主治医に相談しておくと安全に実施できます。
「脈拍が安静時より20回/分上昇したら中止」「血圧が安静時より30mmHg以上したら中止」など、具体的な中止基準を明記している病院もあります。
早期離床が難しい場合は、ベッドの頭位を挙げたり、体位変換したりするなど患者さんの状態が許す範囲でベッド上での訓練を実施しましょう。
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痰の貯留は、術後に無気肺を起こす要因の1つです。
病院によっては「2時間おきの吸引と体位変換」と決まった時間に吸引するところがあるかもしれません。
ただし、吸引は低酸素血症を引き起こしたり、気道を損傷したりするリスクがあるため、患者さんの呼吸状態や全身状態をアセスメントしたうえで実施してください。
適切な吸引方法で術後の無気肺を予防しましょう。

術後は、創部の痛みによりうまく咳ができず、痰を出せない恐れがあります。
咳ができず痰がたまることで、無気肺を起こしやすいです。
そのため、医師に確認したうえで、鎮痛剤を使って疼痛のコントロールを図ることが重要です。その際には、以下のスケールを使うと疼痛を評価しやすくなります。

看護師間で評価にバラつきがあると、患者さんの疼痛が増悪しているのか、軽減しているのか把握できません。
スケールを使い評価を統一することで、疼痛コントロールしやすくなるでしょう。
ここでは、術後の無気肺の観察項目を解説します。観察項目に従ってケアを実施しましょう。
術後の無気肺にかかわる呼吸状態の主な観察項目は、以下のとおりです。
無気肺があると、聴診で呼吸音を確認できなくなります。「左右で同じくらいの音が聞こえるか?」「肺の下葉まで空気が入っているか?」などを確認しましょう。
無気肺は、主に胸部レントゲンで診断されます。
術後は毎日レントゲンの検査を行うのが一般的です。患者さんの状態によってはCT検査を実施する場合もあります。
そのため、肺の状態が日々どのように変化しているのか把握し、無気肺の状態をアセスメントしましょう。
術後の無気肺と肺炎は関係があります。
肺炎になると痰の量が増えます。痰をうまく排出できなければ、気管の一部が塞がるため無気肺ができます。
一方で、先に無気肺ができた場合は、肺がしぼんだところに細菌が溜まり肺炎を起こすのです。
発熱や息苦しさ、胸の痛みなどを観察しましょう。無気肺と肺炎の関係を詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
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術後の合併症として「無気肺」と「肺炎」が発生するメカニズムについて
無気肺は術後に起こりやすい合併症の1つです。
無気肺を起こしても、多くの場合は自覚症状がありません。無気肺の状況が悪化すると、息苦しさや胸の痛みがあらわれ、肺炎を起こす場合もあります。
ただし、術後の無気肺の原因が胸水や腫瘍でなく、長期臥床や人工呼吸器によるものであれば看護ケアで対処できる可能性があります。
そのため、術後は呼吸訓練や早期離床を促し、無気肺を予防することが大切です。術後に無気肺ができやすい要因を把握し、予防的な介入を行いましょう。

大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟、循環器内科などで看護師として14年間勤務。主に急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療・看護・育児にまつわる記事の執筆や監修に力を入れている
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看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
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1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
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