
中心静脈カテーテルから高濃度の栄養剤を投与する「TPN(中心静脈栄養)」。
末梢静脈からは投与できないような高濃度の薬剤を投与できるのがメリットですが、その分リスクも伴います。
本記事ではTPN(中心静脈栄養)の看護のポイントについて解説しているので、ぜひ参考にしてください。

中心静脈栄養(以下TPNと表記)はTotal Parenteral Nutritionの頭文字をとったもので、心臓に近い静脈(鎖骨下静脈、内頚静脈など)にカテーテルを挿入し高濃度の栄養剤を投与する方法です。
末梢静脈ルートからは投与できないような高濃度の栄養剤の投与が可能なため、高カロリー輸液とも呼ばれます。
かつてはIVH(intravenous hyperalimentation)とも呼ばれましたが、現在は国際的にもTPNと表現されることが多くなっているようです。
また、患者さんの状態によっては在宅でも実施できるため、在宅で使用する場合にはHPN(Home Parenteral Nutrition)と呼びます。
TPNの主なメリットは次の4つです。
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続いて、TPNの適応と禁忌についてそれぞれ解説します。
TPNは、何らかの理由で消化器官を使用すべきでない状態が長期に渡る場合、または消化器官の機能が不十分で栄養の吸収ができない場合に適応となります。
胃がんの術後など絶食期間が短期間で済む場合は末梢静脈栄養法の適応となりますが、1つの目安として2週間以上の絶食が見込まれる場合には、中心静脈栄養法(TPN)の適応だと考えられています。
疾患や状態は以下のとおりです。
絶対的適応(=消化管を使用できない)
相対的適応(=消化管は使用できるが、十分な栄養摂取ができない)
TPNが禁忌となる患者さんもいます。
摂食嚥下機能の低下が原因で経口摂取ができない場合など、消化管が使える場合にはTPNの適応とはなりません。
また、重篤な腎障害や高窒素血症を認める場合も中心静脈栄養法(TPN)は禁忌となります。腎機能の低下により水分や電解質、アミノ酸の代謝産物である尿素等の滞留が起こり、さらなる腎機能低下を招くことがあるためです。

TPNは患者さんの生命維持のために重要です。
しかし実施中は合併症のリスクを伴うため、常に注意が必要です。
TPNの合併症として代表的なのが、カテーテル刺入部感染。
カテーテル刺入部が感染するとそこから全身に感染が広がり、患者さんの状態によっては命取りになることもある大変危険な合併症です。
感染の原因としては、中心静脈カテーテルと輸液ラインの接続部からの感染、輸液製剤自体の汚染、カテーテル刺入部(皮膚)からの感染が考えられます。
中心静脈カテーテルの閉塞にも注意が必要です。
輸液ポンプから閉塞アラームが鳴ったら、以下の3つを確認しましょう。
これらの所見がみられない場合、あるいは屈曲やねじれを直した後でも閉塞アラームが鳴る場合は、カテーテル先端部(体内の血管の中)に血栓が生じている、あるいは点滴に含まれるカルシウム塩や脂肪乳剤などが閉塞の原因となっていることなどが考えられます。
TPNでは高濃度の栄養剤を血管内に直接投与するため、高血糖や代謝異常を来すことがあります。
高血糖や水・電解質異常、酸塩基平衡異常に注意する必要があります。
バクテリアルトランスロケーションとは、腸管を使用しない状態が続くことで腸管への物理的な刺激が減少し、腸管の絨毛の短縮や酵素活性の低下、腸管粘膜のバリア機能低下などが生じることです。
そのような状態では腸管粘膜の透過性が亢進し、腸内に生息していた細菌が腸間膜リンパ節を経て肝臓や脾臓、腹腔へ拡がっていきます。
細菌による炎症が全身に波及すると敗血症に類似した症状を呈することがあり、大変危険な状態となります。
中心静脈カテーテルから空気が入り込むと、肺や心臓、脳などで空気塞栓が生じる危険性があります。致死的な状況となることもあり、重大な合併症であると覚えておきましょう。
もちろん末梢静脈ルートからでもそのリスクはありますが、末梢静脈は心臓から遠い静脈からの気泡混入であるため、気泡は血流により徐々に吸収・拡散され、呼吸により体外へ排出されていき、空気塞栓をきたす可能性は高くはありません。
一方中心静脈カテーテルは、その先端が右心房の近くにあるため、混入してしまった気泡は代謝されることなくそのまま右心房に流入します。心臓のポンプ機能で気泡が小さくなる場合もありますが、小さくならなかった場合は気泡がそのまま肺へ流れ、肺動脈や肺静脈中で肺塞栓を起こすことがあります。
末梢静脈ルートと同様に、中心静脈ルートも自己(事故)抜去されてしまう可能性があります。
自己(事故)抜去時には出血するため圧迫止血しますが、圧迫により体内に残っているカテーテルが奥に押し込まれてしまうことがあります。
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中心静脈栄養で用いる薬剤は、配合成分によって大きく5つに分けられます。
具体的な薬剤名は以下のとおりです。
| 配合成分による分類 | 薬剤名 |
| 糖・電解質液(TPN基本液) | ハイカリック(1号、2号、3号) ハイカリックNC(-L、-N、-H) ハイカリックRFリハビックス(K1号、K2号) カロナリー(L、M、H) |
| 糖・電解質・アミノ酸液 | ピーエヌツイン(1号、2号、3号) |
| 糖・電解質・アミノ酸・総合ビタミン液 | ネオパレン(1号、2号) フルカリック(1号、2号、3号) |
| 糖・電解質・アミノ酸・総合ビタミン・微量元素液 | エルネオパ(1号、2号) エルネオパNF |
| 糖・電解質・アミノ酸・脂肪乳剤 | ミキシッド |
通常中心静脈栄養法では、2~3日の導入期間を設け、一般的には糖濃度の低いTPN基本液から投与を開始します。血糖値の変動などを確認しながら、徐々に投与量や濃度を上げていきます。
上記表のようにTPN製剤にはさまざまな種類がありますが、数字が大きくなるほど、そしてアルファベットはL→N(M)→Hの順に濃度が濃くなるのはどの製剤でも共通です。
また中心静脈栄養法をやめる際は、通常は突然投与を停止することはありません。中心静脈栄養剤の投与を急に中断すると血糖値が急激に低下し、低血糖となってしまう可能性があるからです。
それぞれの薬剤についてもう少し詳しく解説します。
糖・電解質液は「TPN基本液」と呼ばれ、糖の量と電解質の種類によって薬剤名が変わります。
ハイカリックは、Na(ナトリウム)、Cl(クロール)を含まないTPN製剤です。
一方、ハイカリックNCはNaとClも含んでいます。ハイカリックRFは「Renal Failure(腎不全)」の頭文字をとっており、腎障害がある患者さん用の薬剤です。電解質が十分に排泄できないことを考え、K(カリウム)とP(リン)を含まず、Naなどほかの電解質の量も他剤より少なく作られています。
リハビックスは、小児に向けて作られたTPN製剤です。
K1号とK2号は電解質などのバランスが異なります。
ハイカリックの後発品であるカロナリーは、成分組成は基本的にハイカリックと同じです。
糖・電解質・アミノ酸液には、ピーエヌツイン(1号、2号、3号)があり、1号、2号、3号ではそれぞれ糖質量とアミノ酸配合量が異なります。
1つの輸液バッグに糖とアミノ酸が上下に分かれて入っているため、投与直前に2室の隔壁を開通してから投与します。
ピーエヌツインにはビタミンB1が含まれないため、ビタミンB1の補充が必要です。
糖・電解質・アミノ酸・総合ビタミン液には、ネオパレンとフルカリックの2剤があります。
ネオパレンは輸液バッグが3室に分かれているのが特徴で、3室それぞれの主な含有成分は以下のとおりです。
上室:アミノ酸、電解質、ビタミン
小室:ビタミン
下室:糖質、電解質、ビタミン
電解質は糖濃度に応じた配合量になっています。
フルカリックもネオパレンと同様、輸液バッグが3室に分かれています。
大室:糖質、電解質、ビタミン
中室:アミノ酸、電解質、ビタミン
小室:ビタミン
糖・電解質・アミノ酸・総合ビタミン・微量元素液には、エルネオパがあります。
エルネオパは、中心静脈栄養法開始時に耐糖能が低下しているあるいは不明である場合の開始液として用いる薬剤です。
エルネオパの輸液バッグは4室に分かれており、それぞれの含有成分は以下のとおりです。
エルネオパNFは、エルネオパよりビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンC、葉酸を増量、またビタミンKと鉄を減量させたものです。
エルネオパと同様、中心静脈栄養法開始時に耐糖能が低下しているあるいは不明である場合に開始液として用いる薬剤です。
糖・電解質・アミノ酸・脂肪乳剤にはミキシッドがあります。
輸液バッグは2室に分かれ、上室には糖と脂肪、下室にはアミノ酸と電解質が含有されています。
詳しくは後でも述べますが、脂肪分を含む製剤では中心静脈カテーテル用の除菌フィルターが使えないため、注意しましょう。
ここからは、中心静脈カテーテルからの薬剤投与の実施について解説します。
中心静脈カテーテル挿入時の看護については、下記の記事をご参考ください。
▼関連記事
中心静脈カテーテルの看護とは?挿入前後の観察項目や合併症を解説
・医師から指示された中心静脈栄養剤(高カロリー輸液)
・遮光カバー
・輸液セット(フィルター付きのもの)
※ミキシッドなどの脂肪乳剤はフィルター使用不可
・点滴スタンド
・輸液ポンプ
・未滅菌手袋
・マスク
・ディスポーザブルエプロン
・アルコール綿
| 手順 | ポイント |
| 1.医師の指示を確認する | 薬剤投与ミスを防ぐために、6Rを用いて確認するWチェックを行うとなお良い |
| 2.点滴スタンドに輸液ポンプをつける | 急速投与による高血糖を避け、1日に必要な栄養素を十分代謝できるよう、TPNは輸液ポンプを用いて投与する |
| 3.手指消毒を行い、マスク、エプロン、手袋を装着する | – |
| 4.TPN製剤を準備する・バッグ型キット製剤の場合は必ず隔壁を開通させ、薬剤を混合する(それぞれの室に手を当て、シーソーのように順番に押し合うイメージ) ・遮光カバーが必要な薬剤の場合は、バッグに遮光カバーをつける | ・隔壁を開通していない状態で投与すると、高血糖や低血糖のリスクが高くなる ・TPN製剤に他の薬剤を混注する指示の場合は薬剤部で滅菌操作のもと行われることが多い ・ビタミンを含む薬剤の場合、遮光カバーが必要となる |
| 5.ルートの準備をする ①輸液セットを外袋から出し、アルコール綿で清潔にしたトレーなどに置く ②全てのローラークランプを閉じる ③輸液バッグのゴム栓部分をアルコール綿で消毒し、輸液セットを接続する ④滴下筒に薬液を1/3~1/2程度満たす ⑤ローラークランプをゆっくりと解放し、ルート先端部まで薬液を満たす ⑥ローラークランプを閉じる | ・不潔にならないよう、アルコール綿での消毒は念入りに行う ・ルート内に気泡が入らないよう注意する ・ミキシッドなどの脂肪乳剤はフィルターを用いると目詰まりを起こす可能性があるため使用しない |
| 6.輸液一式を点滴スタンドにかけ、輸液ポンプの設定を行う | ・輸液ポンプの投与速度は医師の指示に従う |
| 7.患者さんを訪室する ①薬剤投与を行うことを説明し同意を得る ②パソコン機器などによる薬剤認証を行う ③患者さんにフルネームを名乗ってもらう | ・患者確認を徹底する |
| 8.中心静脈カテーテルに輸液を接続する ①カテーテルの固定状況を確認する ②カテーテル接続部をアルコール綿で消毒する ③輸液ルートのローラークランプを解放し、輸液ポンプの早送り機能を用いてルート先端まで薬液を満たす | ・固定に緩みなどがある場合は、しっかりと固定し直してから輸液を接続する |
| 9.再度投与速度を確認し、薬剤投与を開始する | – |
| 10.患者さんの状態を観察し、投与中に何らかの自覚症状や異常がある場合はすぐにナースコールしてもらうよう伝える | ・高血糖症状について説明しておく(口渇、多飲、多尿、倦怠感、空腹感など) |

最後に、「中心静脈栄養法を安全に受けられ、栄養状態が改善する」を看護目標に設定した看護計画の一例をご紹介します。患者さんに合わせた個別性のあるケアを心がけましょう。
O-plan
T-plan
E-plan(患者教育)

TPNでは、合併症の予防や早期発見も重要です。
観察項目などを頭に入れて、常に意識しながら患者さんと関わりましょう。
O-plan
T-plan
E-plan
O-plan
T-plan
血糖値のモニタリングを行い、高血糖や低血糖を認めた場合は医師に報告する。患者さんの既往歴などにより血糖値の変動は異なるため、スケールが設けられていることが多い。事前に確認し把握しておく
E-plan

本記事では、TPNの看護について解説しました。
TPNは患者さんの栄養状態を維持・改善するために大変重要な処置であり、安全に管理される必要があります。
中心静脈カテーテル挿入中の合併症について理解し、異常の早期発見に努めるのが看護師の大切な役割です。
本記事で解説した内容を臨床で活かしていただけたら幸いです。
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