
CO2ナルコーシスは、意識障害や昏睡状態に陥る病態です。看護師による迅速な気付きと対応が大切になります。CO2ナルコーシスの病態を理解し、発生機序や観察のポイントを知っておくことが重要です。
この記事では、CO2ナルコーシスの基礎知識から予防するためのポイントを解説します。また、CO2ナルコーシスが起こった際の対応方法を看護の視点から紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

CO2ナルコーシスとは、体内に二酸化炭素が蓄積し意識障害を起こす炭酸ガス血症です。
この章では、なぜCO2ナルコーシスが起こるのか、診断や症状などの基礎知識を説明します。CO2ナルコーシスの病態を知ることで、予防や発生時の迅速な対応が可能です。CO2ナルコーシスや酸素投与に不安のある方は、ぜひ参考にしてください。
呼吸は、脳の延髄にある中枢性化学受容体がCO2とpHを感知し調整しています。通常時の呼吸調整機能とCO2ナルコーシスの発生機序を解説します。
動脈血のpCO2が上昇し、脳脊髄液のpHが低下
↓
延髄にある中枢性化学受容器が刺激され、呼吸が促進
↓
CO2が排出される

動脈血のPCO2が上昇し、脳脊髄液のpHが低下
↓
中枢性化学受容体の感度が鈍化しているため、末梢性化学受容体が低酸素を感知
↓
高二酸化炭素の状態は継続しているため、O2の投与を開始
↓
呼吸中枢は、「酸素が十分にある」と認識
↓
呼吸が抑制され、呼吸が停止
↓
二酸化炭素が貯留し、pHが酸性に傾く
↓
呼吸性アシドーシスとなり、意識障害が出現
↓
CO2ナルコーシスが発生する
このようにCO2ナルコーシスは、中枢性化学受容体の機能が低下している状態で酸素を投与することで発生します。呼吸性アシドーシスは、pHが7.35未満の酸性に向かっている状態であり、脳が正常に働かず意識障害を起こすことが特徴です。
CO2ナルコーシスを未然に防ぐためにも、CO2ナルコーシスが起こりやすい疾患を把握しておくことが重要です。
慢性呼吸不全の患者さんは、普段からCO2が体内に貯留することに慣れています。呼吸不全にはⅠ型呼吸不全とⅡ型呼吸不全があり、Ⅱ型呼吸不全は特に注意が必要です。

短期間で発症する呼吸不全は呼吸困難を伴うことが多いですが、1か月以上続く慢性呼吸不全は、自覚症状が乏しいのが特徴です。
Ⅱ型呼吸不全が慢性的に続くことで、CO2ナルコーシスが発症しやすくなる疾患があります。
呼吸器疾患:慢性閉塞性肺疾患、肺結核後遺症、間質性肺炎、肺気腫、気管支喘息など
神経筋疾患:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋ジストロフィー、重症筋無力症など
これらの疾患は、呼吸筋が低下することで二酸化炭素が蓄積しCO2ナルコーシスを招きます。酸素を投与する際には、注意が必要です。

CO2ナルコーシスでは、「自発呼吸の減弱」「呼吸性アシドーシス」「意識障害」の三兆候を特徴とする中枢神経症状が出現します。ほかにも以下の症状が出現した場合は、CO2ナルコーシスを疑いましょう。
CO2ナルコーシスの診断は、動脈血ガス分析が必須です。PaCO2>80 Torr、pH<7.30の場合は、CO2ナルコーシスを合併している可能性が高いと言われています。血ガスの数値を把握しておくことで迅速な対応に繋げることができます。
CO2ナルコーシスは、酸素投与の調整を行うことで予防します。治療は、呼吸の補助を行い低酸素血症の改善を図ります。
| CO2ナルコーシスの予防 | SpO2:90%を目安に酸素を投与します。吸気酸素濃度を厳密に設定できるベンチュリーマスクや高流量鼻カニュラが主流です。 |
| CO2ナルコーシスが改善しない場合 | pH7.25未満を目安にNPPV(非侵襲的陽圧喚起)を使用し、強制的にCO2を排出します。 |
| 自発呼吸が停止した場合 | 気管挿管、人工呼吸器での呼吸補助を実施します。 |
CO2ナルコーシスは、症状が出現する前に防ぐことが大切です。
基礎疾患を確認し、普段の酸素飽和度やADLの状態を確認します。特に慢性Ⅱ呼吸不全の患者さんには注意が必要です。酸素の投与を始める前に、医師へ酸素の投与量と投与方法を確認します。
酸素飽和度88~92%を目安に必要最低限の酸素を投与しましょう。呼吸不全の定義は、PaO2≦60Torr(酸素飽和度88~92%)のためです。
慢性呼吸不全の患者さんに対しての酸素投与は、低濃度から開始することが基本です。中枢性化学受容体が鈍化している状態で、高濃度の酸素を投与すると、体内に酸素があると認識され呼吸が促進されず二酸化炭素が貯留してしまうためです。以下を流量や濃度を目安に、酸素投与を開始してください。
COPDの急性増悪では、重篤な低酸素血症の場合も中等量の酸素投与で改善することがあります。高濃度の酸素投与を必要とする肺炎や気胸などの疾患も、CO2ナルコーシスに注意して酸素を投与しましょう。

CO2ナルコーシス時の看護師の役割は、症状出現に対する迅速な対応と観察です。患者さんが安定した呼吸を取り戻し、ADLが確保できるよう適切な看護が求められます。
全身状態や呼吸状態の観察に加え、社会背景や生活レベルを把握しアセスメントします。
| 全身状態 | ・意識レベル ・バイタルサイン ・頭痛 ・発汗 ・傾眠 ・痙攣 ・神経症状 ・振戦(羽ばたき振戦) ・顔色 ・チアノーゼ ・検査データ(血ガス・胸部レントゲン・CT) |
| 呼吸状態 | ・SpO2 ・呼吸困難感・呼吸苦 ・呼吸回数・リズム・深さ ・胸郭の動き ・喘鳴 ・努力呼吸 ・肺音 |
| 患者背景 | ・基礎疾患の有無 ・年齢 ・ADL、日常生活レベル ・喫煙の有無 |
CO2ナルコーシスの看護では、患者さんの状態に合わせた個別的なケアの実施が必要です。臨床で役立つ具体的な看護のポイントや実際に病棟で起きた例を紹介します。
【全身状態と呼吸状態の観察】
全身状態と呼吸状態を確認し酸素の投与を開始します。自覚症状が乏しい場合もあるため、SpO2の数値や顔色、意識レベルの確認が必要です。
▼意識障害がある場合は特に注意が必要
臨床現場では、意識レベルが低い患者さんに対しても酸素投与を行います。実際に、意思疎通が難しい患者さんへ酸素を投与したところ、急にSpO2が低下し顔色不良を起こした事例がありました。検査後CO2ナルコーシスと診断され、呼吸が停止、人工呼吸器を装着しました。このように、自覚症状の訴えが難しい患者さんへの酸素投与は、特に注意が必要です。
【喀痰の援助】
痰の貯留は、呼吸状態の悪化へ影響するため喀痰を促す援助が必要です。人工呼吸器装着時など、自己喀痰が難しい場合があり、必要時は吸引も行います。
▼看護のポイント
自身での喀痰が可能な患者さんへは、ベッドサイドにティッシュやガーグルベースンを置くなどの環境調整をすることも看護の1つです。水分摂取の促しや部屋の加湿も喀痰の援助に繋がります。
【精神的援助】
患者さんの精神的支援をすることも看護師の役割の1つです。酸素投与や呼吸状態の悪化に伴い不安を感じる患者さんも多くいます。コミュニケーションや傾聴をすることで不安やストレスの軽減を図ることが大切です。
■関連記事
・CO2ナルコーシスに対してNPPVが効果的である理由は?
・CO2ナルコーシスの症状と看護について知りたい
・PaCO2が高い患者さんの人工呼吸器の設定変更について

記事の制作について
「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。
看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
キャリア
働く場所
選考対策
資格
その他
読みもの
連載