
「心臓カテーテル検査」は心臓の機能を評価する検査です。
この検査結果をもとに、薬物療法や手術などの治療方針が決まります。心臓カテーテル検査は、起こり得る合併症が多いため、注意して観察し異常の早期発見に努めることが大切です。
この記事では心臓カテーテル検査の看護や観察項目などについて解説します。心臓カテーテル検査を受ける患者さんの担当になり不安を感じる方や観察ポイントがわからない方はぜひ参考にしてください。

大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟、循環器内科などで看護師として14年間勤務。主に急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療・看護・育児にまつわる記事の執筆や監修に力を入れている
X(Twitter):@shota_papa37
心臓カテーテル検査とは「カテーテルを腕や首、足の付け根の動脈もしくは、静脈に入れて心臓や血管の圧測定、または造影を行う検査」のことです。臨床では「心カテ」と呼ばれます。
医師や看護師、放射線技師、臨床工学技士など多職種が協力し検査を行います。
検査前後で患者さんの異常がないかの観察、またスムーズに検査できるようにケアすることが看護師の役割です。
心臓カテーテル検査の目的は、心臓の病気の治療方針を決定することです。具体的には、以下が検査でわかります。
これらの結果をもとに、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)や弁膜症、先天性の心疾患(心室中隔欠損症や心房中隔欠損症など)を診断できます。特に先天性の心疾患の場合は、小児科も対象となる場合があります。
心臓カテーテルの検査は、右心カテーテル検査と左心カテーテル検査に分けられます。ここでは代表的な検査を解説します。
右心カテーテル検査のうち代表的なのが「スワンガンツカテーテル」です。
スワンガンツカテーテル(S-G)検査では、心臓内の各部位の圧や心臓が送り出す血液量、酸素量などを測定し心機能の状態や心不全の重症度を評価します。スワンガンツカテーテル検査で得られる主なデータは以下のとおりです。

| 検査項目 | 基準値 | 注意点と、考えられる疾患 |
| 右房圧(RAP) | 0~8mmHg平均<5mmHg | ・中心静脈圧(CVP)と等しい値。 ・右室の前負荷である循環血液量の指標。 |
| ・高い:右心不全、三尖弁狭窄症など ・低い:循環血液量の減少 | ||
| 右室圧(RVP) | 17~35/1~7mmHg | 右室の圧を反映 |
| ・高い:肺高血圧症、肺動脈弁狭窄症、収縮性心膜炎など ・低い:循環血液量の減少 | ||
| 肺動脈圧(PAP) | 15~25/8~15mmHg | ・肺血管抵抗を反映 ・右室の後負荷の指標 |
| ・高い:循環血液量の増加、左心不全、肺高血圧症など ・低い:循環血液量の減少、右心不全など | ||
| 肺動脈楔入圧(PCWP) | 6~12mmHg | ・左房圧を反映 ・左室の前負荷の指標 |
| ・高い:循環血液量の増加、左心不全など ・低い:肺高血圧症、右心不全、循環血液量の減少など | ||
| 混合静脈血酸素飽和度(SvO2) | 60~80% | 酸素の需給バランスの指標 |
| 低い:心拍出量の減少、出血、酸素消費量の増加など | ||
| 心係数(CI) | 2.6~4.2L/分/㎡ | 心拍出量(CO)を体表面積で割ったもの |
| ・低い:心拍出量の減少 |
スワンガンツカテーテルで得られた肺動脈楔入圧と心係数をもとに、フォレスター分類で心不全の重症度を評価します。フォレスター分類は1群〜4群で評価され、4群が最重症です。

フォレスター分類について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
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フォレスター(Forrester)分類と心不全の重症度に応じた治療について理解したい
スワンガンツカテーテルの管理について教えてほしい
左心カテーテル検査の代表的な検査は「冠動脈造影(CAG)検査」と「電気生理学的検査(EPS)」です。それぞれについて詳しくみていきましょう。
冠動脈造影(CAG)とは「動脈にカテーテルを挿入し、冠動脈に狭窄や閉塞がないか調べる検査」です。
右冠動脈(RCA)や左前下行枝(LAD)、左回旋枝(LCX)の主に3本の冠動脈を評価します。狭窄や閉塞の程度は0〜100%で表します。
どの部位が狭窄しているのか、何本狭窄しているのかなど総合的に評価します。重症と診断された場合は、冠動脈バイパス術や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の適応です。
治療方針の判断が難しい場合は、循環器内科や心臓血管外科、麻酔科の医師が協議し決定するケースもあります。
電気生理学的検査(EPS)とは「静脈から心臓内に電極のカテーテルを挿入し、電気刺激を与えることで不整脈の原因を調べる検査」です。
検査の対象は、徐脈性不整脈や頻脈性不整脈です。検査結果をもとに、以下の治療方針を決定します。
ほかにも、抗不整脈薬の効果を判断するために、電気生理学検査を行うこともあります。
心臓カテーテル検査で起こり得る主な合併症は以下のとおりです。
| 合併症 | 起こる理由 | 看護のポイント |
| 不整脈 | カテーテルが心臓の中にあることで不整脈を誘発する | ・心電図モニターで不整脈の有無を確認 ・動機やめまいなどの自覚症状を観察 |
| 心タンポナーデ | 誤って穿刺することで起こる | 頻脈や血圧低下の有無などを観察 |
| 肺梗塞 | スワンガンツカテーテルの先端が拡張したままであると肺梗塞が起こる | スワンガンツカテーテルのシリンジを確認 |
| 血気胸 | 誤って穿刺することで起こる | 呼吸音の左右差、頻呼吸の有無を観察 |
| 出血 | 検査中に抗血小板を投与するため、穿刺部から出血しやすい | 刺入部の出血や腫脹の有無を観察 |
感染の兆候は検査後に起こりやすいため、カテーテルの刺入部に発赤や腫脹がないか観察しましょう。患者さんが刺入部が気になって触ってしまうケースや、スワンガンツカテーテルを長期間留置する際にテープが剥がれて不潔になるケースもあります。
それぞれの項目を看護計画に反映させて、看護師間で統一したケアを実施しましょう。
心臓カテーテル検査前〜検査後の看護と観察項目を解説します。それぞれをみていきましょう。
患者さんが、心臓カテーテル検査の流れをイメージしやすいように、院内のクリニカルパス用紙やオリエンテーション用紙に沿って説明します。検査前に以下のポイントに沿って説明しましょう。
患者さんが強い不安を抱えている場合があるため、質問や疑問がないか確認しながら丁寧に説明しましょう。
また、心臓カテーテル検査は侵襲的な検査であるため、緊急時にすぐに対応できるように家族に待機してもらいます。
さらに、検査前には以下の項目をチェックすることが大切です。
腎臓の保護や造影剤アレルギー予防のために、点滴を投与しながら検査室に搬送することもあります。足の付け根から穿刺する場合は、下肢の血流状態を確認するために足背動脈の触知を確認し、患者さんの肌に印をつけ検査前後で変化がないか確認します。
心臓カテーテル検査を実施する主な流れは以下のとおりです。
| 手順 | 看護上の注意点 | |
| ① | 患者さん入室後に病棟の看護師からの申し送り | ・患者さんの間違いがないかネームバンドで確認 ・同意書とアレルギー有無を確認 |
| ② | 患者さんを撮影台まで移送 | 首や手首から穿刺の場合は上半身のみ、足の付け根から穿刺の場合はすべての病衣を脱ぐ |
| ③ | 必要物品を準備 | 清潔操作で実施 |
| ④ | 医師が処置を始めるため介助 | ・医師が穿刺部を消毒し、局所麻酔を実施するため手技に合わせて介助 ・検査中は患者さんに声をかけて疼痛や気分不快などの症状の有無を確認 |
| ⑤ | カテーテル抜去し止血の確認 | ・止血を確認後、手からの穿刺の場合は「とめ太くん」で圧迫。足の付け根の穿刺の場合は枕子+テープで圧迫 ・患者さんに検査後の注意事項(安静や症状がある際にはナースコールを押すことなど)を説明 ・バイタルサインの測定、動脈の触知などを確認 |
| ⑥ | 病棟の看護師に申し送り | 検査の結果や注意事項(ヘパリンや造影剤の量など)を申し送り |
| ⑦ | 病棟に帰室 | ・患者さんの状態により独歩・車椅子・ストレッチャーを選択 ・足の付け根から穿刺した場合はストレッチャー |
心臓カテーテル検査後は、病棟に帰室する前に別室で医師より結果の説明があります。そのため病棟に帰室したときに、症状の観察を行いつつ、医師の説明が理解できたか患者さんや家族に確認することが大切です。
心臓カテーテル検査後は、合併症の有無を観察することが重要です。心電図モニターを装着し、バイタルサインの測定をして、自覚症状を確認し異常の早期発見に努めます。
また、患者さんは抗血小板薬や抗凝固薬を飲んでいることが多く、穿刺部が出血しやすい状態であるため以下の症状に注意してください。

穿刺部にとめ太くんを付けている場合は、出血がないかを確認しながら、院内のプロトコルに沿って空気を抜き圧迫を少しずつ緩めます。検査が終わってとめ太くんが外れるまで1時間おきに少しずつ空気を抜き、8時間後にすべての空気を抜いて、とめ太くんを取り外すイメージです。
空気を抜く途中で出血が起こった際には、空気を入れ直して圧迫を強めたり、医師に報告して対処してもらったりします。
また、皮下出血が起こった場合は、皮下出血が拡大していないか確認するために患者さんの肌にマジックで印をつけることがあります。
足の付け根からの穿刺では、後腹膜出血を起こす恐れがあります。ただし、刺入部は枕子とテープ、ガーゼなどで厚く覆われているため観察しにくいかもしれません。
そのため、見える範囲で出血がないか確認し、血圧の低下や顔面蒼白のほかに足背動脈の触知やチアノーゼなどの症状がないか観察しましょう。
さらに、患者さんに安静についても説明してください。手からの穿刺の場合は、とめ太くんが外れるまでは病棟内で過ごし、足の付け根からの場合はベッド上で過ごします。
穿刺部位やカテーテルの大きさ、ヘパリンの使用量などにより安静の時間が異なるため、院内のプロトコルに従いましょう。
刺部の痛みのほかに、安静を強いられることにより腰痛や肩こりを訴えることが多いため、医師の指示のもとで鎮痛薬を投与することもあります。

心臓カテーテル検査は退院後の生活にほとんど影響がないでしょう。通常はカテーテルをした翌日に退院となります。
ただし、生活習慣が要因となり起こる病気もあるため、食生活や運動、禁煙、睡眠などを見直すように指導してください。
生活指導が難しい場合や患者さんがより具体的な方法を求める場合は、理学療法士や栄養士、薬剤師がいると専門的に介入できるでしょう。
心臓カテーテル検査は、心臓や血管の圧測定や造影が目的であり、検査結果により治療方針が決まります。
侵襲的な検査であり合併症が多いため、検査に関する知識や技術が欠かせません。検査前から情報収集を行い、患者さんを観察して異常の早期発見に努めることが重要です。
観察項目や注意点を把握して、患者さんへのケアを実施しましょう。

大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟、循環器内科などで看護師として14年間勤務。主に急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療・看護・育児にまつわる記事の執筆や監修に力を入れている
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看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
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