術後に体温上昇する理由とメカニズム|対処法や看護のポイントを解説

周手術期の看護において、術後の患者さんが安楽に過ごせるためには、体温管理が重要なポイントです。

看護ケアをするなかで、手術後に体温が上昇し発熱するのはなぜなのか、疑問に思う方もいるのではないでしょうか。術後の体温上昇について理解しておくと、個別性に配慮した看護ケアが実施できます。

この記事では、術後に体温が上昇する理由やメカニズムについて解説します。あわせて体温上昇時の対処法や看護ケアについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

この記事を書いた人
島田綾乃
正看護師
大学病院で10年間、病棟看護師として勤務。 耳鼻咽喉科、腎臓外科、循環器小児科、脳神経外科、SCUでの臨床経験があり、得意分野は外科系。 現在は育児をしながら、看護師ライターとして医療分野の記事を専門に執筆。
※1※2 調査方法:インターネット調査/調査期間:2024年2月7日~2月13日/調査概要:「看護師転職サイト」を対象としたユーザー満足度調査/調査対象:男女、全国、看護師・准看護師資格保有者かつ対象看護師転職サイト利用経験者、20~29歳 107s(※1)、20~34歳 175s(※2)/調査実施:株式会社エクスクリエ/比較対象サービス:「看護師転職サイト」主要10サービス(専用サイトのあるサービスのみ・求人結果の表示ページは除く)

術後に体温上昇する理由とメカニズム

術後に体温が上昇する理由は、以下の3つが考えられます。

  • 手術侵襲
  • 感染
  • 薬剤

それぞれの理由と体温が上昇するメカニズムについて解説します。

手術侵襲

術後に体温が上昇する理由は、手術侵襲による「吸収熱」と「侵襲熱」によるものが考えられます。吸収熱と侵襲熱はどちらも手術侵襲によって起こりますが、体温が上昇するメカニズムが異なります。

吸収熱は、手術により破壊された組織から出た血液や浸出液、壊死物質などが、体に吸収される際に起こる発熱です。吸収熱による体温上昇は、人間本来の生体防御反応による症状であり、術後の正常な反応といわれています。

対して侵襲熱は、手術や侵襲性のある処置を受けた後に、体が回復しようとすることで起こる発熱です。手術によって体の組織がダメージを受けると、サイトカインと呼ばれる情報伝達物質が産生されます。サイトカインが放出されると、人間の体は生体防御反応を起こし体温が上昇するのです。

吸収熱と侵襲熱はどちらも術後にみられる正常な反応のため、基本的には治療を行わずとも自然に解熱することが特徴です

吸収熱と侵襲熱についての図解イラスト

感染

術後に体温が上昇する原因の1つに、細菌やウイルスなどの感染があります。生体防御反応である吸収熱や侵襲熱とは違って病原菌やウイルスによる感染が原因であるため、抗生剤の投与や傷の処置が必要となる発熱です

侵襲熱や吸収熱とは、発熱が起きるまでの時間である程度見分けられます。吸収熱と侵襲熱は術後2~3日に見られるとされていますが、創部感染による発熱の場合、術後4~7日に体温の上昇が認められるケースが多いようです。しかし原因や術後の状態によっても、発熱のタイミングには多少の差が見られるため、ほかの症状やどのくらい体温が上昇しているのかなどの情報もあわせて観察しましょう。

手術後に感染する原因としては、以下が挙げられます。

  • 創部からの感染
  • 点滴ルートやドレーン、バルーンカテーテルなどの挿入物からの感染
  • 術後の免疫力低下による肺炎や腸炎など

病原菌やウイルスによる感染は、重症化すると命に関わる合併症を引き起こす可能性もあるので、早期な対応が求められます。

術後の感染による発熱の図解イラスト

薬剤

手術後に使用した薬剤が、体温上昇の原因となることもあります。薬剤熱は特定の薬剤にだけ起こりえるものではなく、すべての薬剤で発熱が見られる可能性があり、副作用の1つです。一般的な薬剤熱の特徴としては、以下が挙げられます。

  1. 薬剤投与後1~2週間で発熱する
  2. 原因と考えられる薬剤を中止後、72~96時間ほどで解熱する
  3. 発熱症状がみられるが、臨床症状や検査値(WBCやCRPなどの炎症反応値など)は改善している

しかし薬剤熱が起こるタイミングには個人差があるため、上記の特徴に該当しない場合もあるため注意が必要です

そのなかでも、薬剤熱が起こる頻度が多い薬剤として挙げられるのは抗菌薬です。抗菌薬による発熱は、薬剤熱の3分の1を占めているともいわれています。術後に感染を起こすと抗菌薬を投与する場合があるため、その際は薬剤熱に注意しましょう。

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術後の体温上昇はいつまで続く?

術後に見られる発熱の種類ごとに、体温上昇が見られる期間を以下の表にまとめました。

発熱の種類発熱が見られる期間解熱方法と期間
吸収熱と侵襲熱術後2~3日数日程度で自然解熱
感染熱術後4~7日薬剤(抗生物質や抗菌薬など)を投与
解熱期間は感染部位によって異なり、1~2週間で治癒するものもあれば、4~6週間以上かかるケースもある
薬剤熱発熱の原因となる薬剤を投与後1~2週間原因となる薬剤を中止してから
72~96時間ほどで解熱

ただし、発熱が見られる期間は、患者さんの状態や治療状況によっても異なるため、目安として覚えておきましょう。

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術後に体温上昇した際の対処法

術後に体温が上昇した場合には、原因に合わせて適切に対処することが大切です。

吸収熱や侵襲熱の手術侵襲によって起こる発熱は、生体防御反応であるため自然に解熱します。一方で感染や薬剤熱に関しては、原因を明らかにしたうえで、状況に応じた治療や処置が開始されます。たとえば、病原菌による感染が原因である場合は、抗生剤の投与やドレーン、カテーテルの抜去などが必要になることもあります。

看護師の役割としては、患者さんの状態を観察し、医師へ状況をいち早く伝えるだけではなく、発熱による苦痛や症状を緩和することが求められます

体温上昇時は多くのエネルギーを消費するため、体力を消耗している状態です。患者さんが体温上昇による不快感を感じている場合には、解熱剤やクーリングなどを使用して熱を下げることも検討しましょう。

患者さんの状態変化を観察しながら、安楽に過ごせるよう支援することが重要です。

術後の体温上昇に対する看護ケアのポイント

術後の体温上昇に対する看護ケアは、以下の4つです。

  • 発熱の原因を考える
  • クーリングする際はセットポイントを見極める
  • 水分バランスを把握する
  • 多量の汗がみられるときは衣類交換や清拭を行う

それぞれの看護ケアのポイントについて解説します。

発熱の原因を考える

術後の体温上昇に対する看護ケアとして、発熱の原因を考えることは重要なポイントです。看護ケアにおいても、発熱の原因によっては対応が変わります。

術後に患者さんの体温が上昇したら、まずバイタルサインや創部の観察など全身状態を把握し、考えられる原因を探りましょう。体温上昇により、症状の悪化や体調不良を訴えるようであれば、必要に応じて医師へ報告し指示を仰ぐことも看護師の重要な役割です。

クーリングする際はセットポイントを見極める

体温上昇時に行うクーリングでは、セットポイントの見極めが重要と覚えておきましょう。セットポイントとは、体温調節中枢により設定された体温のことです。

細菌やウイルスが体内に侵入すると、それらを攻撃するためにセットポイントが上昇し、体の震えや血管収縮などの反応が起こります。セットポイントが上昇しているタイミングでクーリングしてしまうと、セットポイントまで体温を上げられなくなってしまうのです。そうすると、さらに体温を上げようと体が反応し、体の震えが続いてしまい患者さんの苦痛につながります。

クーリングするタイミングは、セットポイントまで熱が上がりきり、熱を放散しているときです。このときには、発汗が見られ震えが落ち着いてきます。熱が上がりきったのかどうかを判断するのも、看護ケアのポイントです。

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発熱時にクーリングや解熱を実施する目安が知りたい

クーリングするタイミングを見極める看護師のイラスト

水分バランスを把握する

体温上昇時の看護ケアにおいて、水分バランスの把握は重要なポイントです。人間の体は、体温が上昇すると熱を下げようとして、汗をかくようになります。

体温が上昇した状態が続くと、通常よりも多く汗が分泌されるため、脱水症状を起こしやすくなります。術後の体温上昇により発汗が見られる場合には、脱水症状を予防するためにも、こまめな水分補給を促しましょう。普段と比較して尿量が減っているときには、体内の水分が足りていない証拠です。術後は、正しく水分バランスを把握することを意識しましょう。

▼関連記事
術後の水分摂取後の発熱との関連について知りたい

多量の汗がみられるときは衣類交換や清拭を行う

発熱時は、熱を下げようとして汗の分泌量も多くなるため、衣類交換や清拭を実施するとよいでしょう。体温上昇時は、患者さんによっては倦怠感を伴い、自身での衣類交換や清拭が困難な場面もあるかもしれません

汗をかいたままの衣類を着ていると、患者さんも不快感を感じやすく、衛生的にも良くありません。適切なタイミングで衣類交換や清拭を実施し、患者さんの不快感を取り除くことも大切です。

術後、体温が上昇した患者さんをケアする看護師

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