
周手術期の看護において、術後の患者さんが安楽に過ごせるためには、体温管理が重要なポイントです。
看護ケアをするなかで、手術後に体温が上昇し発熱するのはなぜなのか、疑問に思う方もいるのではないでしょうか。術後の体温上昇について理解しておくと、個別性に配慮した看護ケアが実施できます。
この記事では、術後に体温が上昇する理由やメカニズムについて解説します。あわせて体温上昇時の対処法や看護ケアについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

術後に体温が上昇する理由は、以下の3つが考えられます。
それぞれの理由と体温が上昇するメカニズムについて解説します。
術後に体温が上昇する理由は、手術侵襲による「吸収熱」と「侵襲熱」によるものが考えられます。吸収熱と侵襲熱はどちらも手術侵襲によって起こりますが、体温が上昇するメカニズムが異なります。
吸収熱は、手術により破壊された組織から出た血液や浸出液、壊死物質などが、体に吸収される際に起こる発熱です。吸収熱による体温上昇は、人間本来の生体防御反応による症状であり、術後の正常な反応といわれています。
対して侵襲熱は、手術や侵襲性のある処置を受けた後に、体が回復しようとすることで起こる発熱です。手術によって体の組織がダメージを受けると、サイトカインと呼ばれる情報伝達物質が産生されます。サイトカインが放出されると、人間の体は生体防御反応を起こし体温が上昇するのです。
吸収熱と侵襲熱はどちらも術後にみられる正常な反応のため、基本的には治療を行わずとも自然に解熱することが特徴です。

術後に体温が上昇する原因の1つに、細菌やウイルスなどの感染があります。生体防御反応である吸収熱や侵襲熱とは違って病原菌やウイルスによる感染が原因であるため、抗生剤の投与や傷の処置が必要となる発熱です。
侵襲熱や吸収熱とは、発熱が起きるまでの時間である程度見分けられます。吸収熱と侵襲熱は術後2~3日に見られるとされていますが、創部感染による発熱の場合、術後4~7日に体温の上昇が認められるケースが多いようです。しかし原因や術後の状態によっても、発熱のタイミングには多少の差が見られるため、ほかの症状やどのくらい体温が上昇しているのかなどの情報もあわせて観察しましょう。
手術後に感染する原因としては、以下が挙げられます。
病原菌やウイルスによる感染は、重症化すると命に関わる合併症を引き起こす可能性もあるので、早期な対応が求められます。

手術後に使用した薬剤が、体温上昇の原因となることもあります。薬剤熱は特定の薬剤にだけ起こりえるものではなく、すべての薬剤で発熱が見られる可能性があり、副作用の1つです。一般的な薬剤熱の特徴としては、以下が挙げられます。
しかし薬剤熱が起こるタイミングには個人差があるため、上記の特徴に該当しない場合もあるため注意が必要です。
そのなかでも、薬剤熱が起こる頻度が多い薬剤として挙げられるのは抗菌薬です。抗菌薬による発熱は、薬剤熱の3分の1を占めているともいわれています。術後に感染を起こすと抗菌薬を投与する場合があるため、その際は薬剤熱に注意しましょう。
術後に見られる発熱の種類ごとに、体温上昇が見られる期間を以下の表にまとめました。
| 発熱の種類 | 発熱が見られる期間 | 解熱方法と期間 |
| 吸収熱と侵襲熱 | 術後2~3日 | 数日程度で自然解熱 |
| 感染熱 | 術後4~7日 | 薬剤(抗生物質や抗菌薬など)を投与 解熱期間は感染部位によって異なり、1~2週間で治癒するものもあれば、4~6週間以上かかるケースもある |
| 薬剤熱 | 発熱の原因となる薬剤を投与後1~2週間 | 原因となる薬剤を中止してから 72~96時間ほどで解熱 |
ただし、発熱が見られる期間は、患者さんの状態や治療状況によっても異なるため、目安として覚えておきましょう。
術後に体温が上昇した場合には、原因に合わせて適切に対処することが大切です。
吸収熱や侵襲熱の手術侵襲によって起こる発熱は、生体防御反応であるため自然に解熱します。一方で感染や薬剤熱に関しては、原因を明らかにしたうえで、状況に応じた治療や処置が開始されます。たとえば、病原菌による感染が原因である場合は、抗生剤の投与やドレーン、カテーテルの抜去などが必要になることもあります。
看護師の役割としては、患者さんの状態を観察し、医師へ状況をいち早く伝えるだけではなく、発熱による苦痛や症状を緩和することが求められます。
体温上昇時は多くのエネルギーを消費するため、体力を消耗している状態です。患者さんが体温上昇による不快感を感じている場合には、解熱剤やクーリングなどを使用して熱を下げることも検討しましょう。
患者さんの状態変化を観察しながら、安楽に過ごせるよう支援することが重要です。
術後の体温上昇に対する看護ケアは、以下の4つです。
それぞれの看護ケアのポイントについて解説します。
術後の体温上昇に対する看護ケアとして、発熱の原因を考えることは重要なポイントです。看護ケアにおいても、発熱の原因によっては対応が変わります。
術後に患者さんの体温が上昇したら、まずバイタルサインや創部の観察など全身状態を把握し、考えられる原因を探りましょう。体温上昇により、症状の悪化や体調不良を訴えるようであれば、必要に応じて医師へ報告し指示を仰ぐことも看護師の重要な役割です。
体温上昇時に行うクーリングでは、セットポイントの見極めが重要と覚えておきましょう。セットポイントとは、体温調節中枢により設定された体温のことです。
細菌やウイルスが体内に侵入すると、それらを攻撃するためにセットポイントが上昇し、体の震えや血管収縮などの反応が起こります。セットポイントが上昇しているタイミングでクーリングしてしまうと、セットポイントまで体温を上げられなくなってしまうのです。そうすると、さらに体温を上げようと体が反応し、体の震えが続いてしまい患者さんの苦痛につながります。
クーリングするタイミングは、セットポイントまで熱が上がりきり、熱を放散しているときです。このときには、発汗が見られ震えが落ち着いてきます。熱が上がりきったのかどうかを判断するのも、看護ケアのポイントです。

体温上昇時の看護ケアにおいて、水分バランスの把握は重要なポイントです。人間の体は、体温が上昇すると熱を下げようとして、汗をかくようになります。
体温が上昇した状態が続くと、通常よりも多く汗が分泌されるため、脱水症状を起こしやすくなります。術後の体温上昇により発汗が見られる場合には、脱水症状を予防するためにも、こまめな水分補給を促しましょう。普段と比較して尿量が減っているときには、体内の水分が足りていない証拠です。術後は、正しく水分バランスを把握することを意識しましょう。
発熱時は、熱を下げようとして汗の分泌量も多くなるため、衣類交換や清拭を実施するとよいでしょう。体温上昇時は、患者さんによっては倦怠感を伴い、自身での衣類交換や清拭が困難な場面もあるかもしれません。
汗をかいたままの衣類を着ていると、患者さんも不快感を感じやすく、衛生的にも良くありません。適切なタイミングで衣類交換や清拭を実施し、患者さんの不快感を取り除くことも大切です。

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