
お話を聞いたのは、病棟とクリニックで5年半のキャリアを積んだのち、治験コーディネーターに転職された大金さん。
気になる仕事内容や魅力・転職して良かったこと・逆に大変なことを教えてもらいました。
――看護師からの転職も少なくない治験コーディネーターですが、大金さんはどんな流れで転職されたのですか?
大金さん:私は臨床看護師を5年半経験してから、治験コーディネーター(CRC)を10年続けました。
新卒のときはいろんな疾患を勉強したくて忙しい混合病棟を希望したんですが、それが負担となり疲れてしまって。クリニックは、大手の医療機関とは違い、小規模ゆえの仕事の物足りなさと人間関係のトラブルで退職しました。
そんなとき出会ったのが治験コーディネーターだったんです。
――まず治験と、治験コーディネーターの役割を教えてください。
大金さん:「治験」とは、健康な成人の方や患者さんを対象に、新しい薬や治療法の効き目や安全性を科学的に調べる方法です。
治験コーディネーターは、病院で実施する治験の全般的なサポートを行います。
具体的な業務は、こんな感じです。
治験コーディネーターに特別な資格はいらないですが、実際は、看護師や臨床検査技師、薬剤師など医療系の資格を持っている女性が多いです。
詳しい仕事内容は、「治験コーディネーターへ看護師が転職するには?仕事内容や必要な経験を解説」をご覧ください。
――治験の期間や1人が担当する数は、どれくらいですか?
大金さん:期間は治験によってバラバラで、急性期の感染症の治験は1週間ほどで終わることもあるし、3~5年と長い年月をかけて行うものもあります。
1人が一度に担当する数は3つくらいで、合わせて10~20人の患者さんを抱えるイメージです。
――1日の流れも伺いたいです。
大金さん:毎日違いますが、一般的な1日の流れはこんな感じです。

ほぼ毎日、担当の病院やクリニックでの勤務となりますが、月に数回は社内でミーティングや研修、書類作成などのPC作業をすることもあります。
――大金さんは臨床看護師と治験コーディネーターの両方を経験されていますが、どんな違いがありましたか?
大金さん:違うなと思った点が3つあるので、順にご紹介します!
大金さん:一番は、業務内容の幅広さです。
臨床看護師時代は、食事介助したり寝たきりの患者さんをケア・移送したりと「ひたすら動く!」感じでした。また、自分がいる科の周手術期看護や検査前後の対応がメインなので、業務が限定的だと感じることがありました。
一方で治験コーディネーターは、消化器疾患・皮膚科疾患・感染症など複数分野の治験を並行して担当しますし、訪問する病院もバラバラなので、毎日やることが違って新鮮なんです。

治験では、医師や患者さんと話す時間もあれば、1人でPC作業に没頭できる時間もあったりと、業務時間のメリハリを感じますね。
――看護師は患者さんの療養上のあらゆるケア、治験コーディネーターは新薬の開発の支援ということで、やりがいの違いもありそうですね!それぞれエピソードがあれば伺いたいです。
大金さん:臨床時代は、自分がいることで患者さんに安心してもらえるのがやりがいでした。
新人の頃は緊張しっぱなしでしたが、看護技術・知識が身につくにつれ、手技が的確になり質問にも答えられるようになって。末期がんの患者さんとご家族から、担当が私で良かったと感謝されたことを覚えています。
治験コーディネーターのやりがいは、世の中にまだ出ていない治療薬に関われることです。
ある治験に参加していた患者さんが、最終日に手紙をくれたことがあったんです。長年悩んでいた疾患を治すチャンスをもらえて本当に良かったという、感謝状のような内容でした。嬉しくて今でも大事に保管しています。

また、未経験領域でも、挑戦してみたい治験があれば、製薬会社から案件の概要が届いた段階で、上長が優先的に声をかけてくれることがありました。そんな挑戦できる環境もやりがいでしたね。
――では、収入面についてはいかがでしょうか?
大金さん:治験コーディネーターは夜勤がありませんが、それでも日勤のみの看護師と同じくらいは稼げます。
具体的には、正社員1年目で年収400万円くらい、徐々に昇給して9年目で年収500万円弱でした。
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――臨床看護師から治験コーディネーターに転職して感じたメリットはありますか?
大金さん:3つあります!
看護師って、医療用語や症状が書かれたカルテを読めますよね。そうすると、被験者を選定するときに、カルテを見てその患者さんに適格性があるかを確認できるんです。
あとは医師や看護師、患者さんとも話す機会も多いので、そこでも臨床時代に身に着けた医療知識やコミュニケーション力を活かして、活躍できました。
先ほど話した「毎日が新鮮」という点もそうですし、私の会社はフレックスタイム制だったので、勤務時間も調整できてありがたかったです。患者さんの来院時間などの調整ができれば、9時~15時で働いてもOKでした!
また、担当の医療機関も自宅からなるべく近いエリアで調整していただけたので、通勤時間の短縮にもなりました。
月の残業時間は「多くて20時間」と病棟時代より減りましたし、基本的に土日祝日が休日で、前残業もありません。
PowerPointやExcelで資料を作成する機会が多く、PCスキルが身につきました。
あとは説明能力。たとえば、
など、根拠を説明する力がつきました。適切に説明できていないと、理解不足から併用禁止薬を飲んでしまう方が多くて。
――大変だったことやデメリットは何ですか?
大金さん:治験前の準備が膨大なのですが、なかでも被験者の決定までが大変でした。
院内の患者さんから被験者を選ぶ場合の流れとしては、大量のカルテの中から、対象疾患の患者さんで適格性がある方を探します。候補者をリストアップし、医師からOKが出れば患者さん一人ひとりに声をかけていきます。

説明を聞いて「やらない」と判断される方や、実際に患者さんから情報収集すると適格性に合致していなかったなんてことも多いので、必要人数が集まるまで説明をひたすら繰り返します。募集人数の多い治験の場合は特にきつかったですね。
――そうなんですね。治験が始まってからも忙しいのでしょうか…?
大金さん:治験中に大変だったのは、24時間体制の電話対応です。具体例を2つ挙げます。
①有害事象の報告
治験薬を投与した後に被験者に生じる疾病・兆候はすべて「有害事象」として扱い、報告をもらうことになっています。たとえば治験薬とは因果関係がなさそうなインフルエンザへの罹患でも、有害事象として扱い、電話報告を受けるんです。治験は薬剤の副作用を確立する前段階のためですね。
②併用薬の報告
ほかの薬を併用するときも報告をもらいます。併用禁止薬以外でも「使用前に必ず連絡をください」と伝えています。ひょっとしたら、中に入っている成分が禁止薬に該当する可能性もあるので。
被験者さんは会社勤めの方も多く、平日夜や土日祝にこういった報告の電話がかかってくるので、仕事用スマホは常に持っていました。
この点が治験コーディネーターを辞めた理由に繋がるのですが…詳しくは、「看護知識を活かしたいし、家族の時間も譲れない!悩み抜いて見つけた私の働き方」をご覧ください。
――立場の辛さを感じる方もいるようですが、いかがでしたか?
大金さん:あります、あります!治験コーディネーターは、【製薬会社】【被験者】【医師】3者を取り持つ立ち位置なので、板挟み業務はよくありますね。
たとえば製薬会社から「この治験の被験者をあと5人増やして」と依頼が来たとします。でも医師には「うちの病院からはもう無理!いない」と言われる。そうなると、被験者さんを必死になって探すわけです。
また、病院からすれば治験施設支援機関(SMO)から派遣されている我々は外部の人間です。すごく気を使いますし、待機場所もスタッフさんの休憩室をお借りする場合があります。
マナーも見られていて、院内のスタッフさんから「待機時間の話し声が大きい」「依頼時の愛想がない」と注意を受けたこともあります。そうしたことのすべてが部外者感というか…。
ただし、ずっとその病院に勤めるわけではないので、もし合わない人がいても気持ちは楽ですね!
――医師との連携で大変なことはありますか?
大金さん:医学的判断が必要なものはすべて担当医師が判断して結果を書きます。これが、バイタルの値や心電図所見、服薬状況などをA4書類10枚分、直筆で書いてもらうみたいにかなり大変なので、「またいっぱい持ってきたな…」みたいに苦い顔をされることがあるんです。
医師も通常業務で忙しいので、ひたすら待つのみ…なんてことも起きたり。
私は、手が空きやすい曜日や時間帯を医師にあらかじめ確認するようにしていました。緊急時の連絡先も聞いておくとスムーズに進めやすかったですね。
――大金さんが思う、治験コーディネーターに向いている看護師さんってどんな人でしょうか?
大金さん:この3つのタイプが向いていると思います。
看護師特有のことで言うと、医療行為ができない点に納得している人ですね。採血や心電図を取るなど看護技術を活かせる場面はほぼないので、そこは認識しておくべきだと思います。
「想像と違った…」「やっぱり病棟がいい」と臨床に戻っていく人も案外多いですよ。
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――「臨床に戻る可能性」を考えることはないですか?
大金さん:私はまったくないですね。「もう戻らない」って決めています。
という点は、看護師がキャリアを考える上で、すごく大事ですよね。
病院が辛いと悩んでいる人は、一度ほかの職種に就いてみるのもアリですよね。転職してみないとわからない部分って絶対あるので。
ほかの仕事をやってみて「やっぱり臨床の方が良かった」と感じたときは、戻れば良いし。看護師以外の世界も見て、こういう道もあるんだ!私に向いてるかも…と認識できたなら、その転職はもう成功だったのだと思います。
――転職エージェントを利用して治験コーディネーターへ転職されたのですね。実際使ってみてどうでしたか?
大金さん:エージェントを使って良かったことは3つあります。
私もそうでしたが、職務経歴書を書いたことのない看護師さんって多いと思うので、しっかり見てくれたのは心強かったです。特に、初めて転職する人は転職エージェントを利用した方が安心だと思いますね。
以上、治験コーディネーターとして10年のキャリアを重ねてきた大金さんにお話を伺いました。「ほかの仕事をやってみて『やっぱり臨床が良かった』と思えたなら、その転職も成功」という言葉が印象的でした。
最後に、看護師からCRCへの転職を支援してきた「レバウェル看護」キャリアアドバイザーの視点から、知っておいていただきたいポイントをまとめました。参考になれば幸いです。
治験コーディネーター(CRC)は、看護師経験を別のかたちで活かせる人気の転職先です。ご相談も多くいただくので、メリットと、入職後に感じやすいギャップの両面をお伝えします。
メリット1つ目は、大金さんもお話されていたように、医療知識やアセスメント力を活かせること。カルテの解読や薬理作用の知識、患者さんの些細な変化に気づくアセスメント力が、そのまま強みになります。
2つ目は、働き方の自由度が上がること。原則「夜勤なし・土日祝休み」のオフィスワークで、フレックスタイム制や直行直帰を活用して自分でスケジュールを組み立てやすく、ワークライフバランスを整えやすい環境です。
3つ目は、一生モノのビジネススキルが身につくことです。 医師・製薬会社・患者さんといった多様な立場の人との調整を通じて、折衝力やビジネスマナー、PCスキルなど、ポータブルスキルが習得できます。
一方で、入職後に感じやすいギャップもあります。
まずは、医療行為がなく、データ入力や文書作成といった事務作業が業務の半分を占めるため、「患者さんとじっくり関わりたい」方には物足りなく感じられることがあります。
そして、スケジュールが患者さんや医師の都合に左右されることです。フレックス制といっても来院予定や診療時間に合わせる必要があり、遅い時間帯の対応や急な予定変更が発生することもあります。
ただ、こうした特徴は、事前に知っておけば「思っていたのと違う」を防げます。CRCが自分に合うのか、夜勤ナシだとほかにどんな選択肢があるのか…気になったときはぜひ私たちにご相談くださいね。
▼レバウェル看護サービスページ
https://kango-oshigoto.jp
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ririii
2026年9月1日 11:12
治験は前から興味あったけど具体的な仕事の内容は知らなかったです。説明や調整の大変さについて勉強になりました。看護師経験を活かせるのがいいですね。。