
近年、医療機関や介護施設などでペイシェントハラスメントが問題になっています。ここでは、ペイシェントハラスメントに該当する行為・具体例や主な原因、看護師向けの対処法などについて詳しく紹介します。
この記事を最後まで読み終えてもらえれば、ペイシェントハラスメントについて理解が深まり、適切な対処法が分かるでしょう。
ペイシェントハラスメントに備えたい看護師は、ぜひ参考にしてください。
ペイシェントハラスメントとは、患者様やそのご家族から理不尽な要求や暴言・暴力などを受けることです。
特に近年では、被害を受けた医療従事者のニュースが話題に上がることが増え、問題視されています。
ペイシェントハラスメントは業務に支障をきたすため、ほかの患者様に影響する可能性があるほか、医療従事者のストレスにもつながりかねません。
ペイシェントハラスメントを行う患者様やご家族は、「モンスターペイシェント」と呼ばれます。
ペイシェントハラスメントに該当する行為・具体例は下記のとおりです。
ペイシェントハラスメントとは具体的にどのようなものなのか確認してみましょう。
「特別扱いされて当然である」と考えている患者様・ご家族は、下記のような理不尽な要求をする場合が多いです。
自分本位な主張をする患者様の対応に時間がとられてしまい、本来の業務や他の患者様のケアに支障をきたすケースは珍しくありません。
理不尽な要求を断っても従わず、クレームを入れたり、謝罪を求めたりと、状況が悪化することもあるでしょう。
下記のようなさまざまな理由で支払いを拒否する患者様・ご家族は多いです。
また、診療報酬の計算間違えや、追加の検査費用の発生などにより、後日医療費を請求するケースでも、医療費の支払い拒否はみられます。
中には、院長のように立場のある人間からの説明や謝罪を求めてくるケースもあるでしょう。
医療従事者からの指示や対応を受け入れられず、大声で怒鳴ったり、医療器具や設備を壊したりする行為もペイシェントハラスメントの一つです。
「訴える」「警察を呼ぶ」「弁護士に相談する」など、恐喝する患者様・ご家族もいます。
時には暴力に発展し、医療従事者が身の危険を感じるケースも珍しくありません。
ペイシェントハラスメントが発生する原因はさまざまです。
ここでは、ペイシェントハラスメントが発生する主な原因として、患者様が原因となる場合や病院・職員が原因となる場合について、それぞれ解説します。
患者様・ご家族の理不尽なふるまいには、性格やご家族・人間関係のトラブルなど個人的な要因のほか、下記のような原因が考えられます。
例えば、「病院で治療を受ければ良くなる」と思い込んでいる患者様の場合、思ったような症状の改善が見込めず、ペイシェントハラスメントに発展することもあります。
また、日本では「お客様は神様である」として、丁重にもてなす文化があることから、過剰な権利意識を抱いている患者様も少なくありません。
病院や職員が原因となり、ペイシェントハラスメントを引き起こすケースもあります。
多くの患者様やそのご家族は、疾患や外傷に対して不安や戸惑いを感じています。
病院や職員の対応に満足できないと、「寄り添ってもらえていない」「理解してもらえない」とネガティブな感情を抱きやすいです。
病院や職員にとっては些細なことであっても、患者様側が「蔑ろにされている」と感じ、ペイシェントハラスメントの引き金となるでしょう。
ペイシェントハラスメントに遭遇した際に、誤った対処法を選択すると、大きなトラブルに発展する可能性があります。
そこで、看護師向けのペイシェントハラスメントへの対処法は下記のとおりです。
咄嗟に取り入れやすい対処法を紹介するので確認してみましょう。
不当な要求をされても、毅然とした態度を心がけることが重要です。
相手を落ち着かせようとして下手に出ると、さらに不当な要求をされるケースは珍しくありません。
土下座での謝罪や医療費の無償化などを求められても、きっぱり対応しましょう。
看護師一人で対応すると、感情的になっている患者様やご家族がエスカレートし、対応しきれなくなる可能性もあります。
複数の職員で対応することで、暴力をはじめとした危険行為の抑止力となる効果も期待できるでしょう。
また、警察への届け出や法的手段を検討する場合、複数名で対応すれば正しい情報を把握しやすくなり、客観的な証拠を示すのに役立ちます。
理不尽な要求をするモンスターペイシェントに対して、ついぞんざいな対応をしてしまう医療従事者は少なくありません。
しかし、患者様やご家族は何らかの理由によって不安や焦り、苛立ちを抱えています。
患者様・ご家族の気持ちに寄り添い、丁寧で分かりやすい説明をすることで、患者様の陰性感情が和らぎやすくなるでしょう。
患者様やご家族は医療に関する専門的な知識があるわけではありません。
医療従事者にとって当たり前の知識であっても、患者様・ご家族にとっては理解が難しいことも多いでしょう。
したがって、相手が理解していると思い込んで余計な説明をすると、齟齬が発生する可能性があります。
親切心からであっても、不要な発言や対応は控えたほうが無難と言えるでしょう。
患者様やご家族が感情的になっており、周囲に危険を及ぼす可能性がある場合、場所を変えて話し合いの場を設けると良いでしょう。
別室に移動することで相手が落ち着きやすくなり、ほかの患者様の安全を確保できます。
ただし、別室に鉢植えや花瓶など、武器として使われるおそれがあるものは置かないようにしてください。
相手が感情的になっているようであれば、話を聞いた後で「確認してまいりますので、少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」などと伝え、その場を離れるのも手段の一つです。
クレームを受けたその場で対応すると、誤った判断をしやすくなります。
時間を置くことで相手が冷静になる場合があるほか、マニュアルを確認したり、上司に相談したりと適切な対応にもつながるでしょう。
基本的に病院内や施設内には、防犯カメラが設置されていますが、病室や居室ではプライバシーを確保するために設置されていないこともあります。
もしも防犯カメラが設置されていない場所で、ペイシェントハラスメントが起きた際は、映像や音声で状況を記録しておくのがおすすめです。
実際に受けた被害が映像や音声として残っていれば、客観的な証拠として有用となります。
下記のようなケースでは、必要に応じて警察や弁護士への協力を求めましょう。
警察や弁護士に相談する際は、証拠となる防犯カメラの映像やボイスレコーダーの音声データの提出も求められるため、あらかじめ用意しておくと安心です。
ペイシェントハラスメントは普段から備えておくことで、被害を最小限にとどめるのに役立ちます。
看護師ができるペイシェントハラスメントへの備えを紹介するので、早速取り入れてみましょう。
職員個人の判断に任せると、本来すべきではない対応をしてしまい、状況を悪化させる可能性はゼロではありません。
そこで、多くの病院や施設で、ペイシェントハラスメントが起きた際の適切な対応や注意点などを具体的にまとめたマニュアルを作成しています。
マニュアルに基づいて対応できるように、職員一人一人がしっかり学んでおくことが大切です。
ペイシェントハラスメントは、患者様・ご家族が「蔑ろにされた」と感じた時に起こりやすいです。
普段から患者様への丁寧な説明や言葉がけを意識し、コミュニケーションの質を高めると良いでしょう。
また、対応できないことは毅然とした態度で説明し、誤解を招かないこともペイシェントハラスメントの予防につながります。
患者様・ご家族の迷惑行為に対して、「診察を断る」「警察に通報する」といった対応方針をとっている病院・介護施設は多いです。
患者様に向けて対応方針を提示しておくことで、ペイシェントハラスメントの抑止力が期待できます。
また、防犯カメラの設置をポスターで分かりやすく掲示しておくのも有効な手段です。
ペイシェントハラスメントがストレスとなり、心身の不調が生じてしまう看護師は少なくありません。
ここでは、看護師がペイシェントハラスメントに悩んだらどうすればいいか、詳しく紹介します。
ペイシェントハラスメントに悩まされている方は参考にしてみましょう。
「ケアの際に大声で怒鳴られる」「殴られそうで怖い」など、担当患者様との関わりに不安を感じるのであれば上司に相談し、担当患者様を変えてもらうのがおすすめです。
無理に担当を続けると、精神的に疲労してしまい、メンタルダウンや体調不良を起こしてしまうこともあります。
休職や退職につながるケースがあるため、ペイシェントハラスメントに悩んだら早めに相談しましょう。
患者様から暴言・暴力を受けたことを立証できれば、多くのケースで労災認定されます。
そのため、ペイシェントハラスメントによって身体的な被害を受けた場合、受診してカルテを残すことが大切です。
また、患者様対応の際に動機やめまいなど不調を感じるようであれば、急性のストレス反応の可能性もあります。
医療機関を受診して診断書を書いてもらい、回復するまで休職を検討するのも一つの手段です。
近年では、インターネット上で誹謗中傷や不当要求など、悪質な書き込みの被害が増加しています。
中には、職員を特定できるような書き込みもあり、インターネット上でのペイシェントハラスメントに悩むケースも珍しくありません。
そこで、日本医師会では、2025年に「ペイシェントハラスメント・ネット相談窓口」を開設しています。
匿名での相談が可能となっており、必要に応じて弁護士や労働基準監督署と連携する仕組みです。
対面ではないことからこれまで見過ごされることの多かった、インターネット上のペイシェントハラスメントの対抗手段として注目されています。
職場に相談しても状況が改善されないようであれば、転職も視野に入れましょう。
近年では職員の休職・退職を防ぐために、ペイシェントハラスメントの対策に取り組んでいる病院や施設も増えてきています。
職員一人一人が安心して働けるような環境作りがされている職場を選べば安心です。
ここでは、ペイシェントハラスメントについてよくある質問を紹介します。
患者様やご家族から暴言・暴力を受けたからといって、泣き寝入りする必要はありません。
速やかに上司に報告し、適切な対応を講じてもらうと良いでしょう。
もしも業務上の配慮が期待できなければ、警察や弁護士への協力依頼も選択肢の一つです。
臨床経験の浅い看護師は、患者様・ご家族から理不尽なクレームを受けると「未熟な自分のせいかもしれない」と過剰に自分を責めがちです。
しかし、患者様の言い分に一理あったとしても、暴言を受け入れる理由にはなりません。
対応やケアの質など反省する部分があればしっかり振り返り、同じミスを繰り返さないことが重要です。
医療・介護の現場において、ペイシェントハラスメントによる被害は問題視されています。
ペイシェントハラスメントは、患者様側だけでなく、病院・職員が原因となるケースも少なくありません。
もしも看護師がペイシェントハラスメントに遭遇したら、毅然とした態度や複数名での冷静な対応、丁寧な説明などを心がけ、被害を拡大させないようにしましょう。
また、普段から適切な対応について学んだり、患者様への丁寧な対応を意識したりと、ペイシェントハラスメントに備えることも大切です。
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