
日々奮闘している看護師の中には、「これってパワハラかも?」「パワハラで苦しいけど耐えるしかない…」といったお悩みを抱えている人もいるでしょう。看護現場は、指導とパワハラの境界線が曖昧になりやすい傾向にあるため、心が折れそうな人も少なくないかもしれません。本記事では、看護師のパワハラの実態や及ぼす悪影響、対処法などを詳しく解説。退職の注意点や転職時のポイントにも触れますので、ぜひ参考にしてください。
看護師が職場での嫌がらせやいじめに悩んでいる場合、「どのような行為がパワハラに値するのか」「どうすれば対処できるのか」を判断するのは難しいもの。適切な行動を取るためにも、まずはパワハラの定義や具体例を通じて、現状を俯瞰してみましょう。
パワハラとは、パワーハラスメントの略語です。「労働施策総合推進法第三十条の二」を参考にすると、職場におけるパワーハラスメントとは以下の内容を指します。
職場において行われる
看護師の職場でも、3つの要素をすべて満たす言動がパワハラに該当します。パワハラに頭を悩ませている看護師は、「業務の適正な範囲であるかどうか」を意識してみてください。
厚生労働省「パワーハラスメント対策導入マニュアル(令和3年度版)(p.7)」によると、看護師を含む労働者へのパワハラ行為は、身体的・精神的な攻撃をはじめとする6つの項目に分類されます。
| 類型 | 例 |
| 身体的な攻撃 | 殴る、蹴る |
| 精神的な攻撃 | 人格を否定するような暴言 |
| 人間関係からの切り離し | 挨拶の無視、必要な連絡事項を伝えない |
| 過大な要求 | 明らかに無理だとわかる業務を押し付ける |
| 過小な要求 | 経験やスキルに見合わない仕事を任せる |
| 個の侵害 | 監視や非接触、私生活の過干渉 |
パワハラを行う本人に悪気がなくとも、看護師が心身ともに苦痛を感じることは不当です。自身が受けている行為で当てはまる類型はないか、確認してみましょう。
日本医療労働組合連合会「2022年看護職員の労働実態調査「報告集」(p.57)」によると、看護師が経験したパワハラの具体的な事例として、以下の内容が挙げられています。
※()内はパワハラ行為を行った人
看護師の中には自身に直接的な影響がなくても、「同様の行為を目撃したことがある」「同僚が被害に遭って悩んでいた」という人もいるかもしれません。パワハラは当人だけではなく、見聞きする周囲にも間接的な被害を及ぼすリスクがあります。
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日本医療労働組合連合会「2022年看護職員の労働実態調査「報告集」(p.28)」によると、パワハラを受けたことがあると回答した看護師の割合は3割を超えています。
その一方で、厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要(令和5年度厚生労働省委託事業)(p.11)」における「過去3年間にパワハラを受けた」と回答した全国の労働者の割合は19.3%です。
それぞれのデータは調査手法が異なるため、単純比較はできませんが、看護師の職場は「パワハラの問題が発生しやすい環境」であると考えられるでしょう。
日本医療労働組合連合会「2022年看護職員の労働実態調査「報告集」(p.29)」によると、看護師がパワハラを受けた相手として最も多いのが「看護部門の上司」です。
とくに、若い看護師ほど「看護部門の上司」と回答する割合が高くなっています。看護師のパワハラには、同僚や他職種、患者さんやそのご家族など、さまざまな関与者がいますが、上司部下の関係性は代表的なケースといえるでしょう。
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レバウェル看護公式Instagramにて「新人看護師だったころのつらかったエピソード教え て!」とのアンケートを実施したところ、実際に以下のような内容が寄せられました。
上記の内容からも、攻撃的な態度で敵対視してくる先輩や上司に、新人看護師が追い込まれている様子が伺えます。とくに、人格を否定するような言動は、自尊心を深く傷つけ、深刻な精神的ダメージを与える恐れがあるでしょう。
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看護師の職場でパワハラが起きる要因には、以下のような内容が考えられます。
看護師の職場はスケジュールが過密であり、疲労やストレスが溜まりやすい傾向にあります。そのため、余裕のなさから𠮟責や高圧的な態度につながることも少なくありません。
また、安全管理上の問題から厳しい指導が必要となる場面もあり、パワハラとの線引きが難しいのも現状です。一概にパワハラとは判断できず、なかなか顕在化しない場合もあるでしょう。
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パワハラを受けている看護師の中には、強く対抗できずに我慢するしかないと考える人もいます。ですが、パワハラを放置すると、以下のような悪影響が生じる恐れも。看護師としての本来の能力が発揮できなくなるため、注意が必要です。
パワハラにより看護師が過度なストレスを受けると、心身に不調をきたす可能性があります。気持ちが落ち着かなくなったり、何日も眠れなくなったりする場合は、精神的な影響を受けているかもしれません。仕事を休みがちになってしまい、看護師として思うように活躍できなくなる恐れがあるでしょう。
看護師がパワハラを受け続けると、人格を否定されたように感じて仕事に行くのが怖くなる可能性があります。ネガティブな言葉や、性格・特性を咎めるような言い方は、仕事への集中力も低下させるでしょう。また、萎縮して報連相ができなくなることで、業務への支障も生じてしまいます。
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業務に向き合っているにも関わらず、厳しい指導や暴言を受けると、「自分は看護師に向いていないのでは」と感じてしまうでしょう。パワハラが横行している職場で無理をし続けることで、退職の道を選ぶ看護師もいます。
なお、実際にレバウェル看護公式Instagramにて「「看護師辞めたい」って感じるのはどんな時?」とのアンケートを実施したところ、「パワハラがあったとき」との意見も挙がっています。
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看護師がパワハラを受けた際は、早めの行動を取って悪化を防ぐことが大切です。自分を責めたり、現状を把握する前に諦めたりすることなく、以下で紹介する4つの方法を試してみてください。
看護師がパワハラを受けた際は、まず「客観的な証拠」を残すことが重要です。第三者に正しく事実を認定してもらうためにも、些細なことまで丁寧に記録してください。以下の注意事項とあわせて、証拠となるものを最大限確保しておきましょう。
録音データを保管する際も同様に、正確な日時を記録しておくことが大切です。
パワハラ被害に遭った際は、1人で抱え込まずに周囲へ相談しましょう。以下に相談窓口の概要をまとめていますので、利用しやすい手段を選んでみてください。
上司や同僚に相談できる人がいる場合は、現状を打ち明けてみましょう。同じような境遇の被害者が複数いる場合は、一致団結するのも手です。また、部署異動の希望が通れば、退職せずともパワハラ行為を行う人から離れられる可能性があります。
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「パワハラ被害をどこに相談したら良いかわからない」「内部での相談を控えたい」という看護師は、以下のような窓口を利用するのも良いでしょう。サービスによっては、メンタルヘルスに関する内容も相談できます。
| 主な相談窓口 | サービスの概要 |
| 総合労働相談コーナー (厚生労働省) | ・全国379か所に設置されており、あらゆる分野の労働問題に対応している・面談もしくは電話で相談可能 |
| 労働条件相談「ほっとライン」 (厚生労働省) | ・厚生労働省の委託事業・労働基準関係法令に関する問題について電話相談が可能 |
| あかるい職場応援団 (厚生労働省) | ・厚生労働省の委託事業で、パワハラに関する情報発信を行うサイト・予防・解決に役立つ動画や裁判例を確認できる |
| こころの耳 (厚生労働省) | ・厚生労働省の委託事業で、メンタルヘルスに関する情報を一元化しているサイト・ストレスセルフチェックや各種相談窓口を閲覧できる |
| 看護職のためのメンタルヘルス相談窓口 (日本看護協会) | ・日本看護協会が開設しているメンタルヘルスに関する相談窓口・臨床心理士、精神保健福祉士、看護職への電話相談が可能 |
| 法テラス (日本司法支援センター) | ・法務省所管が設立している法的トラブルに関する総合案内所・法制度の紹介や、適切な相談窓口の案内を受けられる |
なお、法的措置によってパワハラの解決を図りたい看護師は、弁護士に相談するという選択肢もあります。弁護士に相談すれば、裁判や慰謝料の請求を行うことが可能です。
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「精神的な負担を減らしたい」という場合は、一時的に休むのも手です。診断書とともに休職を願い出ましょう。パワハラを受けて追い込まれた状態では、冷静な判断ができない可能性も。焦らずに自分自身を最優先に考えるようにしてください。
パワハラの報告をしても職場で適切に対処されなかったり、部署異動が厳しかったりする場合は、退職を選択する方法もあります。無理をし過ぎて心身の健康を害する前に、パワハラの原因となっている人物や環境から距離を置くことも重要です。
なお、看護師の中には「お礼奉行期間で退職しづらい」と感じる人もいるかもしれません。その際は、転職先で返済を肩代わりしてもらえないか確認してみましょう。詳しくは「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」で解説しています。
パワハラを受けた看護師が退職する際は、主に「就業規則の確認」「退職理由の準備」「会社都合退職の可否確認」の3点を押さえることが大切です。下記では、それぞれの注意点をまとめました。
看護師が退職するときは、就業規則を確認し、退職の申し出がいつまでに必要なのかを調べましょう。法律では2週間前に申し出れば可能とされていますが、就業規則では1〜3ヶ月前に申告するよう書かれている傾向にあります。有給休暇の消化や引き継ぎ期間も考慮してスケジュールを立てることをおすすめします。
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看護師の職場によっては、「待遇を良くするから」「次の人材が育つまで待ってほしい」というように強い引き止めを受けることがあります。そのため、退職を交渉する際は明確な理由を用意し、毅然とした態度を取ることが大切です。なお、退職届の提出を依頼されたにも関わらず受理されない場合は、内容証明郵便で郵送する方法もあります。
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「会社都合退職が可能かどうか」の確認も重要です。なぜなら、自己都合か会社都合かによって、その後受けられる公的支援が異なるためです。会社都合退職のほうが失業給付金の支給額や支給日数が多いため、覚えておくと良いでしょう。なお、自分の意志に反して自己都合退職扱いとなった場合は、ハローワークの手続き時に相談することも可能です。
パワハラを受けたことがトラウマとなり、「転職先で被害に遭わないか怖い」「マイナスのイメージを持たれないか不安」といった感情を持つ看護師もいるでしょう。働きやすい職場と出会うためにも、転職活動を行う際は以下のポイントを押さえてみてください。
まずは職場の情報をしっかりと調べましょう。頻繁に求人が出ている職場は看護師の入れ替わりが激しい場合があるため、注意したほうが良いかもしれません。また、ハラスメントに関する取り組みがどのように行われているかをチェックすることも大切です。働きながら内部の状況を把握したい看護師は、紹介予定派遣を活用するのも良いでしょう。
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パワハラが社会問題になっていることを受け、2022年4月から全事業所に「パワーハラスメント防止措置」が義務化されています。パワハラ対策に対する積極性は職場によって異なるため、問題が放置されていないか、また、対策が有効に機能しているかをきちんと見極めるようにしてください。
厚生労働省「パワーハラスメント対策導入マニュアル(令和3年度版)(p.13)」で示されている「事業所が取り組むべき項目」と照らし合わせると、判断しやすいかもしれません。
求人を取捨選択した後は、職場見学を通じて実際の状況を確かめましょう。チェックする点としては、「看護師の身だしなみが整っているか」「看護師同士のコミュニケーションは適切か」「患者さんへの対応は丁寧か」「挨拶は返してもらえるか」などが挙げられます。
なお、掃除が行き届いていない職場は、1人に押し付けていたり、衛生面の管理ができないほど忙しかったりするため注意が必要です。
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面接に臨む際は、愚痴やネガティブな内容は避け、前向きな発言を心がけましょう。転職理由を伝える際も、客観的事実のみを簡潔にまとめ、改善に向けて努力したことをアピールすると良いといえます。トラブルへ真摯に向き合ったという姿勢を示すことで、納得してもらえるはずです。
ここでは、看護師のパワハラに関して多い質問を紹介します。
看護師のパワハラは決して当たり前ではありませんが、看護現場が「パワハラを引き起こす要因の多い環境」であることは考えられるでしょう。本記事の「看護師の職場でパワハラが起きる理由」もあわせてご一読ください。
看護師は、安全管理上の問題から厳しい指導が必要となる場面もあり、パワハラと一概に判断するのが難しい仕事です。そのため、無自覚にパワハラ発言をする人もいるでしょう。パワハラは、誰もが被害者もしくは加害者になり得る問題でもあります。
対応してもらうことは可能です。労働基準監督署の総合労働相談コーナーでは、パワハラをはじめとする労働問題の相談対応や情報提供を行っています。全国379か所に点在しているため、お困りの看護師は面談もしくは電話で相談してみると良いでしょう。
法的措置による解決を新人看護師が図ることも可能です。ただし、経済的な損失も考慮して進めることをおすすめします。パワハラの解決策は訴訟以外にも複数あるため、本記事の「看護師がパワハラを受けた際の4つの対処法」を参考に検討してみてください。
看護師の仕事は厳しく指導されることも多く、パワハラと判断できずに無理して働き続けてしまう人もいます。心身に影響が出ていたり、人格否定されたと感じたりしているなら、被害を自覚して行動しましょう。客観的な証拠を残し、第三者から実害がわかるようにすることがポイントです。
なお、いざ退職を決断しても、強い引き止めを受けることがあるかもしれません。ですが、退職の自由は労働者に保障された権利です。きちんと手続きを踏めば転職できるため、パワハラの強い言葉に影響されないようにしてくださいね。転職活動を始める際は、「現在の状況から脱したい」という気持ちだけで先走らないことが大切です。ミスマッチを起こさないためにも、第三者のサポートを受けながら、内部事情をしっかりと掴みましょう。
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