
「災害看護師って何をするの?」「仕事内容や違いを知りたい」と考えている方もいるでしょう。災害看護師とは、災害時に現場で看護活動を行う看護師を指します。本記事では、災害看護師として大事なことや、役割についてまとめました。具体的な活動内容や向いている人の特徴についても解説しているので、ぜひ最後までご覧いただき参考にしてください。
災害看護師とは、災害発生時に、生命や健康への影響を最小限にするための看護活動を行う看護師を指します。多職種と連携し、被災直後から長期にわたりケアにあたるのが特徴です。看護の対象は人々だけでなく、コミュニティや社会全体を含みます。災害に関する独自の知識や技術を用い、刻々と変化する現場のニーズに対応しなければいけません。
災害看護師には、災害支援ナースとDMATの2つがあります。それぞれの違いは以下のとおりです。
| 項目 | 災害支援ナース | DMAT |
| 構成員 | 看護師、保健師、助産師、准看護師 | 医師、看護師、業務調整員 |
| 登録方法 | 災害支援ナース養成研修の修了 | 日本DMAT隊員養成研修の修了(筆記・実技試験含む) |
| 派遣時期 | 災害後3日後から1か月ほど | 災害直後 |
| 活動内容 | 避難所などでの被災者の看護ケア | 災害現場での救助活動、トリアージなど |
| 目的 | 避難生活における健康支援、生活支援 | 発災直後の急性期医療・救命活動 |
| 特徴 | 被災者の心身のケアや生活環境整備を重視 | 迅速性が求められ、初動対応が中心 |
災害支援ナースは、発災から数日後に避難所などで生活支援や健康管理を担います。被災した看護師の負担を軽減し、被災者の健康維持が目的です。都道府県の看護協会に登録することで活動でき、原則として3泊4日の期間で派遣されます。一方、DMATは発災直後から動く機動性のある医療チームです。医師、看護師、業務調整員で構成され、現場での救命活動やトリアージといった急性期の対応を行います。
▼関連記事
DMAT看護師の役割・活動内容とは?求められるスキルについても紹介
救急看護は、急なケガや病気の方を対象とする一方で、災害看護は、避難生活を送る人々の心身のケアも行います。救急看護では十分な医療資源がありますが、災害看護では限られた状況下で最大限の看護が求められることも大きな違いです。さらに、救急看護が急性期に重点を置くのに対し、災害看護は人々の状況に寄り添った長期的な関わりが必要となります。
▼関連記事
救急看護師とは?仕事内容とやりがいは?役立つ資格や向いている人も解説
災害看護師は、災害時に求められる行動を理解しておかなければならず、基本原則を押さえたうえで行動しなければいけません。
災害看護師としての心構えとして大事なのは、「災害現場での最優先事項は被災者の看護・ケア」だと理解しておくことです。被災者ケアのためには、まず自分自身の健康管理に十分配慮する必要があります。食事や睡眠、移動など、自身の身の回りのことは自身で行う心構えが求められるでしょう。不自由な環境下で活動することを前提としておかなければいけません。
災害発生後の行動原則として、CSCATTT(スキャット)の7つの基本原則があります。
| 項目 | 内容 |
| Command & Control | 指揮命令・統制 |
| Safety | 安全 |
| Communication | 意思疎通・情報収集・情報伝達 |
| Assessment | 評価・判断 |
| Triage | トリアージ |
| Treatment | 治療 |
| Transportation | 搬送 |
CSCA(組織体制関連の原則)は、活動を開始する前に、安全確保や指揮系統の確立、情報共有を行うことです。災害現場では、闇雲に治療を始めるのではなく、まずチームとして機能することが最も重要だと言えます。
TTT(医療支援体制の原則)は、CSCAで基盤が整った後に、トリアージや治療、搬送の医療行為に移行することです。この段階的な流れは、限られた医療資源でより多くの命を救うという目的を達成するために不可欠だと言えるでしょう。CSCATTTは、個人のスキルに頼るのではなく、組織の規律と連携を最優先することで限状況下での混乱を克服し、効果的な災害対応を実現するために重要な考え方です。
日本災害看護学会の「災害看護関連用語」では、災害サイクルを以下のように説明しています。
災害サイクルとは、「災害発生から復興・平時となり、再び災害が発生するという時間的経過をサイクルとして捉えた概念」
災害サイクルごとに必要な医療や支援があり、看護師に求められる役割も異なることを理解しておきましょう。
災害発生直後は、自分自身と周囲の安全を確保したうえで活動を開始しなければいけません。ライフラインの確認、被災者のトリアージ、救護所の立ち上げといった初期対応が主な役割です。軽症者や中等症〜重症者に対する処置・初期治療に携わります。状況が落ち着いたら、遺体の処置や遺族対応、被災者のメンタルケアなどを開始します。
発生直後から72時間を急性期と呼び、トリアージを実施し、負傷者への初期治療にあたる時期です。救護所や避難所を立ち上げ、被災者が安心できる環境づくりに努めます。救護物資の供給や普及作業など、医療以外の活動も重要となるでしょう。この期間は、DMATから後続隊への引き継ぎが行われ、一時的に医療支援が低下する場合もあります。
亜急性期になると、新たな外傷患者は減少する一方、持病や慢性疾患の悪化や感染症の流行、ストレス障害の増加に注意が必要です。被災者の免疫力低下を考慮し、感染症対策と保健衛生管理に注力します。現場の安全管理を継続しながら、被災者のメンタルケアに取り組まなければいけません。
発生数か月から数年後の慢性期では、被災地の復興が本格化し、中長期的な支援が求められます。医療体制の整備や被災者の生活指導、リハビリテーション看護を行う時期です。被災者の心のケアを継続し、被災前の生活に戻れるよう支援していきます。支援者自身のメンタルケアにも配慮しましょう。
発生数年後の静穏期では、災害の教訓を活かし、新たな災害に備えた取り組みを行います。災害予防や備え、救護組織の構成や物品の準備、災害教育・訓練を行う時期です。被災者の生活指導や精神的な支援も継続して行う必要があります。災害看護教育を進め、災害に備えたネットワークを構築していかなければいけません。
災害看護師も主な活動内容は、事前準備と災害現場、活動終了時に分けられます。ここでは主な活動内容をまとめました。
災害地に派遣される際は、事前準備が不可欠です。前任者からの申し送りや関係機関からの情報共有を行い、確認事項を見直しておきましょう。
| 項目 | 持参するもの |
| 身分を証明するもの | ・災害支援ナースの登録証 ・健康保険証 |
| 支援活動に必要なもの | ・服や靴(活動しやすいもの) ・ウエストポーチ ・ペンライト ・筆記用具やメモ帳 |
| 身を守るためのもの | ・軍手 ・雨具や防寒具、使い捨てカイロ ・常備薬 ・防虫スプレー ・ホイッスルもしくは防犯ブザー |
| 情報源として必要なもの | ・携帯電話・バッテリー ・現地派遣先地図 ・災害支援マニュアル |
| 生活に必要なもの | ・着替え ・洗面用具 ・タオルウェットシート ・水や食品 |
マスクや聴診器などの医療備品、ヘルメットや懐中電灯などの防災グッズを準備しておきます。また、過酷な現場に備え、心の準備も重要です。
現地到着後は、スタッフと連携・調整しながら支援活動を行います。主な支援活動は以下のとおりです。
災害看護における役割は、時間の経過に伴い変化します。二次災害のリスクに注意し、災害サイクルに合わせた支援活動をすることが重要です。
災害活動が終了したら、後任者への引き継ぎを済ませます。看護協会への活動終了報告や、活動報告書の提出を行いましょう。被災地での活動は心身に疲労やストレスが蓄積しやすいため、帰宅後はしっかり休養を取るようにします。悲惨な現場に遭遇することもあるため、セルフケアを心がけ、メンタルケアを怠らないようにしましょう。
災害看護師に向いている人の特徴は以下のとおりです。
災害看護に強い関心と、被災者に寄り添いたいという熱意がある人や、予測できない状況下でも冷静さを保ち、臨機応変に対応できる人には向いていると言えます。また、チームの一員として、他職種の専門家と円滑に連携できるかも重要だと言えるでしょう。常に災害に備え、継続的に学習や訓練を重ねておく必要があります。
先述したように、災害看護師には災害支援ナースとDMATの2つがあります。それぞれの道を目指す場合、以下のような条件が必要です。
災害支援ナースを目指すには、都道府県看護協会の会員であることが必須です。また、5年以上の実務経験や、所属施設の承諾が必要な場合があります。災害支援ナース養成研修を受講する必要もあるため、事前に確認しておきましょう。
DMATは、DMAT指定医療機関または災害拠点病院に入職する必要があります。日本DMAT隊員養成研修を修了し、試験に合格して登録者になっておきましょう。経験年数は問われませんが、所属医療機関からの推薦が必要です。また、5年ごとに資格の更新が求められるため、いつが更新なのか把握しておきましょう。
災害看護師として働く際には、BLS講習や防災士や災害看護専門看護師の資格を取得しておくと良いでしょう。ここでは、それぞれの特徴についてまとめました。
BLS(一次救命処置)は、AEDを用いた心肺蘇生法や窒息時の対応などを学ぶ講習です。乳児から成人までの心肺停止時の初期対応を習得できます。災害拠点病院への転職を考えている場合、履歴書に記載できるため推奨されている講習です。災害看護における初期対応の基礎を身につけるための講習でもあります。
防災士は、日本防災士機構が認定する民間資格です。資格取得の条件は以下のとおりとなります。
平常時から防災啓発や訓練を行い、災害時にはリーダーシップを発揮して被害を最小限に抑える役割を担います。災害看護に携わるうえで、防災に関する知識を深めるのに役立つでしょう。大規模災害の頻発に伴い、近年関心が高まっている資格でもあります。
ここでは、災害看護師に関するよくある質問にQ&A方式で回答します。
被災地域の復興に貢献できたり、看護師としてのスキルを社会に役立てたり、やりがいを実感できます。公的な業務として位置づけられたことで、経験を積むことがキャリアアップにつながるでしょう。災害看護のスペシャリストとして専門性を高められることはメリットだと言えます。
災害看護師になりたい理由は、これまでの経験から考えると良いでしょう。被災地でのボランティア経験や、災害看護に関する研修への参加経験が動機となります。看護師としてのスキルが、災害時にどのように役立つかを示すことが重要です。災害が起きた際、「何もできなかった」という悔しさが動機につながる場合があります。
災害看護の認定看護師はいませんが、災害看護の専門看護師は存在します。専門看護師は、特定の専門分野において卓越した看護実践能力を持つと認められた看護師です。認定看護師制度は災害看護分野には適用されていないため注意しましょう。
災害看護とは、災害発生時に、生命や健康への影響を最小限にするための看護活動です。災害看護師に特別な資格は不要ですが、災害サイクルごとに看護師の役割は異なり、業務内容も多岐に渡ります。
災害看護に興味があり、転職を考えている方はレバウェル看護の利用がおすすめです。災害看護師の働き方について相談ができます。プロのアドバイザーが自分に合った求人を紹介してくれるため、ミスマッチが起こりにくいのが特長です。利用料無料のレバウェル看護なら、相談のみでも受け付けているので、ぜひお気軽にご相談ください。
記事の制作について
「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。
キャリア
働く場所
選考対策
資格
その他
読みもの
連載