
保健師として働いていて「仕事がきつい」とお悩みの方や、保健師として就職・転職を迷っている方はいるでしょう。保健師の職場には「行政保健師」「病院保健師」「産業保健師」「学校保健師」「地域包括支援センター」があり、それぞれの大変さがあります。この記事では、保健師の仕事がきついと感じる理由を解説。仕事がきつい場合の対処法や転職の判断基準、キャリアプラン例なども紹介しますので、ぜひご一読ください。
保健師の仕事がきついと感じるのには、いくつかの理由があります。ここでは、「やりがいを感じにくい」「看護師より給与水準が低い傾向にある」「同じ職種の人が少なく孤独を感じる」などについて紹介します。
保健師の仕事がきついと感じる理由には、やりがいを感じにくいことが挙げられるでしょう。保健師の仕事は電話応対や資料作成などのデスクワークが多く、業務の目的は予防医療がメイン。病気の治療や療養に関わる看護師と比べ、自身の仕事の成果を実感しにくいといえます。そのため、看護師経験がある人にとっては物足りないと感じるケースもあるでしょう。
一般的に、保健師は看護師より給与水準が低い傾向にあるといえます。ここでは、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査 / 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」のデータを基に保健師と看護師の給与・年収などを比較しました。なお、年収はきまって支給する現金給与額×12ヶ月分+年間賞与で計算しています。
| きまって支給する現金給与額 | 年間賞与その他特別給与額 | 年収 | |
| 保健師 | 31万2,900円 | 75万5,700円 | 451万500円 |
| 看護師 | 35万2,100円 | 85万6,500円 | 508万1,700円 |
参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 / 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
※企業規模=10人以上を参照
上記のように、保健師の年収は看護師の年収より57万円ほど低い傾向です。保健師と看護師に収入差がある理由の一つには、看護師に夜勤手当があることが考えられるでしょう。
同じ職種の人が少なく孤独を感じてしまうことも、保健師が仕事をきついと感じやすい理由になります。同僚や後輩、先輩ナースとも多く接する看護師と異なり、保健師の立場が自分1人という職場は多いためです。自身と全く同じ仕事をしている人がいない場合、「理解者がいない」と感じ、保健師の仕事をきついと感じてしまうことも。
閉鎖的な人間関係になりやすいことも、保健師にとって「きつい」と悩まされる原因の一つになるでしょう。シフト制で働くことが多い看護師と異なり、保健師は月曜日から金曜日までの固定された日に同じ時間帯で働きます。毎日同じ人と顔を合わせることになるので、合わない人がいると「きつい」と感じても無理はありません。
有事の際に残業や休日出勤が増えることも、保健師がきついと感じる瞬間です。全日本自治団体労働組合の調査によると、新型コロナウイルス感染症が蔓延していた2021年頃、保健所や保健センターなどで働く職員の約2割が「過労死ラインの80時間」を超えて働いていた事例もあります。今後もし、こうしたウイルスが感染拡大するようなことが起きれば、保健師はこうした対応に追われる可能性があります。
保健師が仕事をきついと感じる理由には、幅広い属性の相手に相談や指導をするのが難しいことも挙げられるでしょう。保健師はさまざまな属性の方と触れ合う仕事であり、以下のように扱う疾病や相談内容が幅広いのが特徴です。
| 行政保健師 | 病院保健師 | 産業保健師 | 学校保健師 | 地域包括支援センターの保健師 | |
| 勤務場所 | ・保健所 ・保健センター ・市役所、区役所 | ・総合病院 ・訪問看護ステーション ・クリニック ・健診、検診センター | ・一般企業 | ・小学校 ・中学校 ・高等学校 ・大学 ・専門学校 | ・地域包括支援センター |
| 対象者 | ・該当する地域の住民 | ・外来および入院中の患者さま ・健康診断を受けた方 | ・企業の従業員 | ・教職員 ・学生 | ・該当する地域の高齢者やご家族 |
保健師として業務を行うなかで、上手く説明や指導ができないと悩んだり、ミスへのクレームから向いていないのではと感じてしまったりすることもあるでしょう。たとえば、産業保健師はメンタルヘルスの支援を行うこともあるため、対応方法により難しさを感じるかもしれません。
保健師が「きつい」とされるのには、保健師ならではの役割や職場ごとの理由が関係しています。ここでは、「行政保健師」「病院保健師」「産業保健師」「学校保健師」「地域包括支援センター」の5つの分野に分けて、保健師がきついとされる理由を解説します。
行政保健師が仕事で接するのはさまざまな属性の方で、実施する業務も以下のように幅広いのが特徴です。
訪問調査で各地に出向いたり、年上の方への健康指導に苦労したりして、心身ともに「きつい」と悩んでしまう場合もあるかもしれません。なかには、「公務員としてのメリットは感じるものの、保健師を辞めたい」と感じる人も。
病院保健師には、医師による診察や治療の前に、保健師が基礎的な健診を行ったり、入院が必要か判断したりする業務があります。病院保健師の場合、看護師業務と兼務することもあるようです。基本的に医師や看護師など医療従事者との連携が求められるため、人によっては職場の人間関係に悩んでしまうかもしれません。
▼関連記事
保健師の仕事内容って?活躍できる場所もあわせて解説
医療分野の知識があるのが自分1人だけの場合があり、業務の幅広さに「きつい」と疲弊するかもしれません。規模の大きな企業では仕事量に対して人手が足らず、1人で多くの業務を担当しなければならないこともあります。疾病予防のセミナーの実施やストレスチェックなど、定期開催の業務で対象者が多いと、より負担が増えることもあるでしょう。
▼関連記事
企業看護師とは?職種ごとの仕事内容や働くメリット、転職のコツを解説
学校保健師は、以下のような仕事を行います。
保健師は健康維持の相談といった保健師の代表的な仕事に加え、教職員と生徒間のハラスメント対応や、校内のいじめ問題などにも向き合います。配慮のあるコミュニケーションが求められるため、人によっては精神的に疲れてしまう場合もあるかもしれません。
地域包括支援センターで働く保健師は、介護状態にならないように予防のための体操を実施するなど、マネジメント業務を行うのが主です。しかし、人手不足の職場では、社会福祉士やケアマネジャーの仕事を手伝うこともあります。保健師の仕事に集中できないと、きついと感じることもあるでしょう。
▼関連記事
保健師とは?仕事内容や看護師との違い、活躍できる職場などを解説
保健師として働く人のなかには、仕事をきついと感じて辞めるか迷う人もいるでしょう。実際に辞める前に、まずは辞めたい理由を明確にしましょう。日本公衆衛生学会『行政保健師の離職意図に関連する「仕事の要求」と「仕事の資源:Job Demands-Resources Modelによる分析」による分析(p.234)』によると、保健師を辞めたい理由は以下の結果となっています。
| 保健師の離職理由 | 割合 |
| 仕事に興味・やりがいを持てない | 20.7% |
| 体調(心身の健康等) | 12.9% |
| 職場の人間関係 | 12.1% |
| 給料・待遇 | 4.9% |
参照:日本公衆衛生学会『行政保健師の離職意図に関連する「仕事の要求」と「仕事の資源」:Job Demands-Resources Model による分析」による分析(p.234)』
保健師の離職理由で最も多いのが、「仕事に興味・やりがいを持てない」ことのようです。保健指導をメインとする保健師の仕事の成果はすぐに目に見えるわけではありません。長期的な視野を持てない場合はやりがいを見出しにくいともいえるでしょう。
ここでは、保健師の仕事がきついときの対処法として、「休みを取る」「保健師のメリットを思い出す」「部署異動を願い出る」「転職エージェントへのキャリア相談」の4つを紹介します。
保健師の仕事がきついと感じるときは、まずは休みを取ってリフレッシュすることを考えましょう。過労が続くなかでは正常な判断ができない場合があるので、まずは休んで冷静に考えることが大切です。
保健師の仕事がきついと悩んだ際は、改めて保健師のメリットを思い出してみるのも良いかもしれません。まず、保健師の仕事は、日勤の仕事のなかでは給料が高水準なことが挙げられるでしょう。そのため同じ日勤の職場に転職すると、人によっては不満が募るかもしれません。福利厚生の充実、土日に休める、夜勤がない環境もメリットといえます。職場によって、資格手当を受け取れる場合がある点もメリットです。
保健師の仕事がきつい場合は、上司に部署移動を願い出るのも一つの手です。公務員である行政保健師はもともと2~3年で異動するので、上司に自らを打診することで、早めに部署異動できる可能性もあります。人間関係で辛い場合は、同じ職場に保健師が1人で勤務することが多い産業保健師や学校保健師に転職する選択肢もあるでしょう。
保健師の仕事がきついことから転職を考える際に、自己分析を自分でするのが難しい場合は、転職エージェントを活用するのも有効です。転職エージェントは将来のキャリアプランも含めた転職相談に乗ってくれます。看護業界専門の転職支援サービス「レバウェル看護」では、保健師の転職サポートの事例もあります。転職事例について詳しくは「未経験だけど保健師になりたい!夢を諦めなかったから見つけられた転職先」をご覧ください。
ここでは、保健師が転職で後悔しないための判断基準を解説します。転職をお考えの方は。「保健師に戻りたくなる可能性はあるか」「長期的に考えてもきついと感じるか」「体調に大きな影響が出ているか」などの項目をぜひ振り返ってみてください。
保健師に戻りたくなる可能性はあるかを改めて考えてみてください。たとえば、行政保健師は公務員です。昇進や福利厚生の安定感など、公務員のメリットを失っても問題ないかを考えてみましょう。保健師の求人は看護師より募集人数が少ないので、保健師の仕事に戻るのは簡単ではないこともあると頭に入れておくと、後悔するリスクを避けやすいかもしれません。
転職して後悔しないためには、長期的に考えても保健師の仕事がきついと感じるかを考えてみると良いでしょう。職場にもよりますが、保健師は長期的に働くと収入が上がる可能性があります。たとえば、保健師と看護師の経験年数別の年収推移を比べると、以下のようになります。
なお、年収は参照先データの定義により、所定内給与額×12+年間賞与その他特別給与額として計上。所定内給与額=現金給与額(きまって支給する現金給与額)から超過労働給与額(時間外勤務手当、深夜勤務手当、休日出勤手当、宿日直手当、交代手当として支給される給与)を差し引いた金額を指しています。
【経験年数ごとの保健師の年収】
| 経験年数 | 所定内給与額 | 年間賞与その他特別給与額 | 年収 |
| 0年 | 29万5,500円 | 22万9,200円 | 377万5,200円 |
| 1~4年 | 27万7,700円 | 96万6,900円 | 429万9,300円 |
| 5~9年 | 32万5,600円 | 125万2,000円 | 515万9,200円 |
| 10~14年 | 32万4,000円 | 114万2,400円 | 503万400円 |
| 15年以上 | 34万100円 | 108万8,800円 | 517万 |
【経験年数ごとの看護師の年収】
| 経験年数 | 所定内給与額 | 年間賞与その他特別給与額 | 年収 |
| 0年 | 26万9,800円 | 10万4,600円 | 334万2,200円 |
| 1~4年 | 30万6,900円 | 69万7,600円 | 438万400円 |
| 5~9年 | 30万7,600円 | 79万3,200円 | 448万4,400円 |
| 10~14年 | 32万7,800円 | 90万2,100円 | 483万5,700円 |
| 15年以上 | 35万6,500円 | 99万8,300円 | 527万6.300円 |
参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 / 令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
保健師は賞与が年収に大きく影響します。そのため、5年以上や10年単位など長く働くうちに、看護師の年収を上回る傾向にあるのです。
保健師が転職で後悔しないための判断基準には、「体調に大きな影響が出ているか」も挙げられます。仕事をきついと感じる状況をそのままにしておくと、体調を崩したり、うつ病といったメンタル疾患を引き起こしたりするケースもあります。心身の変化を感じた際は身近な人に相談したり、厚生労働省の「3分でできる職場のストレスセルフチェック」を活用したりするなど、自身を見つめ直してみるのも大切です。
転職後のキャリアをイメージできるかも、保健師が転職で後悔しないための判断基準として大切な項目です。転職の目的が「キャリアアップ」や「ほかの職場へ挑戦したい」など、前向きな理由の場合は転職活動が成功しやすいかもしれません。ただし、対人関係の問題から転職する場合、看護師やほかの業界でも同じ問題にぶつかる可能性もあるので、慎重に考える視点も持っておくと良いでしょう。
ここでは、保健師に向いている人と向いていない人にみられる傾向を紹介します。
ここでは、保健師として働くのが向いている人の傾向を解説します。一般的に、以下の人は保健師に向いているでしょう。
保健師はさまざまな人の病気を予防する仕事。予防医療に向けたアドバイスや指導を聞き入れてもらう必要があります。そのためには、相談しやすい雰囲気作りを意識するのはもちろん、相手の意見も柔軟に聞き入れながら導く姿勢が大切です。また、自身の保健指導の成果が出ているかを根気よく確認するための観察力や洞察力、継続力も欠かせません。
▶保健師の求人一覧ページはこちら
▼関連記事
保健師に向いている人は?職場別の適性や仕事内容、キャリア例も紹介
反対に以下のような人は、保健師の仕事をするのがきついと感じやすいかもしれません。
看護師が医師からの指示に基づいて処置を行うのに対し、保健師は自分で判断して動くことが多い仕事です。また、看護師はベッドから車いすへの移乗、排泄介助など身体を動かす業務も多いのに対し、保健師はデスクワークが多いとされます。
さらに行政保健師は公務員なので「副業禁止」など働き方に制限がある場合があるため、働き方の自由度を高めたい方はきついと感じるかもしれません。
保健師をきついと感じる方は、一度ご自身のキャリアプランを見つめ直してみるのも一つの手です。ここでは、保健師をきついと感じる方向けのキャリアプラン例として、「関連資格を取って転職の選択肢を広げる」「自己分析をして深めたい専門分野を見極める」を解説します。
保健師の仕事がきついとお悩みの際は、関連資格を取って将来の選択肢を広げてみてはいかがでしょうか。たとえば、以下のような資格は保健師への関連が深く、知識や経験を活かせます。
特に「第一種衛生管理者」は、最寄りの都道府県の労働局や労働基準監督署が定める方法で申請すると、試験が免除され登録できるので挑戦してみると良いかもしれません。
保健師の方向けのキャリアプラン例としておすすめなのが、「自己分析をして深めたい専門分野を見極める」ことです。保健指導と一口に言っても、保健師は勤める場所によって専門領域が細かく分かれます。
「乳幼児や妊婦さんの力になりたい」「高齢者の方の介護予防に貢献したい」「学校で子どもたちのメンタル面も支えたい」など、自身が深めたい領域を決めることが現状の悩みを打破することにつながるかもしれません。そのうえで別の保健師求人に応募すると、納得のいく転職になりやすいでしょう。
ここでは、保健師の仕事がきついと悩む人によくある質問をQ&A形式で紹介しています。
保健師の仕事が将来なくなることはないと予想できます。厚生労働省の「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況(p.1)」によると、令和4年の保健師の人数は60,299人。2012年は47,279人、2016年には51,280と5万人に到達しました。このように保健師の数は継続して増加傾向なので、需要は今後も高いと見込まれます。
新卒で保健師になったものの、なかには辞めたいという人もいることでしょう。心身に大きな影響が出ている場合など、退職や転職を検討するのも一つの手です。ただし、仕事に慣れる可能性や今後の部署移動などで働きやすさが変わることもあるので様子を見てみるのも良いかもしれません。
保健師の場合、人と関わる機会は多いといえます。行政保健師や地域包括支援センターの保健師であれば地域の住民と、産業保健師は企業の従業員、学校では教職員や生徒など幅広い人と関わります。病院保健師は患者さまだけでなく、医師や看護師との連携も必要です。人と関わることがストレスと感じる人は辛さを感じるかもしれません。
保健師の仕事がきついと感じる理由には、「やりがいを感じにくい」「看護師より給与水準が低い傾向にある」「同じ職種の人が少なく孤独を感じる」などがあります。「閉鎖的な人間関係になりやすい」「有事の際は残業や休日出勤が増える」「幅広い属性の相手に相談や指導をするのが難しい」といった点で大変さを感じる方もいるようです。
保健師には「行政保健師」「病院保健師」「産業保健師」「学校保健師」「地域包括支援センター」の5つの分野があり、それぞれ異なる大変さがあります。保健師の仕事がきついときの対処法は、「休みを取ってリフレッシュする」「保健師のメリットを思い出してみる」「上司に部署異動を願い出る」「転職エージェントにキャリアを相談する」の4つです。
保健師が転職で後悔しないための判断基準としては、「保健師に戻りたくなる可能性」「長期的な視点」「体調への影響」「転職後のキャリアのイメージ」といった項目が挙げられます。「保健師の仕事を続けるのがきつい」と感じる方は、一度ご自身のキャリアプランを見つめ直してみるのも一つです。関連資格を取って転職の選択肢を広げたり、自己分析をして深めたい専門分野を見極めたりしてみると悩みが軽くなるかもしれません。
また、これから保健師に就職・転職したい方もいるでしょう。とはいえ、未経験の仕事への挑戦は将来性などが分からないため行動しにくいもの。「保健師から別の仕事に転職したいけれど適職が分からない」「保健師に挑戦したいけれど求人が見つからない」など、キャリアプランに不安を抱えている方は多いことでしょう。ライフイベントも踏まえてキャリアの相談をしたい場合、「誰に聞いたら良いか分からない」と悩むかもしれません。
「レバウェル看護」では、キャリアアドバイザーが働きながら保健師を目指すための履歴書作成や面接対策などサポートを実施。働くうえでの希望をヒアリングしながら、保健師の経験を活かせる仕事を幅広くご提案します。自分で探すよりも、保健師を含めて長く働きやすい求人に出会えるでしょう。求人情報の取得はLINEやメールで好きなときに進められるので、ご安心ください。「やり取りに時間がかかるのでは?」と心配な在職中の方も、お気軽にご登録ください。
記事の制作について
「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。
キャリア
働く場所
選考対策
資格
その他
読みもの
連載
「レバウェル看護」転職サポート
Q.現状はどちらに近いですか?