がん治療薬の使い分けポイントを薬剤師が解説!~細胞障害性抗がん薬編~

「薬の使い分けBOOK」では、看護師さんが気になる薬の使い分け方法について、薬剤師の笹川大介が解説します。

本記事は、細胞障害性抗がん薬についてまとめました。作用・副作用に加えて特徴も記載していますので、ぜひ参考にしてください。

この記事を書いた人
笹川大介(ササガワダイスケ)
薬剤師、株式会社ゆかりファーマシー取締役

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。

各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。

※1※2 調査方法:インターネット調査/調査期間:2024年2月7日~2月13日/調査概要:「看護師転職サイト」を対象としたユーザー満足度調査/調査対象:男女、全国、看護師・准看護師資格保有者かつ対象看護師転職サイト利用経験者、20~29歳 107s(※1)、20~34歳 175s(※2)/調査実施:株式会社エクスクリエ/比較対象サービス:「看護師転職サイト」主要10サービス(専用サイトのあるサービスのみ・求人結果の表示ページは除く)

がんとは?

がんとは、細胞が異常に増殖し続ける疾患です。私たちの体は多数の細胞が集まって成り立っています。細胞の一つひとつには遺伝子という設計図があり、一定のルールに従って分裂・増殖を繰り返します。

ところが何らかの原因で遺伝子(DNA)に傷がついて、分裂・増殖の調整ができなくなることで、正常な細胞はがん細胞になります。

細胞がかたまってできたものが「がん」です。

がん細胞は異常な速さで分裂を繰り返し、限りなく増え始め、周りの正常な組織に侵入したり(浸潤)、さらにその増えた細胞が血液やリンパ液の流れに乗ってほかの場所にも移動(転移)し、ほかの臓器で増殖をすることがあります。

がん細胞は体の栄養分や正常な機能を奪い、放置すると生命を脅かすことになります。

がんの治療とは?

がんの治療は、手術療法、放射線療法、薬物療法があり、がんの種類、進行度、患者の状態などによって、これらの治療法を単独で実施したり、複数を組み合わせたりします。

薬物療法には、抗がん薬が使用されます。抗がん薬はがん細胞を死滅させたり、増殖を抑えたりする薬です。

抗がん薬は大きく以下に分類されます。

  • 細胞障害性抗がん薬
  • 分子標的薬
  • 免疫チェックポイント阻害薬
  • ホルモン薬

今回は、DNAの合成や細胞分裂といった細胞増殖に必要なプロセスを阻害する「細胞障害性抗がん薬」について、その種類と作用機序、使い分けを解説します。

細胞障害性抗がん薬の副作用について

細胞障害性抗がん薬のうち、多くの薬剤で骨髄抑制が起こる可能性があります。骨髄抑制では、白血球減少、赤血球減少、血小板減少が起こります。

白血球が減少することで、感染症が起こりやすくなります。症状としては、発熱や悪寒、腹痛、下痢などです。

赤血球が減少すると貧血を起こします。めまい、息切れ、顔色が悪くなるといった症状が起こります。

血小板が減少することで、出血を来すことがあります。皮下出血(青あざ)、鼻血などに注意が必要です。

関連記事

代表的な細胞障害性抗がん薬

ここからは代表的な細胞障害性抗がん剤を紹介します。

分類名:アルキル化薬

一般名:シクロホスファミド(商品名:エンドキサン)

【作用】
アルキル基と呼ばれる化学物質を含む薬です。がん細胞のDNAにアルキル基を結合させることで、DNAの複製を阻害して、抗腫瘍効果を示す薬です。

【特徴】
白血病、リンパ腫などの造血器腫瘍を中心に多くのがんの治療薬として使用されています。特に悪性リンパ腫や乳がんの治療でほかの薬剤と組み合わせて用いられることが多いです。

【副作用】
特徴的な副作用として、出血性膀胱炎があります。尿の回数が増える(頻尿)、排尿後もまだ残っている感じがする(残尿感)、排尿時、痛みがある(排尿時痛)、尿が赤みを帯びている(血液が混ざる)などの症状が起こります。

予防のために、十分な輸液を行い、フロセミドなどの利尿薬を投与します。

またウロミテキサン(商品名:メスナ)を点滴することがあります。ウロミテキサンは、シクロホスファミド(造血幹細胞移植の前治療)投与に伴う泌尿器系障害(出血性膀胱炎、排尿障害等)の発現抑制に適応があります。

分類名:白金製剤(プラチナ製剤)

一般名:シスプラチン(商品名:ランダ)

【作用】
白金(プラチナ)を含む薬です。がん細胞のDNAと白金が結合することで、DNAの複製を阻害して、抗腫瘍効果を示す薬です。

【特徴】
強力な抗腫瘍効果があり、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、胃がん、尿路上皮がんなど多くの種類のがんに使用されています。放射線治療と併用されることもあります。

【副作用】
悪心・嘔吐のリスクが高いです。ステロイド(デキサメタゾン)やセロトニン受容体拮抗薬、ニューロキニン受容体拮抗薬(制吐薬の記事参照)による吐き気対策が重要です。

特徴的な副作用として、腎障害があります。予防のため投与前後に大量の輸液を行います。

また投与量が多くなると、聴力障害が起こる可能性が高まります。高音域の聴力低下で、日常生活には支障がない程度とされていますが、総投与量が増えた場合には注意が必要です。

分類名:トポイソメラーゼ阻害薬

一般名:イリノテカン(商品名:トポテシン・カンプト)

【作用】
DNAの複製に必要なトポイソメラーゼと呼ばれる酵素を阻害することで、抗腫瘍効果をあらわす薬です。

【特徴】
植物由来成分の抗がん薬です。単独で投与されることもありますが、肺がんや大腸がんをはじめ多くのがんで、ほかの抗がん薬とともに投与します。

【副作用】
代表的な副作用は下痢です。投与中から直後に起こる早発性と、投与後24時間以降に発現する遅発性があります。

早発性の下痢は消化管の蠕動運動が亢進することにより起こります。一方、遅発性の下痢は抗がん薬により腸管粘膜が障害されて起こります。

下痢が続くと脱水を引き起こし、場合によっては致命的になりかねません。対策として、治療前に排便コントロールを確認する必要があります。

分類名:微小管阻害薬

【タキサン系】

  • 一般名:パクリタキセル(タキソール)
  • 一般名:ドセタキセル(タキソテール)

【ビンカアルカロイド系】

一般名:ビンクリスチン(オンコビン)

【作用】
細胞分裂の際に必要な微小管を阻害することにより、分裂を途中で停止させ抗腫瘍効果をあらわす薬です。

【特徴】
タキサン系微小管阻害薬は西洋イチイの木を原料として精製されます。パクリタキセル、ドセタキセルは抗腫瘍効果が強く、固形がん(卵巣がん、非小細胞肺がん、乳がん、胃がん、子宮体がんなど)に対して高い有効性が認められています。

ビンカアルカロイド系微小管阻害薬は、ニチニチソウという植物成分を元に造られた薬です。ビンクリスチンは他剤と併用し、白血病や悪性リンパ腫などの血液がんの治療に使用します。特に小児がんでは、よく使用される薬の1つです。

【副作用】
末梢神経障害に注意が必要です。投与3〜5日後から手足のしびれ、手足のチクチクした痛み、手足の感覚が鈍い、手足のピリピリ感、物がつかみにくいといった症状が起こることがあります。症状が軽いうちに速やかな対処を行うと重症化を防げます。

抗がん剤の投与中に血管外に薬剤が漏れ出し(血管外漏出)、周辺組織に障害を起こすことにも注意が必要です。少量でも潰瘍や皮膚壊死を起こします。血管外漏出が発生した場合には、直ちに抗がん薬を中止します。

分類名:抗がん性抗生物質(アントラサイクリン系)

一般名:ドキソルビシン(商品名:アドリアシン)

【作用】
がん細胞のDNA合成を妨げたり、DNAを切断したりすることでがん細胞を殺して抗腫瘍効果をあらわす薬です。

【特徴】
微生物によって産生され、微生物や細胞の増殖を抑える物質を抗生物質といいます。そのなかで抗がん作用を持っているものが、抗がん性抗生物質です。

ドキソルビシンは、悪性リンパ腫をはじめとして、肺がん、消化器がん、乳がんなど多くのがん種に有効な薬剤です。

【副作用】
脱毛が高頻度で起こります。

頻度は少ないですが、特徴的な副作用に心毒性があります。心毒性には、心不全、不整脈、虚血性心疾患、高血圧、血栓塞栓症などがあります。症状は、息切れ、動いた時の息苦しさ、胸痛、足のむくみ、頻脈などです。用量が多くなるほど発生頻度が高くなります。

ドキソルビシンでは総投与量が550mg/㎡を超えると重篤な心筋障害を起こす可能性が高くなります。過去の治療歴も確認しておく必要があります。また、血管外漏出にも注意すべきです。

分類名:代謝拮抗薬

【作用】
DNAを構成する成分には、プリン塩基、ピリミジン塩基と呼ばれる物質があります。また葉酸はプリン塩基・ピリミジン塩基が生成されるために必要なビタミンの一種です。

代謝拮抗薬はプリン塩基・ピリミジン塩基と似たような構造を持っており、がん細胞に取り込まれることで細胞増殖に必要なDNA合成を阻害したり、DNA合成に必要な葉酸の代謝を阻害したりすることで、抗腫瘍効果をあらわす薬です。

プリン代謝拮抗薬

一般名:メルカプトプリン(商品名:ロイケリン)

ピリミジン代謝拮抗薬

  • 一般名:フルオロウラシル(商品名:5-FU)
  • 一般名:カペシタビン(商品名:ゼローダ)
  • 一般名:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(商品名:ティーエスワン)
 

葉酸代謝拮抗薬

一般名:メトトレキサート(商品名:メソトレキセート)

【特徴】
代謝拮抗薬の代表は、フルオロウラシルです。多くのがん種に効果があり、特に大腸がん、胃がん、食道がん、膵臓がんなどの消化器がんを中心に用いられています。

またフルオロウラシルには、カペシタビンとテガフールというプロドラッグ※もあります。どちらも経口抗がん薬です。

※プロドラッグ
体内で代謝されることで、薬効を示す薬。

 カペシタビンは、肝臓や腫瘍組織でフルオロウラシルに変換されることで、腫瘍組織以外での副作用が軽いです。乳がんや大腸がん、胃がんで使用します。

テガフールはギメラシル・オテラシルを含む配合剤として使用されています。体内で徐々にフルオロウラシルに変換されます。

ギメラシルはフルオロウラシルを分解する酵素を阻害し、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強します。オテラシルはフルオロウラシルによる消化管粘膜障害を軽減します。消化器がん以外にも頭頸部がん、肺がん、乳がんで使用されます。

【副作用】
フルオロウラシルは消化管粘膜障害に注意が必要です。吐き気や嘔吐、食欲不振のほかにも、腸の粘膜が薬により傷害を受け、下痢が起こることがあります。また、口の粘膜が薬の影響を受けると、口内炎があらわれる場合があります。

服用し始めて数日以内に下痢と口内炎が同時に起こった場合は、骨髄抑制を併発している可能性があるため、すぐに服用を中止して医師・薬剤師に連絡してください。

また、カペシタビンの特徴的な副作用に手足症候群※があります。

※手足症候群
手のひらや足の裏にしびれや痛み、皮膚が赤くなったり、角化(表面が硬く、厚くなってガサガサする)、落屑(はがれ落ちる)などが起きます。

 手のひらと足の裏に保湿クリームをこまめに塗って乾燥を防ぐことで、悪化を予防できます。

▼代謝拮抗薬の一覧

一般名適応特徴副作用
メルカプトプリン急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病小児の急性リンパ性白血病(ALL)において、寛解状態を長く維持するための「維持療法」のキードラッグ骨髄抑制、肝機能障害、食欲不振、嘔気、嘔吐
フルオロウラシル大腸がん、胃がん、食道がん、膵臓がんなどの消化器がん乳がん、頭頸部がん代謝拮抗薬の代表的な薬。多くのがん種に効果消化管粘膜障害(吐気・嘔吐、食欲不振、下痢、口内炎)骨髄抑制
カペシタビン乳がんや大腸がん、胃がん肝臓や腫瘍組織でフルオロウラシルに変換されることで、腫瘍組織以外での副作用が軽くなっている手足症候群下痢、嘔気、口内炎、骨髄抑制
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム胃がん、大腸がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、膵臓がん、乳がんテガフールは体内で徐々にフルオロウラシルに変換されるギメラシルはフルオロウラシルを分解する酵素を阻害し、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強オテラシルはフルオロウラシルによる消化管粘膜障害を軽減骨髄抑制、下痢、口内炎、食欲不振、流涙
メトトレキサート急性リンパ性白血病、乳がん、肺がん、膀胱がん高用量では、代謝拮抗薬として働く。少量投与で関節リウマチなどの治療に用いられる骨髄抑制、口内炎、嘔気、下痢、肝機能障害、間質性肺炎

関連記事

さいごに

細胞障害性抗がん薬について、もっと知りたいことや、困っていること、そのほかにもこんな薬剤の記事が見たいなどがあればコメントしてください!

今回の内容はレバウェル看護公式Instagramにてイラストで簡単に解説しています。投稿はコチラ!

▼連載はバナーをTAP!
medicine
プロデュース
看護師のかげ
看護師、イラストレーター。病棟で働きながら医療・看護に関するコンテンツをさまざまな媒体で発表している。 保健師、呼吸療法認定士、終末期ケア専門士。著書に「看護が苦手なかげさんのイラスト看護帖」(永岡書店)ほか。X:@877_727、Instagram:@877_727
この記事を書いた人
笹川大介(ササガワダイスケ)
薬剤師、株式会社ゆかりファーマシー取締役

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。

各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。

お読みいただきありがとうございました!
いいね・シェアで編集部が喜びます

コメント

コメントはありません

コメントする

0 / 500

※ コメントを投稿する際は利用規約をご確認ください

記事の制作について

「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。

看護師さん向けお役立ち情報 コンテンツ制作ポリシー

看護師の転職で「レバウェル看護」が選ばれる理由

看護師から寄せられる“よくある質問”

  • Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?

    一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。

  • Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?

    病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。

  • Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?

    1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。

  • Q. お礼奉公中でも転職は可能?

    お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。

レバウェル看護の新着求人

編集部Pick up

人気記事ランキング

タグから記事を探す

キャリア

働く場所

選考対策

資格

その他

読みもの

連載

LINE

レバウェル看護は相談からでもOK!

\ 登録はカンタン1分! /

無料まずは相談してみる