がん治療薬の使い分けポイントを薬剤師が解説!~免疫チェックポイント阻害薬編~

「薬の使い分けBOOK」では、看護師さんが気になる薬の使い分け方法について、薬剤師の笹川大介が解説します。

本記事は、免疫チェックポイント阻害薬についてまとめました。作用・副作用に加えて特徴も記載していますので、ぜひ参考にしてください。

この記事を書いた人
笹川大介(ササガワダイスケ)
薬剤師、株式会社ゆかりファーマシー取締役

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。

各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。

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免疫とは

免疫とは、自己にとっての異物(病原微生物やがん細胞など)を非自己として排除するシステムです。免疫を担当する細胞には、好中球やマクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞などがあります。

このうちT細胞は、がん免疫で重要な役割を果たします。

T細胞は血液中に流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種です。T細胞は、細菌やウイルス、がん細胞などの異物から体を守る司令塔となります。がん細胞を見つけると活性化して攻撃をしかけます。

一方がん細胞は、自身が増殖するために、T細胞表面にある免疫チェックポイント分子と呼ばれるタンパク質に、攻撃のブレーキをかける信号を送ります。つまりがん細胞は免疫機能にブレーキをかける仕組みを使って、T細胞の攻撃から逃れているのです。これをがん細胞の免疫逃避といいます。

免疫チェックポイント阻害薬とは

免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞などの免疫細胞やがん細胞の表面にある免疫チェックポイント分子に作用して、免疫細胞を活性化させることで、がん細胞の免疫逃避を阻害し、がん細胞を死に至らしめる薬です。

免疫チェックポイント阻害薬の副作用

免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞の効果を強くするため、活性化が過剰になると自己細胞も障害を受けてしまいます。免疫チェックポイント阻害薬により誘発される炎症性疾患もしくは自己免疫疾患のような独特な副作用をirAE(免疫関連有害事象)といいます。

irAEはさまざまな臓器でみられますが、特に消化管、内分泌腺、皮膚、肝臓でみられることが多いです。

irAEは出現時期の予想が難しく、多くは治療中に発症しますが、まれに治療終了後にも発症することがあり、投与終了後も慎重に経過を観察する必要があります。


▼代表的なirAE

発生する臓器irAEの内容
皮膚皮膚障害
肝臓肝疾患(肝機能障害、肝炎)
腎臓腎機能障害
血液血液障害
呼吸器呼吸器疾患(間質性肺炎)
消化器消化器疾患(大腸炎、膵炎)
神経・筋骨格系筋肉疾患(筋炎、重症筋無力症、横紋筋融解症)
神経障害(ギランバレー症候群)
脳炎、髄膜炎
代謝・内分泌1型糖尿病
甲状腺機能障害(甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症)
下垂体機能障害
副腎皮質機能障害

irAEでは、従来の細胞障害性抗がん薬ではみられなかった重症筋無力症や1型糖尿病などが起こることがあります。また、これらのirAEは同時に多発する可能性もあります。

今回は、3種類ある免疫チェックポイント阻害薬の作用と特徴、そして副作用のirAEについてみていきましょう。

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代表的な免疫チェックポイント阻害薬について

分類名:抗PD-1抗体薬

  • 一般名:ニボルマブ(商品名:オプジーボ)
  • 一般名:ペロブロリズマブ(商品名:キイトルーダ) 

【作用】
T細胞表面のPD-1(免疫チェックポイント分子)に結合し、がん細胞からT細胞に送られているブレーキをかける信号をブロックします。その結果、T細胞が活性化され、がん細胞を攻撃します。

【特徴】
ニボルマブ、ペロブロリズマブは悪性黒色腫(メラノーマ)と呼ばれる皮膚がんの治療薬として承認され、その後は非小細胞肺がん、食道がん、大腸がん、腎細胞がん、尿路上皮がん、頭頸部がん、血液がんの一種であるホジキンリンパ腫などの適応を取得しています。主に手術療法での治療が困難ながんに対して使用します。

【副作用】
比較的早期に出現し、多くみられるirAEは皮膚障害です。具体的な症状としては、皮疹、発疹、皮膚炎、そう痒症(発疹のないかゆみ)、丘疹(直径1cm以下の皮膚の隆起)、紅斑(赤いブツブツ)などがあります。

分類名:抗PD-L1抗体薬

  • 一般名:アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)
  • 一般名:デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)
  • 一般名:アベルマブ(商品名:バベンチオ)

【作用】
がん細胞表面にあるPD-L1(免疫チェックポイント分子)がT細胞の表面にあるPD-1と結合すると、T細胞の働きにブレーキがかかり、T細胞はがん細胞を攻撃できなくなります。この薬はがん細胞表面のPD-L1に結合して、がん細胞からT細胞の働きにブレーキがかからないようにすることで、T細胞の活性化が抑制されず、T細胞ががん細胞を攻撃します。

【特徴】
抗PD-1抗体薬と同じく、主に手術療法での治療が困難ながんに対して使用します。効果を予測するため、がん細胞の表面にPD-L1がどの程度発現しているかを測定します。PD-L1ががん細胞のなかに多くみられる場合には、PD-1抗体薬、PD-L1抗体薬の有効性が高いことが分かっています。

アテゾリズマブ、デュルバルマブは非小細胞がん、小細胞肺がん、肝細胞がん等に使用されます。

アベルマブは腎細胞がん、尿路上皮がん、そしてメルケル細胞がんに使用されます。メルケル細胞がんは皮膚がんの一種で、メルケル細胞と呼ばれる細胞が際限なく増殖することで発生する、非常にまれな種類のがんです。高齢者の頭部や顔面にできることが多いです。

【副作用】
irAEの中でも、甲状腺機能障害はPD-1抗体薬とPD-L1抗体薬で発現頻度が高い傾向があります。

分類名:抗CTLA-4抗体薬

一般名:イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)

【作用】
抗原提示細胞上のCD80/86分子がT細胞上のCTLA-4と呼ばれる免疫チェックポイント分子に結合すると、T細胞の活性化が抑制されます。この薬はCTLA-4に結合して、CD80/86とCTLA-4の結合を阻害します。それによりT細胞の活性化の抑制が阻害され、T細胞の活性化が維持されることで、抗腫瘍効果をあらわします。

【特徴】
作用機序が異なるPD-1阻害薬のニボルマブとの併用療法で、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、食道がんなどに使用されます。2種類の免疫チェックポイント阻害薬を併用することで、がん細胞への攻撃が増強し、より治療が強化されます。

ただし、副作用であるirAEの発現頻度は高くなり、発現時期も早まる傾向があるため、注意が必要です。

非小細胞肺がんや悪性胸膜中皮腫以外では、使用回数が4回までと制限されています。理由としては、投与終了後も薬の有効性が維持されると報告されているため、また、投与回数が増えると重篤な副作用が生じる可能性があるためです。

【副作用】
irAEの中でも、下垂体炎や腸炎は抗CTLA-4抗体薬で頻度が高いとされています。

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さいごに

免疫チェックポイント阻害薬について、もっと知りたいことや、困っていること、そのほかにもこんな薬剤の記事が見たいなどがあればコメントしてください!

これは役立つぞ!とか現場と違うんだけど…というコメントも大歓迎です。

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プロデュース
看護師のかげ
看護師、イラストレーター。病棟で働きながら医療・看護に関するコンテンツをさまざまな媒体で発表している。 保健師、呼吸療法認定士、終末期ケア専門士。著書に「看護が苦手なかげさんのイラスト看護帖」(永岡書店)ほか。X:@877_727、Instagram:@877_727
この記事を書いた人
笹川大介(ササガワダイスケ)
薬剤師、株式会社ゆかりファーマシー取締役

熊本大学薬学部を卒業後、2003年より地元・鹿児島県種子島の薬局に就職。その後、2009年より現職。

各地での講演会やセミナーを多数行っており、最近はYouTubeでオリジナル講義「かんたん薬理学」を精力的に配信している。日経DIクイズの執筆者、薬剤師教育動画「描いてつかむ! 副作用の薬理学」出演などの経験を持つ。

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