
医療現場で用いられる麻酔の1つに「硬膜外麻酔」があります。
主に術後疼痛や、無痛分娩・帝王切開時の麻酔として使われ、患者の苦痛を軽減させられる優れた鎮痛法であるといえます。
しかし管理の際は注意点や合併症について十分に理解しておくことが重要です。
本記事では、硬膜外麻酔の概要と看護のポイントについて解説します。

硬膜外麻酔(エピ)とは、硬膜外腔にカテーテルを挿入して麻薬などの薬液を注入することで、脊髄が支配している神経を麻痺させ、痛みを感じにくくする麻酔法のことです。

手術の際に全身麻酔と併用し、術後も硬膜外カテーテルを残しておいて鎮痛に利用するケースも多いです。
また、帝王切開術や膀胱内灌流を伴う泌尿器科系の手術では、脊髄くも膜下麻酔と併用するケースもあります。
硬膜外麻酔のメリットは下記のとおりです。
硬膜外麻酔は鎮痛はもちろんのこと、術後合併症のリスクを減らせるのも大きなメリットだといえます。
特に影響があるのは、呼吸器合併症と消化器合併症です。手術後に麻酔が切れた際の痛みが強く呼吸が浅くなるのを防げれば、呼吸障害や肺合併症のリスクを下げられます。また、硬膜外麻酔を使用すると消化管の蠕動運動が亢進されることがわかっており、術後イレウスの可能性も低下します。
さらに、硬膜外麻酔は術中の出血量を減少させるため、鎮痛効果以外の面でもメリットが大きい麻酔法であるといえます。
さらに、体動に伴う痛みへの鎮痛効果が優れている点も硬膜外麻酔のメリットです。
硬膜外麻酔では、カテーテル挿入時に違和感や痛みを感じる人はいるものの、挿入後は不快感はほぼありません。
十分に鎮痛できれば早期離床が可能であり、術後合併症のリスクや高齢の患者さんの褥瘡発生へのリスクも低下するため、患者さんにも喜ばれるでしょう。
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ここからは、硬膜外麻酔の適応と禁忌について解説します。
硬膜外麻酔の主な適応は、次のとおりです。
開胸手術や開腹手術、整形外科における人工関節置換術などでは術後に疼痛を強く訴える患者が少なくなく、全身麻酔と併せて硬膜外麻酔が選択されることもあります。。また産婦人科領域では無痛分娩や帝王切開術といった処置でも適応となりますが、これらの場合は全身麻酔との併用はほぼありません。
次の項目に該当する場合は硬膜外麻酔が禁忌となります。
これらのケースに対し硬膜外麻酔を使用してしまうと、硬膜外膿瘍や硬膜外血腫のリスクが上がり大変危険です。
この章では、硬膜外麻酔の実施法とよく使われる薬剤について解説します。
硬膜外麻酔実施の主な流れを確認しましょう。
1.患者に、ベッドの端で側臥位をとってもらう(肥満・妊婦の場合は座位のことも)
2.その後、背中をエビのように丸め、両腕で膝を抱え込む体位をとってもらう

3.穿刺部位とその周囲を念入りに消毒する
4.医師にて穿刺しカテーテルを挿入する。挿入が確認出来たら針を引き抜く
5.カテーテルを固定する
6.薬剤投与を開始する
看護師が介助するうえで大切なポイントは、患者の肩と骨盤がベッドに対し垂直な位置で体位を保持し続けること。体位を保持することで、スムーズにカテーテル挿入ができ、カテーテルの誤挿入防止にもつながります。
体位保持には患者さんの協力が不可欠ですが、看護師はその体位を保持できるように、患者の足と肩のあたりを支え、十分に固定しましょう。
また高度肥満の患者さんの場合、側臥位では脊椎が触れにくく穿刺部位がわかりにくいこともあり、座位で行うこともあります。
妊婦さんの場合も同様、お腹が大きく側臥位で身体を丸め込む体位を取りにくい場合には座位で処置することもあります。
万が一カテーテルが硬膜外腔ではなく脊髄くも膜下腔へ誤挿入されてしまった場合、麻薬の効果が強く出すぎて急激な血圧低下や呼吸抑制が生じてしまうため処置中はただちに蘇生ができるよう救急カートや酸素投与の準備をしておきましょう。
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硬膜外麻酔では、局所麻酔薬や麻薬を投与します。
局所麻酔薬としてよく使われるものには、リドカインやメピパカイン、ブピパカイン、ロピパカイン、レボブピバカインなどがあげられます。
薬剤によって濃度や効果発現時間、効果持続時間が異なることを理解しておきましょう。
▼局所麻酔薬とその特徴
| 局所麻酔薬 | 濃度(%) | 効果発現時間(分) | 単独での効果持続時間(分) | エピネフリン付加時の持続時間(分) |
| リドカイン | 2 | 15 | 80~120 | 60~90 |
| メピバカイン | 2 | 15 | 90~140 | 120~180 |
| ブピバカイン | 0.5~0.75 | 20 | 165~225 | 140~200 |
| エチドカイン | 1 | 15 | 120~200 | 150~225 |
| レボブピバカイン | 0.5~0.75 | 15~20 | 150~225 | 150~240 |
局所麻酔薬は体動時の鎮痛効果が優れています。
一方で、交感神経遮断による血圧低下、知覚・運動神経の遮断による皮膚感覚異常や下肢の運動機能低下などが出現する可能性がある点に注意が必要です。
麻薬では、フェンタニルやモルヒネなどを使います。
「麻薬」と聞くと依存性への不安を抱く患者さんもいるかもしれませんが、術後鎮痛で使用する量では問題ないでしょう。
局所麻酔薬と麻薬を併用することで鎮痛効果がさらに高まるだけでなく、局所麻酔薬の投与量を最小限にし、局所麻酔薬による弊害をできる限り抑えることができます。
硬膜外麻酔においては、交感神経を麻痺させることによる血圧低下や、投与した薬剤による副作用が出現する可能性があります。
硬膜外麻酔による副作用は以下のとおりです。
モニター心電図・サチュレーションモニターの装着やこまめにバイタルサイン測定を徹底し、異常の早期発見に努めましょう。
硬膜外麻酔による合併症は次のとおりです。
なかでも硬膜外血腫と硬膜外膿瘍は、特に注意が必要な合併症とされており、早期に対処しなければ永続的に神経障害症状が残存することもあります。
硬膜外血腫は穿刺時やカテーテル挿入時に血管を傷つけてしまうことによって発生します。硬膜外腔に血管が多いことも原因の1つだと考えられています。高齢者もリスクファクターです。
また出血傾向のある患者では血腫が大きくなる傾向にあります。
硬膜外血腫の主な症状は以下のとおりです。
硬膜外腫瘍は、硬膜外腔に膿が蓄積されることにより腫瘍が発生し、脊髄が圧迫されます。
発見や治療が遅れると髄膜炎や敗血症へ発展し、生命維持に関わることもあります。糖尿病の既往やステロイド投与、薬物乱用、脊髄の変性疾患、脊椎の手術歴などがリスクファクターであると考えられています。
硬膜外膿瘍の主な症状は以下のとおりです。

麻薬投与による中毒症状(中枢神経系の症状)にも注意が必要です。
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硬膜外麻酔中の看護のポイントは、以下の3つです。
ひとつずつ見ていきましょう。
硬膜外麻酔中は、カテーテル刺入部の感染リスクを伴います。刺入部の感染兆候(カテーテル刺入部の発赤や硬結、刺入部痛)を観察しましょう。

カテーテル刺入部を観察するには患者に側臥位をとってもらう必要がありますが、体動による痛みが強いケースも少なくありません。看護師2名で介助し患者の身体をしっかり保持する、あるいはベッドのギャッジアップが許される場合にはギャッジアップしてからゆっくり上体を浮かせてもらうなど工夫できると良いです。
また、テープやフィルム剤にゆるみがあるとカテーテルが抜去されてしまうことがあるため、刺入部の固定状況も十分に観察します。カテーテルには目盛りがついているため、挿入長を見る際の目安にしましょう。
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硬膜外麻酔が十分に効いているかどうかの確認は、簡単にできる「コールドテスト(冷刺激検査)」がおすすめです。下肢にアイスノンを当て、左右差や位置による感じ方の違いを確認しましょう。
また、硬膜外麻酔には患者自身で鎮痛剤をボーラスできるPCA機能がついていることが多いため、PCAポンプにトラブルがないかも確かめます。硬膜外カテーテルとPCAポンプの接続部にゆるみや外れがないかを実際に手で触って確認しましょう。
硬膜外麻酔が十分に効いているにも関わらず疼痛の程度が強い場合には、点滴注射や内服、座薬などの併用も試してみると良いかもしれません。ただしこれは医師の指示によるため、その都度指示を確認してから投与しましょう。
硬膜外麻酔による副作用や合併症の観察も重要です。
見出し「硬膜外麻酔の合併症は?」で詳しく紹介した症状について観察し、異常の早期発見に努めましょう。
下肢の感覚鈍麻やしびれは手術中の局所麻酔量によっては生じうるため、手術室看護師からの申し送りをよく確認し、症状がいつから持続しているか、症状の程度、改善や悪化の状況を確認しましょう。
今回は、硬膜外麻酔とその看護について解説しました。
硬膜外麻酔は優れた鎮痛効果を発揮し、術後の呼吸器・消化器合併症のリスクをも低減させるため、患者にとってもメリットが大きい鎮痛法です。
一方で硬膜外麻酔には副作用や合併症のリスクもあるため、麻酔中は患者の観察、モニターやバイタルサインのチェックをこまめに行い異常の早期発見に努めましょう。
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看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
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