
看護師の必須スキルである「胸腔ドレーン」の看護ケア。適切な管理ができなければ患者さんが重篤な状態になる可能性があります。
しかし、胸腔ドレーンは仕組みが複雑であり、看護ケアに自信がない方もいるでしょう。
そこで、胸腔ドレーン挿入中の看護ケアや7つの観察項目、注意点を解説します。胸腔ドレーン挿入中の看護ケアに不安がある方や、後輩にうまく説明できず悩んでいる方は参考にしてください。

大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟、循環器内科などで看護師として14年間勤務。主に急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療・看護・育児にまつわる記事の執筆や監修に力を入れている
X(Twitter):@shota_papa37
胸腔ドレーンとは、胸腔内に溜まった浸出液や血液、空気などを身体の外へドレナージし、肺の拡張を促すことを目的とした治療法です。
ドレナージとは排液や排膿を意味し、ドレーンとは排液のための管を指します。
胸腔ドレーンは、肋骨の内側にある壁側胸膜と外側にある臓側胸膜の間の「胸膜腔」に留置します。
ただし、挿入する位置は治療する疾患により異なる場合もあるため注意してください。
▼例
空気と液体では重力の関係で溜まる場所が違うため、挿入部位が異なるのです。

胸腔ドレーンを挿入する主な適応は以下の3つです。
気胸や膿胸などの疾患や呼吸器外科や心臓血管外科の手術後の患者さんが適応です。ほかにも、胸腔ドレーンから薬剤を投与し治療を行う場合もあります。
肺を膨らませておくために、胸腔内圧は常に陰圧です。胸腔ドレーンを留置するのみでは、身体に空気が入り込みます。そのため、低圧持続吸引装置につなげて圧をかけ続ける、もしくは高低差を利用して排液を行います。
排液は、以下の3つで構成される3連ボトルシステムがよく使用されます。
| 名称 | 目的 |
| 排液ボトル | 胸腔内の浸出液や血液を溜める |
| 水封室 | 外からの吸気が身体に逆流するのを防ぐ |
| 吸引制御ボトル | 指示された量の蒸留水を入れ、吸引圧を調整する |
水封室に蒸留水を注入し忘れた件などが、ヒヤリハットで取り上げられているため注意しましょう。

▼関連記事
胸腔ドレーンのメカニズムや注意点・観察点について知りたい
胸腔ドレナージの主な合併症は以下の5つです。
| 合併症 | 発生機序 | 観察ポイント |
| 再膨張性肺水腫 | しぼんだ肺が再び広がり、肺への血流量が増加し、リンパ還流が増え肺水腫が起きる | SpO2低下、血圧低下、呼吸困難感など |
| 臓器・血管損傷 | 肺や心臓、肝臓、脾臓に誤って挿入することで起きる | 排液の性状、SpO2低下、血圧低下など |
| 皮下気腫 | 刺入部から皮下に空気が漏れると起きる | SpO2低下、皮膚の握雪感など |
| 逆行性感染 | 刺入部や排液ボトルの出口から感染を起こす | 刺入部の発赤や腫脹、発熱など |
| 迷走神経反射 | 恐怖や強い緊張、耐えられない疼痛などで起きる | 徐脈、血圧低下など |
発生する機序を踏まえたうえで異常の早期発見に努めましょう。

7つの観察項目に沿って注意深く観察し、異常の早期発見につなげましょう。迅速な対応を要する場合は、すぐに医師に報告してください。
血圧や脈拍、呼吸回数、SpO2などが通常から変化がないか観察します。
胸腔ドレーン挿入中は、排液量の変化や疼痛などから患者さんの状態が変化しやすいです。
なぜなら、排液量が増えると出血している可能性があるためです。また、疼痛が強くなると迷走神経反射を起こし徐脈になる場合もあります。
特に、挿入した直後は、頻回にバイタルサインを測定します。
「息が苦しい」「呼吸ができない」などの呼吸困難感や胸部症状に加え、疼痛の観察も重要です。
なぜなら、胸腔ドレーンが留置されているところには、肋間神経や横隔神経などがあり、疼痛を感じやすいためです。
胸腔ドレーンがズレると疼痛を感じるため、しっかり固定してください。
呼吸困難感や疼痛などの自覚症状が現れた際には、ナースコールで知らせるように説明しましょう。
排液が1時間で100ml以上あり、血性であれば出血の可能性があります。そのため、すぐに医師に報告してください。
排液量の減少は、一見すると患者さんの状態が安定したと思うかもしれません。しかし、胸腔ドレーンが閉塞した可能性も考えられます。
排液は量の変化だけではなく、性状の観察も大切です。混濁や浮遊物があれば感染、白色は乳び胸が疑われます。
▼関連記事
胸腔ドレーンの排液の浮遊物は何か知りたい
皮膚の腫脹や発赤をはじめ、疼痛や熱感などの感染徴候がないか観察します。
ただし、刺入部にガーゼがある場合は、頻回にガーゼをはがすと不潔になる可能性があります。そのため、見える範囲で確認し、ガーゼ交換時にしっかり観察しましょう。
このとき固定方法も観察し、自己抜去や事故抜去を予防してください。
この際、固定部位と胸腔ドレーンに印をつけておくと、看護師が交代しても固定がズレていないか確認しやすいため、異常の早期発見につながります。
皮下気腫では、胸部を触診した際に「プチプチ」と握雪感があります。
エアリークとは空気漏れのことであり、水封室のところに気泡が現れます。
突然、皮下気腫やエアリークが出現した際は、気胸が考えられます。
迅速な対応を要するため、自覚症状を確認しつつ、医師への報告が必要です。
▼関連記事
胸腔ドレーン挿入後に皮下気腫ができる理由が知りたい
胸腔ドレーンのエアリークの評価について教えてほしい
呼吸性移動とは「呼吸にあわせて水封室が上下に移動する」ことです。正常であれば、吸気時に上がり、呼気時に下がります。
しかし、胸腔ドレーンは狭いスペースにあるため、肺が広がると呼吸性移動が少なくなります。この状態であると、胸腔ドレーンを抜去できるタイミングなのかもしれません。
呼吸性移動がない場合は、チューブが閉塞した可能性が考えられます。SpO2低下や呼吸困難感の有無を把握しながら、チューブの折れがないか、抜けかかっていないかなどの確認が大切です。

患者さんの状態だけではなく、機械が適切に機能するかの確認も重要です。具体的には以下のとおりです。
定期的な確認を行い、適切に管理しましょう。
以下の状態となったときには、迅速な対応が必要です。
今後さらに状態が悪化する可能性があるため、すぐに医師に報告してください。
胸腔ドレーン挿入中にトラブルが発生すると、危険な状態に陥る可能性があります。看護ケアを実施する際の注意点や対処法を確認しましょう。
リハビリをするときや検査室へ搬送する場合は、胸腔ドレーンが抜けたり、接続が外れたりするなどトラブルが起きやすいです。ベッドから移動するときは、ドレーンを引っ張っていないか、吸引がかかっているかなど十分に確認してください。
胸腔ドレーンを移動させる際に、排液ボトルが高くなると液の逆流により逆行性感染が起こる危険性があります。実施する前に手順を確認し、正しい手技で操作しましょう。
リハビリ前に医師に鎮痛剤の使用を確認しておくと、疼痛を軽減できるかもしれません。
医療事故情報収集等事業 第11回報告書 (2007年7月~9月)によると、ドレーン挿入や留置に関連したヒヤリハットは「位置のずれ・抜去」が全体の24%を占めます。
事故抜去や自己抜去が起こった場合は、すぐに刺入部を押さえ、テープを貼って穴をふさいでください。
その理由は、抜けた穴から空気を引き込んでしまうためです。ほかの看護師に応援を要請し、すぐに報告しましょう。
医師が再挿入、もしくは抜去したまま縫合を行います。
事故抜去は患者さんの苦痛を伴います。患者さんに注意点を説明し、事故抜去が起こらないように対策しましょう。
医療事故情報収集等事業 第11回報告書 (2007年7月~9月)によると、ドレーン挿入や留置に関連したヒヤリハットで「接続外れ」は全体の12%を占め、押さえておくべきトラブルの1つといえます。
接続部は、結束バンドなどでしっかり固定しておきましょう。
万が一接続が外れた場合は、チューブをすぐにクランプします。このとき、呼吸困難感の症状がないか、バイタルサインに変動がないか確認してください。
医師の指示がなければ原則、胸腔ドレーンはクランプしません。特に気胸を改善する目的で胸腔ドレーンを使用している場合は、クランプにより緊急性気胸となり患者さんが危険な状態となる可能性があります。
ただし次のような場面では、クランプが必要です。
接続部から10cm程度のところでドレナージチューブを2ヶ所クランプします。チューブが柔らかい素材の場合は破損させないように注意してクランプしましょう。
▼関連記事
気胸の際に胸腔ドレーンのクランプを長時間してはいけない理由は?
ドレーン抜去の基準は、挿入した目的により異なります。
これらの基準は、あくまで目安です。
術後は、正常であれば排液量は減少し、排液の性状が血性から漿液性へと変化したら抜去となります。
胸部レントゲンやCT所見、患者さんの状態などから、医師が総合的に判断します。
抜去後は、患者さんの状態や刺入部を観察しましょう。皮下気腫が現れていないか、ガーゼの汚染がないかの確認が異常の早期発見につながります。
胸腔ドレーン挿入中の看護ケアは、業務のうえで欠かせないスキルのひとつです。適切な管理ができなければ患者さんが重篤な状態に陥る恐れがあります。
本記事を参考に胸腔ドレーンの看護ケアへの理解を深めると、後輩の看護師に根拠をもって指導できます。
▼関連記事
新人看護師さんのための【基礎知識】胸腔ドレーンの管理と看護のポイント教えます!

大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟、循環器内科などで看護師として14年間勤務。主に急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療・看護・育児にまつわる記事の執筆や監修に力を入れている
X(Twitter):@shota_papa37
記事の制作について
「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。
看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
キャリア
働く場所
選考対策
資格
その他
読みもの
連載
コメントはありません