クリニックと病院の違いとは?看護師の仕事内容や給料の差を紹介

2023.3.13

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「クリニックと病院の違いとは?」「働く環境は大きく異なる?」と気になる看護師の方も多いのではないでしょうか。クリニックと病院は、基本的に期待されている役割や看護師の働き方が異なります。この記事では、看護師が働くうえで押さえておくべき病院とクリニックの違いをまとめました。また、クリニックへ転職するメリット・デメリットも解説。クリニックへの転職を検討している方は、ぜひご一読ください。

目次

クリニックと病院の違いとは?

クリニックは、主に外来診療を行う医療機関であるのに対して、病院は外来診療以外に入院治療も行う医療機関です。クリニックによってはベッドを有する施設もありますが、大きな違いは病床数といえます。以下でクリニックと病院の基本的な違いを紹介しているので、ご確認ください。

期待されている役割

クリニックは地域の身近なかかりつけ医として、比較的軽症な患者さまの診療・処置を行います。一般的に診療所と呼ばれ、「○○内科医院」「○○整形外科」などもクリニックの一つです。クリニックは、「特定の科目をメインに診療している所が多い」といった点も特徴でしょう。
一方、病院は救急医療や高度医療、専門医療などを提供する医療機関です。「○○大学病院」「○○総合病院」「○○医療センター」など医療機関名もさまざま。基本的に複数の診療科目を有し、幅広く専門性の高い医療を担っています。病院によっては検査や治療、手術のために全国から通う患者さまもいるようです。

規模・病床数

クリニックと病院では病床の有無や数に違いがあり、施設自体の規模が異なるといえるでしょう。その病床数によって、クリニックと病院は以下のように位置付けられています。(診療所=クリニック)

病院20床以上
診療所0~19床
有床診療所1~19床
無床診療所0床

引用:厚生労働省「医療施設の類型

20床以上あると「病院」、20床以下はクリニックになります。大規模な病院の場合、1,000床前後を有する所もあるようです。また、クリニックと病院では運営元にも違いがあります。個人や医療法人が主に開設するクリニックに対して、病院は国立大学法人や都道府県、市区町村など規模の大きいのが特徴です。クリニックによっては規模が大きな大手法人が運営しており、全国展開しているケースもあります。

出典
厚生労働省「医療施設の類型」(2023年3月10日)

職員の配置基準

クリニックは職員の配置基準が設けられていませんが、病院には基準があります。一般病院の場合は、「入院患者:医師が16:1」、「入院患者:看護師(および准看護師)は3:1」というものです。外来は、「患者:医師が40:1」、「患者:看護師(および准看護師)が30:1」と定められています。職員の配置基準は、以下のように病床の種類や職種によって異なるようです。


引用:厚生労働省「医療法に基づく人員配置標準について

高度かつ専門性の高い医療が求められる病院には、医師や看護師以外にも薬剤師や栄養士など数多くの職員が在籍しています。各々が適切な医療やケアを提供できるよう、一定の配置基準が設けられているといえるでしょう。

出典
厚生労働省「医療法に基づく人員配置標準について」(2023年3月10日)

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看護師が押さえておくべきクリニック勤務と病院勤務の違い

クリニックと病院では、看護師の働き方や給料などが異なります。「クリニックと病院どちらに転職しようか悩んでいる」といった看護師の方は、以下をチェックしておきましょう。

働き方の違い

病院の場合、病棟勤務があれば夜勤のある勤務形態がメインとなりますが、クリニックであれば日勤のみが大半です。整形外科や産婦人科など、病床や手術室のあるクリニックは夜勤があるかもしれませんが、多くのクリニックでは日勤が基本といえるでしょう。
また、勤務日や休みに関しても、違いがあります。病棟勤務の場合は土日祝関係なくシフト制が基本ですが、クリニックは平日や土曜勤務がメインで、「日祝休み」「平日の○曜日は休診日で休み」といったケースが多いようです。

仕事内容の違い

病院は外来・病棟・手術室・救命センターなど複数の部署があり、所属先によって看護師の担当業務は異なります。一般的な病棟の場合、入院患者の身体介護や夜勤時の対応などがメインでしょう。クリニックの場合、看護師の仕事は診察や検査の補助、注射などが挙げられます。また、看護師が医療器具の洗浄や滅菌、物品の管理や発注を行うこともあり、業務範囲は幅広いものです。クリニックの仕事内容について詳しく知りたい方は、「クリニックで働く看護師の仕事内容とは? 給料やメリット・デメリットも紹介!」をご覧ください。

看護師の人数の違い

クリニックは「病院より規模が小さい」「職員の配置基準がない」といった点から、病院よりも看護師の人数が少ないのが現状です。実際に何百床もある病院と、入院施設のないクリニックを比較した場合、必要な看護師数に差があるのは必然といえるでしょう。
複数人看護師が在籍している規模が大きなクリニックもありますが、一方小規模なクリニックの場合は「看護師は1人のみ」といったケースもあるようです。

給与の違い

日本看護協会「2021年看護職員実態調査」によると、看護師の給与はクリニック勤務が35万4,563円、病院勤務が38万6,046円という結果です。病院勤務の方が3万円ほど高いことが分かります。

平均基本給額(円)平均税込給与総額(円)
病院27万7,696円38万6,046円
クリニック(診療所)25万9,062円35万4,563円

引用:日本看護協会「2021年看護職員実態調査

病院の方が高給与なのは、夜勤手当が影響しているといえます。病院勤務は病棟や救命センター、手術室など夜勤のある仕事が多く、手当が支給される可能性は高いでしょう。また、規模の大きい病院の場合は基本給や各種手当の額が高い傾向にあります。

出典
日本看護協会「2021年看護職員実態調査」(2023年3月10日)

看護師がクリニックに転職するメリット

看護師がクリニックで働くメリットには、「基本的に夜勤がなくプライベートを大切にできる」「難しい処置をする場面が少ない」などが挙げられます。以下で詳しく紹介しているので、クリニックへの転職を考えている方はチェックしておきましょう。

基本的に夜勤や日・祝出勤なくプライベートを大切にできる

多くのクリニックには夜勤がないため、夜は家事や育児、趣味といったプライベートを大事に過ごせます。夜勤がない分、生活リズムを維持しやすいのも魅力の一つ。また、日曜・祝日や年末年始が休みの職場も多く、家族と生活スタイルを合わせられるのもメリットといえるでしょう。

クリニックは、「夜は有意義な時間を過ごしたい」「夜間帯や週末は子どもの預け先がない」という方にとって、適した職場といえるでしょう。

施設数が多く職場の選択肢が幅広い

クリニックは大きな病院よりも身近で見つけやすく、職場の選択肢が幅広いのが魅力です。厚生労働省の「医療施設動態調査(令和3年1月末概数)」によると、全国の病院数は8,236軒、クリニック( 一般診療所)は10万3,071軒と大きな差があります。「気になる診療科目に絞って職場を探せる」「近所や駅近など希望する勤務地で求人を見つけやすい」といった点がメリットといえます。

難易度の高い処置を行う場面が少ない

クリニックは病院ほど難易度の高い処置を行う機会は少ないため、比較的ゆとりを持って働けるでしょう。「落ち着いた環境で働きたい」「患者さまとじっくり向き合ったケアをしたい」とお考えの看護師に適しています。ただし、診療科目や状況によっては緊急対応や重症者のケアを行う場面も。その場合、緊張感やプレッシャーの中で求められた業務にあたる必要があります。

クリニックに勤務するデメリット

クリニックに勤務するデメリットには、「給料が低めの傾向にある」「突発的な休みが取りにくい」などがあります。ほかにもクリニックならではのデメリットもあるので、以下で確認しておきましょう。

高度な看護知識や技術が身につきにくい

クリニックには重症患者の対応や難しい処置を行う機会が少ない分、高度な医療知識や看護技術を身につけにくい環境といえるでしょう。また、職場によっては患者対応以外にも事務や受付、清掃をこなす必要もあり、勤務時間のすべてを看護業務にあてられるわけではありません。「看護スキルを磨きたい」「さまざまな医療技術に触れて看護師として成長したい」と考える方にとっては、物足りなさを感じるかもしれません。

給料が低い傾向にある

先述したとおりクリニックは病院よりも給料が低い傾向にあるため、高年収は目指しにくい傾向にあります。理由として夜勤手当がない点以外にも、役職に就く機会や専門性の高い業務に携わる機会があまりなく、支給される手当が少ないことも関係しているでしょう。
一般的なクリニックは、1日に複数件担当を抱える訪問看護事業所や、夜勤のある介護施設より給料が低い可能性もあります。クリニックの給料に関しては、「クリニック看護師の給料相場はどれくらい?収入アップのポイントも解説」の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

人数が少ないため突発的な休みや有給が取りにくい

クリニックは看護師の人数が少ないので、自身や家族の体調不良、急な予定などによる突発的な休みが取りにくいといえます。クリニックによっては在籍する看護師が1〜2人で「当日シフトに入っている看護師は自分一人」といったケースもあるでしょう。そのような環境の場合、まとまった休みや有給休暇も取得しにくいと感じることも。もし休む際は、ほかのスタッフとのスケジュール調整や業務調整に追われるかもしれません。

病院ほど新人教育が充実していない

クリニックは少人数のスタッフで対応することが多く十分な教育体制がないため、転職後は即戦力を求められる場合が多いようです。特に退職者の代わりに求人を出しているクリニックでは、数週間や1ヶ月ほどの引き継ぎで本格的な業務がスタートするケースもあるでしょう。
看護師歴が浅い方や、じっくり看護知識やスキルを学びたい方は、ある程度病院で経験を積んで自信をつけてから、クリニックへ転職するのが望ましいといえます。病院で身につけた知識や技術は、今後のキャリアに大きなプラスになるはずです。

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看護師の人数が少なく仕事の負担が大きい可能性がある

クリニックは重症者への対応が少ないものの、看護師1人あたりの仕事量が多く、病院より業務負担が大きい場合もあります。看護師が一人だけの職場の場合、点滴や採血、処置などはすべて自分で行う必要があります。患者さまが多い日は一日中動き回るので、体力的にもハードでしょう。また、看護助手や事務員の人数も少ないクリニックだと、その分の業務も増えるかもしれません。

少人数の職場で人間関係が悪化した場合雰囲気が悪くなる

アットホームな職場を求めてクリニックに転職するケースは多いものの、実際に働き始めてから「職員同士の人間関係が難しい…」と感じる看護師の方もいるでしょう。クリニックは大人数が働く病院と異なり、スタッフが少人数なため、人間関係に問題があると息が詰まってしまいがち。規模の大きな病院であれば部署異動する機会もありますが、クリニックは少人数のスタッフが毎日顔を合わせて働くことが基本です。
職場によって看護師の経歴や年齢もさまざまですが、人間関係が悪化すると精神的に追い詰められやすいといえるでしょう。クリニックの人間関係に関しては、転職する前に十分リサーチしておくことをおすすめします。

クリニックに向いている看護師の特徴

ここでは、クリニックで働くのに向いている人の特徴を紹介します。「クリニックに勤務するのが初めて」「クリニックの働き方が自分に合っているか知りたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

固定休で働きたい人

クリニックは休診日や日曜などが休みになるので、決まったパターンで休みたい人に向いています。固定休のメリットは、「勤務日が管理しやすくシフトを考える必要がない」「自身の用事や家族との予定を立てやすい」といった点です。生活のリズムを一定にして働きたい方には、適した職場といえるでしょう。

即戦力として幅広い業務に関わりたい人

クリニックの求人は中途採用が多いため、これまでの看護師経験を活かし、即戦力となって活躍したい方におすすめです。ある程度キャリアのある方は、身につけてきた知識や技術をすぐに発揮できるでしょう。特に、「小児病棟で経験した業務を小児科クリニックで活かしたい」「総合診療科で身につけたスキルを内科クリニックで役立てたい」といった方は、前職での経験を仕事に活かせます。
転職先が前職と同じ診療科目でなくても、看護師としての実績があれば「他職種との連携」「新人の指導や教育」といった面でも幅広く活躍できるはずです。

地域に根づいた医療に携わりたい人

患者さまにとって身近な存在なクリニックは、地域に密着した医療へ携わりたい方におすすめの職場です。病院の場合、場所によっては紹介状が必要であったり、患者さまが「急に大きな病院に行くのは気が引ける」と感じたりするケースも。一方、クリニックは誰でも最初に行きやすい「近所の医療機関」といえます。
「地域の困っている人を助けたい」「患者さま一人ひとりが何でも相談できる場所を作りたい」という意志をお持ちの方にとって、ぴったりの職場といえるでしょう。

看護師がクリニックへ転職する際のポイント

看護師がクリニックへ転職する際は、応募先の診療科目への理解を深め、希望条件が自分の生活にマッチしているか確認することが重要です。納得のいくクリニック転職をしたい方は、以下のポイントを押さえてみてください。

診療科目の特徴や専門性、仕事内容への理解を深める

診療科目によって患者さまの症状や仕事内容などが異なるので、クリニックの特徴や看護師の役割などを十分に把握しておきましょう。クリニックごとに、忙しさや職場の雰囲気、患者さまとの関わり方も異なるはずです。事前に働く環境を理解しておくことで、ミスマッチを起こしにくく、自分に合った転職先が見つかりますよ。

待遇や職場環境が自分のライフスタイルとマッチするか確認する

クリニックによって、勤務条件や職場環境はさまざまです。そのため、勤務時間や年間休日、有給の取りやすさなどは、事前にチェックしておくことをおすすめします。特に給与に関してはクリニックの経営状況が反映される場合もあるので、転職予定のクリニックの状況を把握しておくと安心ですね。
加えて、スタッフの人数や、急な休みが受け入れてもらえる環境かどうかも、確認しておけると良いでしょう。

▼関連記事
病院からクリニックへ転職を考えている看護師のための【転職前に知っておきたいポイント】

まとめ

クリニックと病院の定義上の違いは病床数にあり、20床以下は「クリニック」、20床以上あると「病院」というものです。一般的にクリニックは規模が小さいため看護師数が少なく、診察の補助や処置以外にも受付や清掃を行うケースもあります。
クリニックには「基本的に夜勤がなく仕事とプライベートが両立しやすい」というメリットがある一方、「人数が少ないため急な休みに対応しづらい」というデメリットもあります。

クリニックへの転職を考えている方は、病院との違いや働くメリット・デメリットを認識しておくと良いでしょう。それでも、「実際にクリニックで働くイメージがわかない」「クリニックと病院どちらが合っているのか見極めてから決めたい」とお考えの方も多いはず。
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クリニックと病院の違いに関するよくある質問

ここでは、クリニックと病院の違いに関してよくある質問を、Q&A方式で解決します。

病院よりクリニックの方が看護師の仕事はつらい?

一概にどちらの方が大変とはいえませんが、「クリニックに勤務するデメリット」でもお伝えしたように、クリニックは業務範囲が広く急な休みが取りにくい分、「仕事がつらい…」と感じる人がいるかもしれません。ただし、夜勤がない分病院の方が大変と感じる人も。看護師の考え方やキャリアによっても、感じ方は異なるでしょう。

クリニックの看護師は採血できないと働けない?

職場によっては採血の業務が少ない所もあるので、必ずしも「採血ができないとクリニック勤務は無理」というわけではありません。看護師によっては、「採血が苦手なのでできれば避けたい…」とお悩みの方もいるかもしれません。採血が少なめの職場には、デイサービスや精神科、手術室などがあるので、候補に入れても良いでしょう。新卒でクリニックの業務が不安な方は、「新卒の看護師はクリニックで働けるのか?クリニックと病院の違いを解説」をご一読ください。

クリニックならではのやりがいとは?

クリニックに向いている看護師の特徴」でもお伝えしたように、クリニックには、これまでの経験を活かして即戦力として活躍できたり、地域医療に携われたりといった特徴があります。地域の身近な医療機関として、一人ひとりと向き合ったきめ細やかな看護が実践できることは、看護師にとってやりがいを感じられるポイントです。病院よりスタッフ数が少ない分、ある程度キャリアのある方は、主体的に業務に携われるのも魅力でしょう。

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