輸血の基本から副作用の対応まで!病棟で必要な輸血の看護

大量出血を伴う外傷患者さんや血液疾患の患者さんにとって必要となってくる輸血。

病棟によっては、輸血の機会が少なく慣れていない看護師の方もいるでしょう。
しかし、血液製剤や患者さんの取り違えは、重大な医療事故を引き起こす可能性があります。

医療事故を防止するために、血液製剤の取り扱いや確認作業、副作用の観察など、適切な知識を身につけ輸血の看護を行いましょう。

この記事を書いた人
平野 芹奈
看護師
看護師資格、日本救急医学会認定ICLS取得。 急性期病院にて、脳神経外科、脳神経内科、血液内科の病棟看護師として勤務。その後、トラベルナースや派遣看護師、正社員などの働き方を選択し、脳神経外科専門病院・CRC、保育園看護師、コールセンター管理職を経験してきました。 現在は、Webライター、美容医療系のSNS運用代行を行っています。
※1※2 調査方法:インターネット調査/調査期間:2024年2月7日~2月13日/調査概要:「看護師転職サイト」を対象としたユーザー満足度調査/調査対象:男女、全国、看護師・准看護師資格保有者かつ対象看護師転職サイト利用経験者、20~29歳 107s(※1)、20~34歳 175s(※2)/調査実施:株式会社エクスクリエ/比較対象サービス:「看護師転職サイト」主要10サービス(専用サイトのあるサービスのみ・求人結果の表示ページは除く)

輸血の目的

輸血とは、血液を補充することで不足した血液の成分や機能を補う治療法です。
血液成分の欠乏や機能不全によって問題となる症状を認めたときに、その成分を補充することで症状の軽減を図ることを目的としています。

副作用などリスクがあるため、そのリスクを上回る効果があるか、輸血の適応となるトリガー値を満たしているかを確認し、医師が必要性を判断します。

手術や外傷などによる出血、疾患による血液成分の欠乏や機能不全の患者さんが適応となります。

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基礎、血液の成分について

血液は、成分や血液型により種類がわかれています。
輸血は、血液製剤の取り違えや免疫反応によって副作用や合併症を発症し、死に至ることもある治療法です。
血液の成分や役割、血液型を理解しておくことは、輸血を取り扱う上で必要となります。

血漿と血球

血液は、血漿と血球に分かれています。

血漿

血漿は、全血液量の約55%を占めています。そのうち約90%が水分、約10%が血液凝固因子、グロブリン、アルブミンなどのタンパク質や無機塩類、糖質、脂質などの固形成分です。血漿は血圧の保持や栄養成分を体内の各組織へ運び、代謝老廃物を腎臓から排出する役割を担っています。

血球

血球は、全血液量の約45%を占め、「赤血球」「白血球」「血小板」からなる細胞成分です。そのうち約96%が赤血球であり、残り約3%が白血球、約1%が血小板です。赤血球は体の中の酸素運搬作用、白血球は病原菌や異物から体を守る防御作用、血小板は血管の傷口をふさぐ止血作用を担っています。

血液型

輸血をするにあたり、血液型による種類を確認する必要性があります。
患者さんの血液型とは異なる血液型の血液製剤を使用することで起きるABO不適合輸血は、重篤化に伴うショックやDIC(播種性血管内凝固)、腎不全を発症する場合もあるため、血液製剤の取り間違えには注意が必要です。
血液型によって輸血ラベルの色が異なるため、把握しておくことをお勧めします。

▼血液型別の輸血ラベルの色

  • A型:黄色
  • B型:白色
  • O型:青緑色
  • AB型:ピンク色

輸血の分類(同種血輸血と自己血輸血) 

輸血には、「同種血輸血」と「自己血輸血」があります。同種血輸血は献血者の血液を使用した輸血で、自己血輸血は患者さん本人の血液を使用した輸血です。

現在は、安全性が確保されつつある同種血輸血ですが、ウイルス感染や同種免疫による副作用のリスクは残存しています。副作用や合併症の出現があることを認識しておきましょう。

一方で自己血輸血は、患者さん本人の血液を使用するため免疫反応やウイルス感染がありません。安全性が高く、輸血を必要とする外科的手術のときには積極的に行われています。

血液製剤の種類と管理方法

血液製剤は、血液と血液の有効成分を用いた医薬品であり、以下に分類されます。

  • 輸血用血液製剤
    ・全血製剤:人の血液の全部
    ・成分製剤:人の血液を遠心分離して得られる成分ごとの血液製剤(赤血球製剤・血小板製剤・血漿製剤)
  • 血漿分画製剤
    血液中の血漿成分から、治療に必要な血漿蛋白を分離・精製した製剤(アルブミン製剤・免疫グロブリン製剤・血液凝固因子製剤)

現在は目的とする成分だけを輸血する「成分製剤」や「血漿分画製剤」が主流となっています。

主な成分製剤について、次の章で目的と適応、保存方法を解説します。

赤血球製剤(RBC-LR)

赤血球製剤(RBC-LR)は、照射赤血球液-LRと呼ばれ、血液から血漿、白血球、血小板を取り除いた製剤です。

目的循環血液量の維持や末梢循環血液系へ不足している酸素の供給
適応急性出血や慢性的な貧血、外科的手術の輸血など
保存温度2~6℃
有効期間採血後21日間
使用時の注意点赤血球輸血セットを使用します。通常は加温せずに使用しますが、急速大量輸血などでは体温低下を避けるために加温して使用してください。

血小板製剤(PC-LR)

血小板製剤(PC-LR)は、照射濃厚血小板-LRと呼ばれ、血液から血小板を採取して作られる製剤です。

目的止血や出血予防
適応血小板の減少や血小板産生の低下、血小板の機能に異常がある場合
保存温度20~24℃(振とう保存)
有効期間採血後4日間
注意点血小板輸血セットを使用します。静置保存は、血小板代謝によって生じる乳酸によりpHが低下するため、血小板機能に影響が出ます。pHの低下を抑え血小板の機能を良好に保つために専用振とう器で振とう保存しましょう。

血漿製剤(FFP-LR)

血漿製剤(FFP-LR)は、新鮮凍結血漿-LRと呼ばれ、凝固因子が含まれる血漿を凍結した製剤です。

目的出血傾向を是正するために使用
適応凝固因子異常を伴う疾患、凝固因子の欠乏による出血傾向
保存温度-20℃
有効期間採血後1年間
注意点赤血球輸血セットを使用します。ビニールに入れて、恒温槽で30~37℃の湯温にて融解します。融解後は、血液凝固因子の活性化が低下するため、すぐの使用が必要です。
血液製剤の種類と目的

輸血の実施手順

輸血を実施する際のポイントは、輸血製剤と患者さんの照合と副作用の観察です。
3回の照合作業を行い、人為的な医療ミスを防ぎます。副作用の観察は、ショック状態に陥る可能性もあるため、早期に発見し対応することが重要です。

クロスマッチとは?

クロスマッチ(交差適合試験)とは、輸血前に患者さんと輸血用血液製剤の適合性を確認する検査です。

クロスマッチの方法
通常と同様の採血を行います。採血した血液と輸血用血液が抗原抗体反応を起こさないか1パックごとに確認し、不適合輸血を防ぎます。
クロスマッチ(交差適合試験)の方法の解説

ダブルチェックの必要性とやり方

人為的ミスを防ぐためには、徹底したダブルチェックが重要です。
ダブルチェックのポイントは、以下の3つです。

  • 医療従事者2人で確認をする
  • 血液製剤は、患者さんごとに準備する
  • 投与までに3回の照合確認を行う
       1回目:輸血部より輸血製剤を受け取るとき
       2回目:輸血を準備するとき
       3回目:輸血を実施するとき

指差し、声出し確認をすることで、誤投与の防止になります。

輸血実施時のダブルチェックのやり方

必要物品

輸血セットを接続する際の物品

  • 交差試験適合書
  • 輸血指示書(添付伝票)
  • 輸血同意書 
  • 血液製剤
  • 輸血セット
  • 三方活栓
  • 手袋
  • 膿盆
  • アルコール綿

輸血実施と看護のポイント

輸血の手順と看護のポイントを解説していきます。

  1. 輸血を開始する旨を患者さんへ説明
    輸血前投薬の有無を指示書などで確認しましょう。
  1. ダブルチェックを実施
    医師と看護師、もしくは看護師2名にてダブルチェックを実施します。
    患者さんへ、氏名と血液型を口頭で確認しましょう。
    ※口頭での確認が難しい患者さんは、リストバンドで照合を行う場合もあります。病院のルールに従いダブルチェックを行いましょう。
  1. バイタルサインを測定
    副作用の早期発見のため、輸血直前のバイタルサインと全身状態を確認します。
  1. ラインを確保
    18~20Gにてラインを確保し、血液の溶血を防止します。
    シリンジにて逆血を確認し、刺入部の腫脹や発赤がないことを確認しましょう。
    三方活栓や延長チューブを使用することで、副作用出現時に迅速に対応することができます。
  1. 輸血セットを接続
    輸血は、ほかの薬剤により凝固や溶血、タンパク変性を起こす可能性があるため、単独ラインでの投与が基本です。ほかの輸液の側管から輸血をする場合は、輸液を一旦中断し、生理食塩水にてフラッシュしてから血液バッグを接続します。
  1. 滴下を開始
    輸血開始5分間は、患者さんの側を離れずに副作用症状と全身状態を観察します。
    輸血開始15分後に、再度、副作用症状と全身状態を観察しましょう。
    患者さんの側を離れるときは、ナースコールを患者さんの手元に置きましょう
  1. 抜針と止血
    血液製剤は貴重です。ルートに血液が残っている際は、最後まで流しましょう。
    輸血が終了したら、再度バイタルサインを測定し、全身状態を確認します。
    留置針抜去後は、5分程度圧迫し止血ができたことを確認しましょう。

滴下速度

輸血開始時は、1ml/分の滴下速度でゆっくりと開始します。輸血開始直後は、重篤な副作用が起こりやすいため注意が必要です。開始後15分間で副作用症状の出現もなく、状態が落ち着いている際は、医師の指示を確認し5ml/分に滴下速度を上げます。

輸血の副作用と看護

輸血の副作用には、投与直後から数時間で起こる急性の副作用と数日から数週間経過してから起こる遅発性のものがあります。そのため、輸血開始直後から輸血終了後まで継続的に観察を行いましょう。

▼輸血の副作用

輸血開始~6時間輸血関連急性肺障害(TRALI)、輸血関連循環過負荷(TACO)
輸血開始~1日細菌感染症、急性溶血性輸血副作用、アレルギー反応
24時間以降遅発性溶血性輸血副作用(Rh不適合輸血など)
7日以降移植片対宿主病(GVHD)

▼輸血に伴う副作用
重篤な副作用(血圧低下・呼吸困難・意識障害・赤褐色尿)
発熱、顔面紅潮、悪寒・戦慄、熱感・ほてり、掻痒感
発疹・蕁麻疹、嘔吐・悪心、胸痛、腹痛、腰背部痛、頭痛・頭重感
血管痛、刺入部の腫脹・発赤、動悸・頻脈

副作用出現時の症状がある場合は、投与を中断し医師へ報告します。

血圧低下や呼吸困難(チアノーゼや喘鳴)、意識障害などは、重篤な副作用の可能性があるために注意しましょう。
なお輸血を中断する際には、ラインに残った血液が体内に入ることを避けるために、ほかの輸血を開始する前にライン内の血液を吸引します。

▼関連記事
輸血副作用とは?役割・目的・取り扱い時の注意点まとめ
輸血副作用「GVHD」について

輸血をする際の看護師の役割と観察項目

輸血実施時の看護師の役割は以下の2点です。
 ・医師の指示通りの正確な輸血の実施をすること
 ・副作用の早期発見と迅速な対応を行うこと

そのために必要な観察項目や援助を説明していきます。

▼観察項目

  • バイタルサイン
  • 呼吸状態(呼吸困難感・チアノーゼ・喘鳴・息切れ)
  • 嘔気・嘔吐
  • 動悸・頻脈
  • 悪寒・戦慄
  • 胸部痛
  • 血尿
  • 発疹・蕁麻疹
  • 血管痛
  • 刺入部の腫脹・発赤
  • 検査数値(赤血球や白血球、血小板など、輸血に関わる採血結果)


▼看護援助

  1. 輸血前に排泄の有無を確認し、輸血中の排泄を避け安全に輸血を実施するためトイレへ誘導する
  2. 輸血中はナースコールを手元に置く
  3. 副作用の可能性があることを説明する
  4. 副作用症状出現時は、看護師へ伝えるよう説明する
輸血の副作用について説明する看護師

まとめ

輸血は、血液を補充するための治療の1つです。

看護師は、血液製剤の種類や必要性を理解したうえで、正確に実施していく必要があります。輸血はリスクを伴うことを認識し、副作用出現時に迅速な対応ができるようにしましょう

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