パーキンソン病の基礎と具体的な看護!自宅療養に向けての支援

パーキンソン病の患者さんは、運動機能障害や精神症状がゆっくり進行していきます。看護師は、患者さんができるだけ長く社会生活を継続できるように支援していくことが重要です。

この記事では、パーキンソン病の基礎知識から退院後を見据えた看護を解説していきます。臨床で役立つ具体的なケアや看護計画も紹介していますので、パーキンソン病の患者さんと関わる方はぜひ参考にしてください。

この記事を書いた人
平野 芹奈
看護師
看護師資格、日本救急医学会認定ICLS取得。 急性期病院にて、脳神経外科、脳神経内科、血液内科の病棟看護師として勤務。その後、トラベルナースや派遣看護師、正社員などの働き方を選択し、脳神経外科専門病院・CRC、保育園看護師、コールセンター管理職を経験してきました。 現在は、Webライター、美容医療系のSNS運用代行を行っています。
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パーキンソン病は、どんな病気?

パーキンソン病の患者さんを看護するためには、パーキンソン病について正しく理解することが大切です。この章ではパーキンソン病の病態生理や治療法など基礎知識を解説します。

パーキンソン病の病態生理

パーキンソン病は、ドパミンが減少することで運動機能障害や精神症状がゆっくりと進行していく神経変性疾患です。神経変性疾患とは、脳や脊髄における特定の神経細胞が徐々に障害を受け、脱落してしまう疾患群のことをいいます。難治性疾患に指定されていることが多く、パーキンソン病も根治的な治療がない疾患の1つです。

パーキンソン病の病態生理のイラスト

パーキンソン病の原因は明らかではありませんが、中脳の黒質から産生されるドパミンの減少が関与しています。ドパミンは、情緒や運動機能の調整を行っている神経細胞であり、減少することで運動症状や自律神経症状、精神症状が出現することが特徴的です。パーキンソン病のうち、40歳以下で発症するものを若年性パーキンソン病といいます。

パーキンソン病の特徴と予後

パーキンソン病は、日本において高齢化に伴う患者数の増加が懸念されている疾患です。パーキンソン病の特徴を以下に示します。

  • 女性と比べ男性のほうが約1.5倍ほど多い
  • 発症年齢は50~60歳代での発症が多いが、加齢とともに増加
  • 人口10万人あたり100~150人程度の有病率

パーキンソン病は、発症から約10年間は介助なしの生活ができると言われています。生命予後は、寝たきりの状態になってからの全身状態や肺炎・感染症などの合併症によって決まってきます。

パーキンソン病の治療方法

パーキンソン病の重要な治療方針は、持続的にドパミン刺激を与え続けることです。

薬物療法

治療のメインとなるのが薬物療法です。どの薬にもメリットとデメリットがあり、特徴とアプローチの方法が異なります。臨床において使用頻度の高い3種類を解説します。

  • レボドパ有製剤
    ドパミンが合成される前の物質です。脳内でドパミンに変化し症状改善へと繋がります。パーキンソン病の中心となっている薬剤ですが、薬剤の調整や誤薬により一定量以上の量を使用することや長期服用により合併症(悪心・嘔吐、食欲低下、頭痛、ジスキネジアなど)のリスクが増大します。
  • ドパミンアゴニスト
    ドパミン受容体と結合することで効果を発揮し、若年性パーキンソン病における第一選択薬です。L-dopaと比べ効果は緩やかですが、ウェアリング・オフ現象などの合併症が出現しにくいという特徴があります。
  • モノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬
    MAO-Bはドパミンを分解する酵素です。MAO-B阻害薬は、この酵素の働きを抑制しドパミンの働きを活かすことができます。

支援療法

薬物療法のみでは、症状のコントロールが難しい患者さんもいます。以前は選択できるのが定位脳手術のみでしたが、近年ではレボドパ・カルビドパ水和物配合剤経腸用液療法も認可されました。

  • 定位脳手術
    脳に電極を挿入し電気刺激を与え、神経の働きを抑制します。視床下核や視床などを刺激し、症状の重い部分を緩和する目的で行われる外科的治療です。パーキンソン症状で出現する振戦や筋固縮に対して効果を示します。
  • レボドパ・カルビドパ水和物配合剤経腸用液療法
    胃瘻チューブから空腸に直接レボドパを投与する治療法です。持続的に投与できるため、ウェアリング・オフ現象が起こりにくいと言われています。
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パーキンソン病は、どう診断されるの?

パーキンソン病は、「4つの診断基準」と「Hoehn-Yahr重症度分類Ⅲ度以上かつ生活機能障害度Ⅱ度以上」を満たした上で診断されます。

パーキンソン病の4つの診断基準

難病情報センターによると、パーキンソン病の4つの診断基準は以下のとおりです。

  1. パーキンソニズムがある
  2. 脳のCTとMRIに特異的な異常がない
  3. パーキンソニズムを起こす薬物・毒物への曝露がない
  4. 抗パーキンソン病薬にてパーキンソニズムに改善がみられる

なお、1,2,3は満たすが、薬物反応を未検討の症例は、パーキンソン病疑い症例(Probablre)となります。

パーキンソン病の「Hoehn-Yahr重症度分類」

臨床でよく使用されるHoehn-Yahr重症度分類は、症状を重症度で示したものです。パーキンソン病は、身体の片側から症状が出現し、病状の進行とともに両側に症状が広がります。Hoehn-Yahr重症度分類は、症状の進行度に合わせた指標です。

パーキンソン病の症状の進行度に合わせた指標であるホールヤーン重症度分類とは

Ⅰ度:身体の片側のみパーキンソニズムが出現
(片側の手足に振戦や筋拘縮が出現。日常生活は問題なく可能)

Ⅱ度:身体の両側にパーキンソニズムが出現
(両手や両足に振戦や拘縮が出現。日常生活に少しの不便が出現)

Ⅲ度:身体の両側にパーキンソニズムが出現+姿勢反射障害が出現
(小刻み歩行やすくみ足が出現。方向転換の際に転びやすくなる)

Ⅳ度:重度のパーキンソニズムが出現、歩行は可能だが介助が必要
(立ち上がる動作や歩行が難しくなる。日常生活に介助が必要となってくる)

Ⅴ度:ベッドまたは車椅子生活、介助が必要
(車いすが必要となり、ベッドで過ごす時間が長くなる)

パーキンソン病の「生活機能障害度」

症状や生活レベルを評価する指標です。

Ⅰ度:日常生活や通院にほぼ介助を要しない
Ⅱ度:日常生活や通院に一部の介助を要する
Ⅲ度:日常生活に介助を要し、一人での起立や歩行が困難

パーキンソン病で出現する症状は?

パーキンソン病は、「無動・寡動」「筋固縮」「安静時振戦」「姿勢反射障害」の4大症状を示すことが特徴です。パーキンソン病をはじめとする要因によって生じる症状をパーキンソンニズムと呼び、薬剤性や神経性変性疾患によっても同様の症状が見られることがあります。その他に、歩行障害や自律神経障害、精神症状などの症状も出現します。

パーキンソン病の4大症状について
無動・寡動動作が緩慢になり、小さくなる。すくみ足が特徴。
筋固縮筋肉がこわばり動かしにくくなる。仮面様顔貌など無表情になる。
安静時振戦動いてないときにも手足に振戦が出現。1秒間に4~6回ほど。
姿勢反射障害身体のバランスを崩しやすくなる。方向転換が難しくなる。

パーキンソン病の合併症

パーキンソン病の薬物療法での治療は、合併症も出現します。

  • ウェアリング・オフ現象
    内服薬で補充されたドパミンは、短時間で代謝され血中からなくなります。ウェアリング・オフ現象は、薬効が切れて、次の薬を飲む間にパーキンソン症状が出現してくる現象です。服用回数の調整やほかの薬剤との併用が必要となってきます。
  • ジスキネジア
    自身の意思とは無関係に身体が動いてしまう、不随意運動の現象です。ドパミン受容体の調整がうまくできず、薬の濃度が高くなることで症状が出現します。薬剤の減量を検討します。
  • 悪性症候群
    急激な薬剤の減量や中止により、発汗や発熱、意識障害などのさまざまな症状が出現することです。早期の対応で回復できますが、肺炎や腎不全、心不全など死に直結することもあります。内服を開始したあとは、自己中断のないよう支援します。

パーキンソン病の看護のポイントは?

パーキンソンは、完治する方法が解明されておらず病気を抱えた中での生活が続きます。患者さんの社会背景や生活背景を踏まえたうえで、それぞれの患者さんに合わせた看護が必要です。自宅療養を見据えた看護のポイントと看護計画について紹介します。

パーキンソン病の症状に合わせた看護計画について

以下の項目に絞って看護のポイントを解説します。

情報収集・観察・発症年齢や症状の進行状況、社会背景、家族背景の情報を収集
・運動障害や自律神経障害、精神症状など、症状を観察
アセスメント・重症度は、Hoehn-Yahr重症度分類・生活機能障害度を使用
・症状の進行を予測するのではなく、現状をアセスメントする
状態に合わせた生活の工夫をする
薬物療法・少量からスタートし、量を調節
・副作用や合併症も考慮
患者さんが飲み続けられるように工夫をする
日常生活・病状の進行に合わせ、日常生活の介助を実施
・社会生活に消極的になる患者さんに対しての精神的な支援
・生活リズムや生活習慣を見直し
・運動機能障害に伴う、外傷や転倒リスクの危険性
・家庭内での工夫や状態に合わせたリハビリテーション

パーキンソン病の症状に合わせた看護計画

パーキンソン病の患者さんに特徴的な看護問題・看護目標・看護計画を紹介します。

身体可動性障害に伴う転倒・転落リスク

看護目標:リハビリテーションを行うことでADLを維持し転倒・転落を予防できる

OP(観察)

  • 歩行状状態(歩行時のふらつき、坐位・立位の姿勢保持)
  • 身体機能状況(握力・MMT)
  • Hoehn-Yahr重症度分類・生活機能障害度
  • 日常生活動作の状況(食事・排泄・睡眠)
  • 症状の日内変動
  • リハビリに対する理解
  • 服薬状況

TP(援助)

  • ベッド周辺や生活空間の環境調整
  • 症状や日内変動に合わせたリハビリテーションの実施
  • 不安や疑問を表出できる場を提供
  • 必要に応じて自助具を活用
  • 服薬や治療のサポート

EP(教育)

  • 疾患やリハビリテーションの必要性を説明
  • 広い歩幅で歩くことや胸を張ることで転倒の予防に繋がることを説明
  • 不安や疑問、副作用が出現した際は、看護師へ話すよう説明

病識への知識が乏しいことによるセルフケア不足

看護目標:病気について理解し、治療や日常生活における自己管理ができる

OP(観察)

  • 疾患や治療に関する理解、疾患に対する受け止め方
  • ADLの自立度(食事・排泄・睡眠などの日常生活動作)
  • 症状の程度と進行度
  • 内服状況
  • 精神症状
  • 家族の疾患に対する理解度

TP(援助)

  • 1日を規則的に過ごせるよう活動と睡眠の生活リズムを作る
  • 内服薬の種類が多くなるため1包化する
  • 日常生活動作の状況に合わせて自助具を使用する
  • ベッド周囲の環境を調整(ポータブルトイレの設置やナースコールの位置など)
  • デイルームや散歩など日中の活動を増やす
  • 睡眠を確保できるよう環境を調整や睡眠薬を検討する
  • 不安や心配に感じていることを話せる場を提供する

EP(教育)

  • 日常生活で難しいと感じることは看護師へ話すように説明
  • 身体活動の状況に応じて自助具を活用することで不便が減ることを説明
  • 疾患・身体状況・精神状況を患者さん本人と家族へ説明する

身体症状や精神症状の進行に伴う意欲減退

看護目標:身体的変化を受け止め、肯定的な言動の表現や行動ができる

OP(観察)

  • 不安や絶望感の有無
  • 疾患の受け止め方
  • 治療の理解や期待度
  • 表情や視線、姿勢
  • 疾患や生活、家庭や仕事に対する発言
  • 家族など精神的サポートの有無

TP(援助)

  • 現在出来ていることや普段やっていることを肯定する
  • 精神状態が不安定なときは、患者さんと関わる時間を増やす
  • 不安や絶望感を訴えているときには傾聴し、否定しない関わりをする
  • 患者さん本人、家族ともに疾患に対して話せる場を作る
  • 抑うつに働きかける認知行動療法に対する情報を提供する

EP(教育)

  • 不安や絶望感を表出することで、自身の感情を整理できることを説明
  • 疾患や治療、ライフスタイルに対する正しい知識を説明する

パーキンソン病の患者さんの在宅における看護

パーキンソン病は現在、完治する治療法はないため、自宅での生活を想定して看護する必要があります。家の中では、動線を確認し動線上の整理整頓を行い転倒予防に努めましょう。
また患者さんが疾患を受け止め向き合えるよう、精神面の支援も必要です。たとえば趣味を見つけることで抑うつ状態を減らすきっかけになります。

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