
看護師の中には、看取り時にストレスを感じ、気持ちをなかなか切り替えられずにいるという人もいるでしょう。本記事では、そのような看護師に向けて、ストレスを学びに変える方法や患者さんとそのご家族にできることなどを詳しく解説します。「無力感に苛まれ、感情のコントロールに苦慮している」「看取りに対しネガティブな感情や苦手意識を持ってしまう」という人はぜひ今後の参考にしてみてください。
看取り時に感じるストレスは「患者さんの気持ちを推し量れているか」「治療内容は患者さんの希望に沿っているか」など多岐にわたります。以下にて、具体的な場面を3つ紹介しますので、自身の状況と照らし合わせてみてください。
看取り期における「声掛け」は看護師がストレスを抱える大きな要因の一つです。終末期を迎えた患者さんへ何と声を掛けるのが相応しいのか苦慮しつつも、なかなか答えが見つからず、看取りに対して苦手意識を持つ人が少なくないといえます。
ストレスを抱える状況として「患者さんが本当の病状を知りたがっている」といった場面も挙げられます。患者さんの精神状態を考慮し、医師やご家族が本人に病状を告げない場合、患者さんと周囲との間で板挟みとなり、悩みを抱えてしまうこともあるでしょう。
「ご家族の考えが変わったとき」も、看護師がストレスを抱えやすい場面の一つです。状況によっては、一度看取りに切り替えたものの、ご家族の考えが代わり解除されるということも。その後の受診における対応に苦労を感じる看護師もいるといえます。
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ここでは、病棟看護師ではなく、訪問看護師に焦点を当てて解説していきます。訪問看護師の大きな特徴は、一人で現場に向かい、処置やケアを行うことです。そのため、ご家族からの視線を一手に引き受けることとなり、自身の言動にプレッシャーを感じる人も少なくありません。
実際に「在宅ホスピスケアにおける訪問看護師のストレスと対処(p20)」では、下記のような見解が示されており、訪問看護師が看取り時に抱えるストレスは、病棟看護師と異なる特殊性があることが伺えます。特に療養者さんが訪問後に亡くなった場合は、自身の判断に不安や後悔を感じたり、知識や技術不足から自信の喪失に繋がったりといった、自責の念に苛まれる訪問看護師も多いといえるでしょう。
「一般にターミナルケア、ホスピスケアに携わる看護師は、患者の死に向き合いながら、苦痛の緩和・家族支援などに特有の困難感・負担感を自覚し、ストレスフルな状態にあるとされている。看護師のメンタルヘルスを良好に保つことは看護ケアの質を高めることにつながることであり、在宅ホスピスがさらに推進され、効果的なケアが実践されるためには、担い手である訪問看護師のストレス対処能力の向上が不可欠ではないかと考えた。」
引用:森本喜代美「在宅ホスピスケアにおける訪問看護師のストレスと対処」(2014年03月31日)
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死別体験をしたことがない看護師は、看取り時に大きなストレスを感じる傾向にあります。レバウェル看護公式 Instagramのストーリーズで実施した「看護師つらい……と感じる瞬間ってどんな時?」とのアンケートでは、以下に記載のとおり、死に対峙する瞬間についての声が複数寄せられました。中には「今でも忘れない」とのコメントもあり、患者さんの死を通して感じる戸惑いやショックは看護師に大きな苦痛をもたらすことが見て取れます。
看護師が看取り時に抱く感情は、具体的にどのようなものがあるのでしょう。「終末期における看護師の感情コントロール(p118)」の調査結果によると、看取りの経験が豊富な複数の病棟スタッフは、終末期ケアや看取りで印象に残っている場面、また、その時生じた感情について、以下のように回答しています。
【テーマ:看取りで感じた内容】
上記の内容から、気持ちのやり場がなく、辛いと感じている様子や「救いたいのに救えない」という自身の無力感に苛まれている様子が伺えます。
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ここでは、看取り時に経験するストレスを学びに変える方法を紹介します。看取りを肯定的に受け止められるようになるには、感情に線を引き、今すべきことに意識を向けることも大切です。
ネガティブな感情を減らし、気持ちを切り替えられるようになるには、死に対して尊厳を持ち、死を受け入れることが重要といえます。周囲と話し合いながら、また患者さんやそのご家族と考えを共有しながら、理想的な最期の形を模索しましょう。
「治療やケアの経過を振り返り、疑問を解消・分析する」「スタッフ間で心情を吐露する」ことも大切な方法です。看取り時に抱いた不安や葛藤を互いに共有することで、経験から学んだことをどう活かすかという、学び続ける姿勢を養うきっかけにもなります。
「終末期における看護師の感情コントロール(p118)」の調査結果では、カンファレンスの意義として、以下の回答が示されています。
【テーマ:カンファレンスの意義】
ストレスを抱える看護師にとって、分かってくれる人がいるというのは、大変心強いものです。「周囲も自分と同じように悩みを抱えている」という事実を知るだけでも、気持ちを整理しやすくなるでしょう。看取り時に抱いた感情をコントロールするためには、カンファレンスを通して感情を表現したり、共有したりすることが大切だといえます。
自身のセルフケアにおいて、リフレッシュする時間を設けることも大変重要な手段です。買い物や食事、趣味など、自分に合った方法で体と心を癒すための時間を過ごしましょう。気分転換を図るには、職場と自宅で気持ちを切り替えることが大切です。
看護師の中には、不安を抱えている患者さんにどう接したら良いのか分からないという状況が悩みの種になっている人もいるかもしれません。しかし、患者さんにとっては看護師の思いやりや、気遣い自体が救いとなることも。下記を参考に寄り添う看護を心がけましょう。
患者さんとそのご家族との間に入り、取り持つ役目を果たしましょう。患者さんと医師や家族の考えに不一致はないか、治療法について周囲に言いづらい本心がないかなど、患者さんの気持ちを慮ることが大切です。
患者さんへの適切な声掛けも看護師の大切な役割です。状況によっては前向きな声掛けにためらう場面もあるかもしれません。その際は、患者さんが話した内容に質問・共感したり、不安や恐怖心を軽減したりすることに努めましょう。患者さんの発言に耳を傾けたり、手を握ったりするだけでも孤独感が和らぐ可能性があります。
患者さんだけではなく、不安を抱えているご家族のサポートも看護師の大切な役割の一つです。病状の宣告時や死の直前期は不安のみならず、動揺、自責、無力感などさまざまな感情が押し寄せます。そのような不安定な精神状態を考慮し、以下の行動に努めましょう。
ご家族が症状の宣告を受けた後は、さまざまな疑問が生じる場合があります。そのため、治療方針の確認や、病状の報告を適宜行い、可能な限り受け入れやすいような説明を心がけることが大切です。また、ご家族が心の準備をしやすいように、今後生じる可能性のある容体の変化を事前に伝えておくことも重要だといえます。
ご家族と病院との考えのズレを防ぐためには、本音を引き出しやすい環境を作ることも大切です。具体的には、散歩をしたり、ラウンジで飲み物を飲んだりというような、病室から離れた場所でリラックスできる環境を整えると良いといえます。
ご家族が実践できるサポート方法を伝えることも、看護師の業務の一つです。困惑するご家族のストレスや無力感を軽減するためにも、体のさすり方や呼びかけの方法といった手段を伝えると良いでしょう。
生死に関わるストレスから距離を置きたい人は、容体が落ち着いている患者さんが多い職場を選ぶのも選択肢の一つです。急変や看取りに対応する頻度が少ない環境に身を置くことで、精神的な負担が軽減されやすいといえます。
「看取りの機会を減らしたい」「病棟に勤めたい」という2つの願望を持つ新卒看護師の場合は、糖尿病内科(内分泌内科)病棟や整形外科病棟へ部署異動するのも一つの手です。双方とも急変が少ない傾向にあるため、落ち着いて仕事ができるといえます。
自身の適性と現在の職場環境がマッチしていないと感じる場合は、転職を視野に入れると良いでしょう。看護師資格を活かせる職場は、実に幅広いため、以下の例を参考に検討してみてください。なお、自分の判断に自信を持てないという人は、転職エージェントといった第三者の意見を取り入れることをおすすめします。
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ここでは、看取り時にストレスを抱える看護師によくある質問を紹介します。
看護師としての経験年数が長くなれば、そのような状況を経験する人もいるでしょう。実際に、レバウェル看護公式 Instagramのストーリーズで実施した「看護師つらい……と感じる瞬間ってどんな時?」とのアンケートでは、「ステルベンに連続で当たった時」というコメントが寄せられています。
死別体験は看護師としての経験を積んでもなかなか慣れるものではないでしょう。ただし「感情に線を引く」という視点で考えると、理想的な最期の形を模索したり、周囲と悩みを共有したりといった方法を通じて、徐々に死を受け入れられるようになるといえます。
周囲に相談し気持ちを共有したり、改善できるポイントはないか振り返ると良いでしょう。また、疾患や病状、急変対応への理解を深めるなど積極的に学ぶ姿勢を心がけることも大切です。詳しくは、「看護師が「急変は自分のせい」と落ち込んでしまう…乗り越える方法を解説」をご覧ください。
「患者さんの死と向き合うのが怖い…悩みながら看護師に復職するまでの道のり」では、患者さんの死と対峙し、救えなかったことに心を痛め退職したKさんの転職事例を紹介しています。訪問看護ステーションで再び看護師として働くまでのKさんの軌跡をぜひご覧ください。
看護師の中には看取り時に抱く喪失感に大きなストレスを感じている方もいるでしょう。しかし、看護師は決して無力な存在ではありません。どう接したら良いのか分からないと悩み、患者さんに向き合っている瞬間も、看護師としての立派な経験であり役割です。不安を抱えている患者さんやそのご家族の気持ちに寄り添いながら、看取りで経験するストレスを学びに変えていきましょう。
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