
「ターミナル期のケアについて知りたい」という看護師さんもいるのではないでしょうか。
ターミナルケアとは、終末期をむかえた方の心身の苦痛を取り除き、最期までその人らしく生きられるように支援することです。
この記事では、ターミナルケアの概要や携わる看護師の役割について解説します。終末期の患者さまによくみられる心身の苦痛症状とケアのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ターミナルケアとは、終末期を迎えた方が可能な限り穏やかに自分らしく生活できるよう、医療・看護・介護といったケアを提供することです。患者さまのQOLを最期まで保つために、終末期医療では、特に身体的な苦痛の緩和・コントロールを行います。ここでは、ターミナルケアとはどういうものなのか詳しく解説していきますので、確認してみてください。
ターミナル期とは一般的に、疾病や障害、加齢などによって、治療の効果がこれ以上期待できず、余命が残り少ないと判断された時期のことを指し、「終末期」ともいわれます。厚生労働省の「終末期医療に関するガイドライン~よりよい終末期を迎えるために~(p.2)」で示されているターミナル期(終末期)の定義は、以下のとおりです。
1.複数の医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないと判断すること
2.患者が意識や判断力を失った場合を除き、患者・家族・医師・看護師等の関係者が納得すること
3.患者・家族・医師・看護師等の関係者が死を予測し対応を考えること
終末期の定義は、詳細が明確に規定されている訳ではなく、患者さま本人やご家族、医療関係者が相談し、状況に応じて「人生の最終段階をむかえる時期だ」と判断したときから始まるものだといえます。
ターミナル期の患者さまは、治療の効果がこれ以上望めず、死が間近に迫っているという状態です。余命が少ないことを、なかなか受け入れられない人も少なくありません。
「キューブラー・ロスの研究」を下地として広く知られる「ターミナル期にある患者さまが死を受容するまでの心理段階」は、以下のような5つのプロセスがあるとされています。
| プロセス | 心理状態の例 |
| 否認 | 「そんなはずはない」と現実を受け入れられない |
| 怒り | 「どうして自分だけがこんな目に遭うのか」と現実に対して怒りを抱く |
| 取引 | 「これからは真面目に働くので生かしてほしい」など、延命についての取引を願う |
| 抑うつ | 逃れられない現実に直面して気力を失いながらも受け入れつつある |
| 受容 | 死という現実を受け入れ、穏やかな気持ちになる |
上記の心理プロセスは、行きつ戻りつしながら受容まで進む場合もあれば、一気に受容まで進む場合もあり、個人差が大きいようです。ターミナルケアでは、揺れ動く気持ちに寄り添いながら、患者さまが死を受容し、人生の最終段階をその人らしく生きられるよう支援します。
一般病院の慢性期病棟や療養型病院、介護医療院、特別養護老人ホームなどが、主にターミナルケアが提供される場になります。療養に医療的ケアが必要な状態なのかどうかで、ターミナル期を過ごす場所の選択肢は異なるでしょう。
また、住み慣れた家でご家族と共に最期まで暮らせるようにと、訪問診療や訪問看護を利用して自宅でターミナルケアを受ける方もいます。その場合、定期的な医師や看護師の訪問を中心に、介護サービスの併用やご家族によるケアも必要です。
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緩和ケアとターミナルケアの違いは、開始するタイミングやケアの目的・対象です。以下に、緩和ケアとターミナルケアの異なる点をまとめました。
| 目的 | ケアを開始するタイミング | 対象 | |
| 緩和ケア | 治療に対する苦痛を和らげ、治療の質を高める | 治療を開始したとき | 治療を受けるすべての方 |
| ターミナルケア | 終末期を迎えた方が必要とするケアを提供する | 治療や延命を断念したとき | 終末期の方 |
緩和ケアは「がん患者の苦痛を和らげる」とイメージする方が多いかもしれませんが、実際は疾患を限定していません。緩和ケアは治療の苦痛を和らげることを目的とする一方で、ターミナルケアは最期をむかえるまでの生活を支援します。どちらも患者さまのQOLを高めるためにサポートするという点は同様です。
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ターミナルケアにおける看護師の主な役割は、「基本的な看護ケア」「意思決定の支援」「疼痛コントロール」「精神面のケア」などです。この項では、ターミナル期を支える看護師の役割について詳しく紹介します。
厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」では、ご本人の意思が確認できる場合、ターミナル期の医療やケアの方針は、インフォームドコンセントに基づいて患者さまが決定することを基本としています。本人の意思が確認できないケースでも、患者さまにとって最善の治療方針を目指すことが必要です。
患者さまの意思決定には、看護師も医療・ケアチームの一員として、以下のようにサポートを行います。
ご本人の意思はときに変化し、途中から自分で決定することが難しい状態になるケースもあることから、ご本人とご家族、医療・ケアチームは話し合いを繰り返します。看護師は患者さまと直接関わる時間が長いため、気持ちを引き出しやすくする援助をするのも大切な役割です。
ターミナル期の患者さまは、皮膚表面や関節・筋肉、内臓などに慢性的な痛みが出ることも少なくありません。終末期医療では、苦しみを和らげるために疼痛コントロールを実施します。疼痛コントロールの方法は、薬物療法や理学療法、心理療法などです。ターミナルケアを支える看護師は、患者さまの状態を注意深く観察し、医師と相談しながら、適切な薬物の投与やケアの提供で痛みの管理を行います。
ターミナルケアをする看護師は、悲しみや不安・憤りといった感情を抱えている患者さまの精神面をサポートする役割も担います。患者さまやご家族が、看護師に対して悲嘆感情を表出できるよう、日頃から良好な関係を築いておくことが大切です。
患者さまが亡くなった後、遺されたご家族のメンタルケアも看護師の役割の1つになります。ご家族がエンゼルケアに参加すると別れを受け入れやすくなるとされているため、希望があれば清拭や着替えを一緒に行うケースもあるようです。
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ターミナル期の患者さまには特有の症状や辛さが出るため、状態に合わせて適切な看護を提供することが望ましいです。ここでは、ターミナル期における看護のポイントについて解説します。
ターミナル期の患者さまにはさまざまな身体的苦痛が生じるため、看護師は痛みを和らげるケアを行います。ここでは、特に訴えが多くみられる身体的苦痛ごとに、緩和方法を紹介しますので、チェックしましょう。
ターミナル期の患者さまに出やすい身体的所見は、「看護技術Q&A:ターミナル期の患者さんの身体的観察項目について知りたい」でも紹介していますので、参考にしてみてください。
終末期の患者さまが感じる倦怠感は、「身の置き所がないような怠さ」と表現されるほどです。1日のうちに症状の変動がみられたり、貧血・不眠・不安感といったほかの症状を伴ったりすることも珍しくありません。薬の副作用や肝機能の低下など、倦怠感の原因が特定されている場合は、それに合わせた対処を行います。また、マッサージや温罨法といったケアでリラックスを促す方法も有効です。
ターミナル期の患者さまの呼吸困難症状には、肺・心臓の疾患やがんなどが原因になっていることが考えられます。咳嗽や胸痛、喀痰といった随伴症状があらわれやすいのが特徴です。
呼吸困難が起きているときは呼吸が楽になるように患者さまの姿勢を調整したり、酸素療法を行ったりします。チェーンストークス呼吸がみられる場合、意識レベルが低下し朦朧状態になるため注意が必要です。詳しくは「チェーンストークス呼吸している患者さんの看護について」をご覧ください。
食欲不振は、体力の低下や治療・薬剤による影響、不安、うつといったさまざまな要因によって引き起こされます。ターミナル期にある患者さんが全身状態をできるだけ良好に保つには、充分な栄養を摂取することが大切です。食欲低下に対して、看護師が実施するケアは以下のとおりになります。
全身状態の悪化に伴って、食事や水分の経口摂取が難しくなることもあるでしょう。必要に応じて、経鼻栄養や胃ろうなども実施します。
腹水が起こる原因は、疾患によるものや低栄養状態によるものなどさまざまです。腹水は腹部の膨満感以外にも息苦しさや悪心を伴い、不安感や苦痛を増強させることも。利尿剤の投与で腹水が改善されなければ、腹腔穿刺が実施されます。浮腫が起こっている場合、褥瘡や感染といった合併症が起こらないように、看護師は皮膚状態の観察も欠かせません。倦怠感につながることもあるので、むくみを解消させるマッサージも有効です。
終末期の患者さまは、精神的に不安定になりやすい状態です。そのため、看護師は、精神的な苦痛を和らげるためのケアをすることが必要となります。ここでは、精神的な不調によって起こる症状ごとの、苦痛を和らげるケアについてご紹介するので確認してみましょう。
病状の悪化やご家族と離れて生活する孤独感からストレスを感じ、不安や不眠に陥る患者さまは珍しくありません。「このまま眠ったら二度と目を覚まさないのではないか」という強い恐怖感によって不眠に陥るのは、ターミナル期に特有の症状です。
看護師は、不安や不眠症症状が現れている方に対して、穏やかな気持ちで過ごし、心身をゆっくり休められるようサポートを行います。不安の傾聴や居心地よく感じる環境の整備、マッサージなどがおすすめです。必要に応じて、抗不安薬や抗精神病薬、睡眠導入剤の投与について医師と相談します。
せん妄は、脳の機能不全によって起こる意識障害で、急激な発症や症状の日内変動が特徴です。亡くなる直前になると、およそ9割であらわれるとされています。せん妄がある患者さまへの看護のポイントは以下のとおりです。
見当識障害によって不安感が強まりやすくなるため、日常の看護ケアを行う際に声掛けやタッチングをすると、安心感につながります。
ターミナル期の患者さまは、生活の変化や周囲の人との離別により、以下のような社会的な問題や苦痛を抱えることも少なくありません。
終末期の方は、社会的な立場や役割が変容し喪失していくという大きな苦痛を感じています。看護師は必要に応じてソーシャルワーカーと連携し、患者さまが抱えている苦痛を取り除くことも必要です。
日常的に患者さまの死に立ち会う機会が多い看護師は、精神的な負担が蓄積され疲弊することもあります。こうした医療従事者にあらわれる職業的な悲嘆はプロフェッショナル・グリーフと呼ばれ、症状が進むと意欲の低下といった状態に陥ることもあるようです。
精神的な不調を防ぐために、ターミナル期の看護に携わる方は、日ごろから以下のようなグリーフケアを取り入れてみることをおすすめします。
ネガティブな感情は貯めこまず、業務外の時間は仕事から思考を切り替えましょう。楽しむ時間も持ち、心身のコンディションを整えることは大切です。
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看護業務にも活かせるグリーフケアの正しい知識を得たい人は、研修やセミナーの利用がおすすめです。各都道府県の看護協会では、グリーフケアをテーマとした講座を随時開催しています。大学や自治体が開催する場合もあるので、参加できるものを探してみると良いかもしれません。
より専門的な知識を身に着けたいなら、グリーフケアに関する資格の取得も選択肢の一つです。日本グリーフケア協会が主催する認定講座では、グリーフケアアドバイザーの資格を取得できます。1~3日程度の短期間の講座で取得できるので、実践的な学習を希望している人は検討してみましょう。
ここでは、ターミナル期の看護に関するよくある疑問について、Q&A形式でお答えします。
終末期医療では、患者さまが最期をむかえるまでのQOLを保つため、苦痛の緩和や意思決定の尊重に重点をおきます。ターミナル期のケアに携わる看護師は、患者さまの変化を十分に観察し、辛さや苦しさを取り除けるように援助することが重要です。
「ターミナル期の患者さまの特徴」で紹介したように、終末期にある患者さまは死を受け入れることに時間がかかることも少なくありません。ケアを行う看護師は、精神的に不安定になった患者さまからきつく当たられることもあります。終末期の方の精神状態についても知識を身につけ、ほかの医療従事者と協力しながら適切な関わりを心掛けましょう。
ターミナル期の患者さまやそのご家族は、悲しみや焦り、怒りといった悩みを抱えている状態です。その人らしい最期をむかえられるように、看護師は患者さまの意思決定をサポートしたり、疼痛のコントロールを行ったりします。ターミナル期には、特有の症状や苦痛が出ることが少なくないため、患者さんの状態をよく観察してケアにつなげることが必要です。
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看護師から寄せられる“よくある質問”
Q. 現役看護師が一番稼げる科はどこ?
一般的に、高度な医療を提供する診療科や収益の多い診療科・クリニックは、高収入を得られる傾向にあります。病院だと救急救命科やICU(集中治療室)など、クリニックでは美容クリニックや人工透析クリニックなどが挙げられます。「看護師が一番稼げる科はどこ?高年収のクリニック・病院や転職のポイント」では、看護師が稼げる科を、詳しく解説しています。規模別の平均給与や、高収入な職場へ転職する際のポイントも紹介しているので、求人探しの参考にしてください。
Q. 看護師がのんびり働ける勤務先は?
病院であれば緊急対応や体力を消耗する業務が少ない外来や回復期・慢性期病棟。病院の外来やクリニックであれば重症患者の処置が少ない診療科は比較的落ち着いた環境といえるでしょう。自身のペースを大事に働きたい方は、現職の悩みを解決できるような環境・働き方を選ぶことがポイントです。「のんびり働きたい看護師向け!おすすめの職場や病院以外の仕事を紹介」では、のんびり働ける勤務先の条件や、おすすめの職場・診療科、のんびり働ける仕事のメリットやデメリットも解説しています。職場探しの参考にしてください。
Q. 看護師1年目で転職しても大丈夫?
1年目であっても転職は可能です。新卒として入職後3年以内に転職する「第ニ新卒」を歓迎する求人も多数出ている状況です。心身に不調がある場合や、職場でハラスメント・法律違反が横行している場合は、無理せず環境を変えたほうが安心です。「看護師1年目で転職しても大丈夫。病院以外の職場や好印象の退職理由を紹介」では1年目の看護師が転職したくなる理由や、仕事が辛いときの対処法、 おすすめの職場などをまとめています。新人看護師が転職に成功するコツや退職の際の注意点も解説しているので、参考にしてみてください。
Q. お礼奉公中でも転職は可能?
お礼奉公の途中でも、看護師が仕事を辞めることは可能ですが、途中で退職してトラブルに繋がるケースもあるので、辞める場合は注意が必要です。「お礼奉公中だけど辞めたい看護師へ!奨学金に関する疑問に答えます」では、「お礼奉公中の看護師は仕事を辞めても良いか」「途中で辞めると奨学金の支払いはどうなるのか」といった疑問や不安にお答えしています。また、奨学金の一括返済を求められたときや、退職を拒まれたときの対処法についてもご紹介しているので、お礼奉公がネックで前に進めずにいる方は、ぜひ参考にしてください。
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