仕事
2024.2.1
看護師の中には、「残業が多くてつらい…」と疲労困憊な人もいることでしょう。特に、サービス残業が常態化していたり、残業代がきちんと支払われなかったりといった職場で働いていると「我慢するしかないのかな」と自分を犠牲にしてしまいがちです。本記事では、そのような悩みを抱える人に向けて、看護師の残業事情を体系的に解説します。自身の労働環境の良し悪しを客観視しづらいという人も、ぜひ参考にしてみてください。
まずは、看護師を取り巻く残業の実態から見ていきましょう。看護師の残業時間や残業の有無は、職場によって大きな差があります。自身の職場とどの程度乖離があるのか比べてみてください。
看護師の1月あたりの時間外労働時間(不払い労働含む)について日本医療労働組合連合会「2022年看護職員の労働実態調査「報告集」(p20)」によると、最も割合が高いのは、5時間未満で28.5%、続いて5~10時間未満で22.4%、その次に10~20時間未満で22.3%という結果になっています。本データからも、大半の看護師の月平均残業時間は、5時間未満から20時間未満の間を推移しているといえるでしょう。
なお、1日あたりの時間外労働時間の平均値については、日本医療労働組合連合会「2022年看護職員の労働実態調査「報告集」(p19)」にて、以下のような統計が出ています。
勤務 | 始業時間前労働(分) | 始業時間後労働(分) |
日勤 | 22.1 | 46.3 |
準夜勤務 | 22.3 | 23.3 |
深夜勤務 | 18.5 | 25.7 |
夜勤2交替 | 23.9 | 29.3 |
引用:日本医療労働組合連合会「2022年看護職員の労働実態調査「報告集」」
ここでは、看護師の職場を比較した際の、残業時間の違いについて見ていきます。日本医療労働組合連合会「2022年看護職員の労働実態調査「報告集」(p16)」によると、終業時間後に約60分以上の時間外労働をしている看護師〈日勤(含む交替勤務者)〉の職場は、上から順に以下のとおりとなっています。
※その他を除く上位5つを記載
なお、日本医療労働組合連合会「2022年看護職員の労働実態調査「報告集」(p15)」によると、始業時間前について25.3%、また、終業時間後の労働について12.8%の看護師〈日勤(含む交替勤務者)〉がそれぞれ「時間外労働はなし」と回答していることから、すべての看護師が残業に関する悩みを抱えている訳ではないということが読み取れます。
ワーク・ライフ・バランスを重視したい看護師は、職場環境によって残業の有無や残業時間に大きな違いがあることを念頭に置いた上で、求人を取捨選択することが必要だといえるでしょう。
看護師の中には「前残業って当たり前なのかな…」と、やりきれない気持ちを抱えている人もいるかもしれません。以下にて、前残業をしている看護師の割合を見ていきましょう。
レバウェル看護公式 Instagramのストーリーズにて、「看護師さんに質問!前残業していますか?」とのアンケートをとったところ、「約8割の看護師が前残業をしている」という結果になりました。その一方で、「転職をして前残業が無くなった」という声や、「労基署の立ち入り調査により前残業が禁止となった」という声も。
前述のとおり、看護師の残業は働く職場に大きく左右されるほか、立ち入り調査といった外的要因によって状況が好転する可能性もあることが伺えます。
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ここでは、サービス残業に焦点を当てて見ていきます。日本医療労働組合連合会「2022年看護職員の労働実態調査「報告集」(p21)」によると、「不払い労働がある」と回答した看護師は約7割に上るという結果になりました。
サービス残業が生じる背景には、さまざまな要因が推測されますが、その中でも「先輩看護師が申請していないから…」といった理由で自主的にサービス残業をする人もいるといえます。「残業をして当たり前」という風潮が未だに残っている職場や、自己申告制で残業代の未払いを請求しづらい職場では、サービス残業が常態化している現状も否定できないといえるでしょう。
未払い残業が発生する原因としては、「みなし残業」も挙げられます。みなし残業とは、予め想定した残業代を基本給に含めて支払う制度のことを指します。みなし残業=固定残業代制ではないため、想定時間以上働いた場合は残業代を支給する決まりとなっているものの、中には違法性が疑われる職場もあるため留意が必要です。現在支給されている残業代に懸念を抱いている人は、違法な労働環境となっていないか、現状把握に努めましょう。
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残業代が出ない職場で働いている看護師は、以下の対処法を参考にしてみてください。例えば、労働基準監督署への相談においては、労働基準監督官が立ち入り監査を行うこともあるため、職場環境が改善される可能性があります。それぞれにかかる時間と労力を天秤に掛けながら、然るべき対応を行うと良いでしょう。
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看護師の残業が多い原因としてはさまざまな要素が挙げられますが、その中でも、深刻化する人材不足は、一人ひとりの業務負担を増している大きな要因の一つです。下記を参考に、自身の労働環境と照らし合わせてみてください。
医療現場において、看護師の人手不足は深刻さを増しています。過酷な労働環境の中で悲鳴を上げている看護師も少なくありません。そのような状況下では「勤務時間内に仕事を終わらせよう」と努力しても、実際問題難しいといえるでしょう。
引き継ぎ業務も、看護師の時間外労働が増える原因の一つです。職場によっては始業時間前や終業時間後に引き継ぎが実施されたり、時間外での引き継ぎが常態化していたりすることも。大学病院や総合病院といった入院施設がある病院に勤務している看護師の場合は、「残業時間が増えるのは避けられない…」という人も少なくないといえるでしょう。
書類業務も看護師の大事な業務の一つです。特に看護師の仕事は翌日に持ち越せる内容が少ないため、勤務時間内に書類業務が終わらない場合、残業せざるを得ない状況になります。昨今では多くの病院で記録業務を効率化する動きが広まっているものの、申し送り後に看護記録の作業を行っているという看護師がいるのも現状です。
緊急手術、緊急入院といった緊急対応も時間外労働が増える要因の一つです。前述の「人手不足」にも繋がりますが、特に緊急時の体制に余裕がない職場の場合は、ヘルプでの緊急対応が必要となり、必然的に時間外業務が増える傾向にあるでしょう。
看護師の中には、勤務時間外の研修や勉強会に不満を抱いている人もいることでしょう。看護師の研修や勉強会は勤務時間外に行われることが多く、新人研修においても例外ではありません。中には、自主参加扱いで残業代が出ない職場もあるといえます。
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看護職の労働環境における厳しい実態を受け、公益社団法人日本看護協会は、看護師個人の持続可能な働き方の実現を推進するべく「就業継続が可能な看護職の働き方の提案」を策定しています。提案の中で、日本看護協会は「夜勤負担」「時間外労働」「暴力・ハラスメント」「仕事のコントロール感」「評価と処遇」といった5つの要因を打ち出しており、「時間外労働」については下記のように明記しています。
1)夜勤・交代制勤務者においては時間外労働をなくす
2)可視化されていない時間外労働(※)を把握し、必要な業務は所定労働時間に取り込む
※業務開始前残業(前残業)や持ち帰り業務、勤務時間外での研修参加等(業務時間外残業)
上記の提案に対しては、厳しい労働実態に関する切実な意見が多く寄せられているのもまた事実ではありますが、看護師の過酷な労働環境が浮き彫りになっている今日、少しずつ状況改善に向けた取り組みが活発化していることが見て取れます。看護師の持続可能な働き方の実現には未だ多くの課題が山積しているものの、働き方改革の推進も相まって、今後より多くの病院や施設で残業時間を減らす取り組みが導入されていくといえるでしょう。
ここでは、看護師の残業時間の削減に向けて、職場全体でできる対処法を紹介します。一人ひとりの負担が軽減されれば、離職防止にも繋がり、職場環境はより魅力的なものになるでしょう。その結果、外部からのイメージも向上し、人手不足の解消にも繋がるかもしれません。組織体制が強化されれば、看護の質の向上にも繋がるといったさまざまな相乗効果が期待できます。
看護師が残業を減らすために意識したいこととしては、下記の内容が挙げられます。業務フローを見直し効率化を図るのはもちろんのこと、優秀な先輩を観察することで、業務の無駄がなくなったり、スキルアップに繋がったりすることもあるでしょう。また、周囲との協力体制を構築するために、他の看護師と積極的にコミュニケーションを取ることも大切です。自身の仕事の進め方を振り返り、改善箇所がないか今一度検討してみると良いでしょう。
前述に記載した内容と、自身の職場環境を考慮した上で、改善の見込みがないと判断した場合は、残業の少ない職場に転職するのも一つの手です。看護師資格を活かせるシチュエーションは多岐にわたるため、ライフスタイルに合わせて、希望の働き方を実現しましょう。
精神科は急患が少ないため、残業が発生しにくい傾向にあります。また、医療行為を行う機会も少ないため、急性期病棟といった最前線で働くことにプレッシャーを感じやすい人にはおすすめです。ただし、精神科看護師は向き不向きが分かれやすいという特徴もあるため、自身の適性を冷静に見極めた上で判断しましょう。
皮膚科も残業が少なく、落ち着いた環境で働きたい人におすすめの職場です。命に関わる症状はほとんどないため、精神的な負担も少ないといえます。基本的な看護技術を身につけている人であれば、無理なく働けるでしょう。
泌尿器科も残業が少ない職場のため、プライベートの時間を重視したい人に向いています。クリニックであれば、日勤のみの働き方が可能な上、年間を通して忙しさも変わらない傾向にあるため、時間に余裕を持って働きたい人におすすめといえるでしょう。
耳鼻科も基本的にはワーク・ライフ・バランスを実現しやすい職場です。ただし、繫忙期になると残業が発生する場合もあるため、事前に職場の内部事情を調べておくと安心です。ルーティンワークが中心のため、体力面の負担を軽減したい人にも向いているといえます。
慢性期病棟の患者さんも比較的症状が安定しているため、ルーティンワークが多く、残業が少ないといえます。日常生活の援助が中心であり、医療処置も少ない傾向にあるため、仕事と家庭を両立したい病棟看護師におすすめです。
回復期リハビリテーション病棟も慢性期病棟と同様に患者さんの病態が安定しているため、急変や突発的な入院もほとんどなく、残業が少ない傾向にあります。ただし患者さんの介助が必要となるため、体力面の負担を感じる可能性があることは念頭に置いておきましょう。
デイサービスも基本的に日勤のみのため、規則正しい生活を送りたい看護師におすすめの職場です。概ね一日の仕事量も決まっているため、心にゆとりを持って働けるといえます。施設によって特徴が異なるため、求人情報を細かくチェックすると良いでしょう。
検診センターも残業がほとんどないため、心身の負担を軽減したい人におすすめの職場です。ルーティンワークが中心のため、集中力に自信がある人には向いているといえるでしょう。比較的人気の高い職場であることからも、こまめな情報収集をおすすめします。
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「残業がなければいい」条件の少ない看護師がぴったりの職場を見つけた方法
ここでは残業に関する悩みを抱く看護師によくある質問を紹介します。
看護師の職場は慢性的な人手不足であり、残業に関する悩みを抱えている看護師も多いといえます。ただし、残業の有無や残業時間は職場によっても大きな差があることから、働きやすい環境を見極めることが大切です。チェックポイントは、「看護師がホワイト病院に転職するには?本当に働きやすい病院の特徴と見分け方」を参考にしてみてください。
精神科においては急な入院であったり、クリニックにおいては、患者さんが多かったりする場合に残業となる可能性があります。職場によって労働環境にも違いがあるため、求人を探す際は、事前の情報収集を徹底することが大切です。
求人探しのコツとしては「転職エージェントといったプロのサポートを受ける」ことをおすすめします。転職エージェントに登録すれば、非公開求人の閲覧も可能になるため、より多くの選択肢の中から希望に沿った求人を選ぶことが可能です。一人での転職活動に不安を抱いている人もぜひ活用してみてください。
主な内容として「人手不足による業務過多」「勤務交代による引き継ぎ業務」「急患・急変対応」などが挙げられます。「看護師の残業が多い原因」では、それぞれの詳細について解説していますので、参考にしてみてください。
看護師の残業については、深刻化する人材不足に伴い、未だ多くの問題点が挙げられています。看護業界全体でも改善に向けてさまざまな対策が進められていますが、サービス残業が常態化していたり、違法な労働環境となっていたりする職場があるのもまた現状です。個人の力で労働環境を改善するのには限界があるため、さまざまな対処法を試してもなお、変化が見られない場合は、自身が生き生きと働ける職場に転職するのも一つの手です。
なお、転職すべきか否か判断がつかないという方はレバウェル看護にご相談ください。レバウェル看護は看護師専門の転職支援サービス。キャリアアドバイザーから、職場の良いところも大変なところも包み隠さずお伝えするため、職場の雰囲気や忙しさを把握した上で、転職することが可能です。サービスはすべて無料でご利用いただけるため、ぜひお気軽にご登録ください。
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