
「サービス残業が当たり前の状況がつらい」「残業には手当を支給してほしい」と悩んでいる看護師さんもいるのではないでしょうか。実際に、看護師がサービス残業せざるを得ない職場は少なくありません。
この記事では、看護師がサービス残業せざるを得ない理由や悩んだときの対処法を解説します。残業が比較的少ない職場例や看護師さんの転職事例も紹介していますので、サービス残業に不満を抱えている方はぜひご一読ください。
サービス残業とは、一般的に、勤務時間外に業務した分の残業代(手当)が支給されない状況を指します。看護師のサービス残業は、時間外手当が一切支払われないというよりは、実際の残業時間と手当支給分に乖離があるケースが多いようです。
勤務時間外の労働とみなされる場合、使用者は労働者に時間外手当を支給しなければならないと「労働基準法」で定められています。勤務時間外に行った業務に対して、適正に手当が支払われない状態は違法です。
看護師の仕事に関わる労働基準法は、「看護師に適用される労働基準法とは?残業や休憩、夜勤にまつわる実態を解説」の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
日本看護協会の「2024年度『看護職員の賃金に関する実態調査』結果(15p)」によると、看護師が「実際に勤務時間外に業務を行った時間数」と「手当支給の対象になった時間数」(2025年1月の期間分)は以下のとおりです。
| 勤務場所 | 実際に勤務時間外に業務を行った時間 | 時間外手当の支給対象になった時間 |
| 病院 | 15.5時間 | 9.1時間 |
| 訪問看護ステーション | 15.8時間 | 11.4時間 |
| 診療所 | 9.7時間 | 6.6時間 |
| 介護系サービス | 11.3時間 | 6.5時間 |
| 官公庁 | 12.4時間 | 8.1時間 |
| 看護系教育研究機関 | 15.2時間 | 6.39時間 |
| その他 | 10.4時間 | 10.4時間 |
参照:日本看護協会「2024年度『看護職員の賃金に関する実態調査』結果(15p)」
ほとんどの施設種別で、看護師が残業を行った時間すべてに手当が支給されているわけではないようです。その差が大きい職場では、時間外労働の一部にしか残業代が支払われず、サービス残業にあたる時間が多くなっているかもしれません。
看護師の残業時間と手当支給額に乖離があり、サービス残業が発生するのは、行った残業がすべて時間外労働とみなされ申請されるとは限らないという背景が関係しているといえます。次の項では、時間外労働に該当するケースについて解説しますので、確認してみてください。
時間外手当が支給されるには、「使用者の明示・黙示的な指示による業務を行った時間」だと職場で判断される必要があります。ただ、このように「労働基準法」で定められてはいても、その判断が適正に行われていない職場もあり、サービス残業が発生しているのが現状です。以下に、残業代の支給対象になる事例・ならない事例を紹介します。
以下のようなケースは、法律の基準上、時間外手当の支給対象です。サービス残業になってしまっている場合は、職場に申請すれば残業代が支給される可能性もあります。
勤務時間外に行うよう指示された作業や、出勤前・退勤後に必要に迫られて行う業務は、時間外労働に該当します。また、着用が義務付けられている制服に着替えるための時間や、上司から指示された勤務時間外の研修参加も、時間外手当の支給条件に該当するでしょう。
反対に、以下のようなケースでは、時間外手当の支給要件に当てはまらない可能性が高いといえます。時間外手当が支給される必要があるかどうかは、「管理者から指示があったか」「時間外に業務しなければいけない状況だったか」などが判断のポイントです。
1つ例外として、管理監督者の立場にある労働者には、時間外手当の支給義務が法律上定められていません。役職に就いている看護師が管理監督者としてみなされるかどうかは、職場によって異なるようです。労務管理の権限を持っている・経営に参画している看護師の場合、管理監督者として扱われて残業代が支給されないケースもあります。
▼関連記事
看護師の残業代って実際どのくらい?計算方法や請求までの流れをご紹介
看護師がサービス残業せざるを得ない理由には、職場の当たり前として定着していたり、勤務時間内に仕事が終わらなかったりすることが挙げられます。職場全体の残業時間が多いと、残業代が全額支払われなくなる可能性も高まるかもしれません。
職場によっては、始業前に申し送りや患者さんの情報収集をする時間を確保しなければならず、ナースに早めの出勤が求められている場合があります。就業時間前の労働は「前残業」と呼ばれ、前残業には手当を支給しない職場もあるようです。残業するのが当たり前の風潮ができあがっていると、自分だけ断ることはできず、サービス残業をせざるを得ない状況になりやすいでしょう。
▼関連記事
看護師の前残業とは?発生する理由や残業時間を減らす方法、少なめの職場も
看護現場は予想できない対応が多いため、定時内では担当分の業務が終わらない場合もあります。「夜勤のときは時間前からラウンドのサポートに入る」「定時後に雑務を片してから退勤する」などは、忙しい職場では珍しくないかもしれません。直接的に上司から指示されていなくても、時間外に業務をしないと仕事が回らなくなるからと、サービス残業が常態化している場合があります。
研修や勉強会が就業時間外に行われ、その時間は残業手当をつけないといった職場もあります。看護師は基本的に参加するものとされている研修だと拒否できず、そのたびにサービス残業が発生することになるでしょう。
この項では、サービス残業に悩む看護師さんに向けての対策方法を紹介します。自身や職場の状況と照らし合わせながら、参考にしてみてください。
職場でサービス残業が常態化してしまっている場合は、上司に状況の改善を求めましょう。時間外労働に該当するのにもかかわらず、それに対して職場が残業代を支給しないことは違法です。管理者は、適正に手当を支給するか、看護師の残業を可能な限り減らすための対策を講じる必要があります。
時間が足りなくなるからと、自主的に前残業で情報収集をしている場合は、勤務開始後に短時間でできるように工夫してみましょう。業務全体の効率性を上げ、情報収集自体にかかる時間を短縮すれば、勤務中に時間を確保できるようになるかもしれません。
業務に時間がかかってしまう場合は、ほかのナースに相談してサポートを受けるのも手です。周囲に手伝ってもらうことで自分以外の取り組み方を学んだり、より効率的に業務へ取り組めたりします。職員同士の協力によって全体の業務が早く終わるようになれば、残業そのものを減らせるでしょう。
上司に相談してもサービス残業が改善されない場合は、労働組合や労働基準監督署に相談する方法もあります。相談する際は、サービス残業を課せられている証拠を用意しておきましょう。証拠があれば現状のトラブルを具体的に伝えられ、職場への指導や是正勧告といった対応を取ってもらいやすくなり、残業代を請求するためのサポートを得られます。
サービス残業によって、心身の負担や不満を抱えている人は、サービス残業が発生しないように取り組んでいる職場へ転職も検討しましょう。サービス残業のない職場なら、残業が発生したとしてもしっかりと手当を受け取ることが可能です。業務に取り組んだ分の手当が支給されれば、仕事に対するモチベーション向上にも繋がります。
▼関連記事
看護師が残業を減らすための工夫とは?残業時間が少なめの職場も紹介
看護師が働く施設の中には、残業が少ない傾向にある職場もあります。サービス残業に悩んでいる方は、残業がそもそも少なめの職場で働くのも手です。
病状が安定している入院患者さんがほとんどの回復期病院や療養型の慢性期病院は、看護師の残業が少なめです。緊急入院や急変の対応が急性期よりも少ないため、比較的余裕のあるスケジュールで業務しやすいといえます。免許を取得してから日が浅く、急性期の働き方がつらいと感じる看護師さん向けの職場です。
▼関連記事
看護師が働く病棟の種類を解説!自分に向いている職場を見つけたい方は必見
施設内訪問看護は、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などに入居する方の居室を訪問して看護やケアを行う仕事です。利用者さんの個人宅に出向く訪問看護とは異なり、訪問のための移動回数は多くありません。決まった時間内で、看護業務に集中しやすいのもメリットだといえます。
▼関連記事
施設内訪問看護とは?仕事内容や一般的な訪問看護との違い、メリットも解説
保育園看護師は、保育園に通う園児の健康管理を主に行う仕事です。保育園看護師の勤務時間は、基本的に園児を預かっている間になるため、残業は少ない傾向にあります。保育園で看護業務を行う場合も、看護師以外の資格を取得する必要はありません。日勤のみ、土日祝休みの働き方がしたい人にもおすすめの職場です。
▼関連記事
保育園看護師の仕事内容を解説!必要なスキルや働くメリット、給料事情も
検診センターも、ナースの残業が比較的少ない職場の1つです。看護師は検査のサポート業務を行うのが役割で、検査は完全予約制にしている施設が多くなっています。業務がスケジュールどおりに進みやすく、緊急の対応も基本的にないため、精神的な負担がかかりにくい仕事です。
▼関連記事
検診センターで働く看護師の仕事内容とは?給料や転職のポイントも紹介
ここでは、サービス残業や多過ぎる残業に負担を感じ、「レバウェル看護」へ相談して転職した看護師さんの事例を紹介します。
免許を取得後、急性期病棟に新卒入職して1年未満の看護師Eさんは、サービス残業を含めて残業時間が月50時間を超えている状況でした。激務な職場に疲れて転職を考え、「レバウェル看護」に相談してくださいました。「新卒で転職することに後ろめたさがある」と、新しい職場で働く勇気が出ない様子のEさん。そこで、キャリアアドバイザーは、看護師の数が多めで丁寧な教育制度がある病院への転職のほかに、「思い切って住んでみたい地域に転居してみる」ことも提案します。Eさんが前向きに再スタートできるよう、サポートを行いました。
▼詳しくはこちらから
新卒1年未満の転職で引け目を感じる…前向きに仕事を探せた意外なきっかけ
看護師Yさんは、総合病院の過酷な勤務で体調を崩し、その後は無理のない範囲で働ける訪問看護ステーションで10年間勤務してきました。しかし、あるときからオンコールが増え、今まで休みが取れていた日曜日や祝日にもシフトを入れられるようになったといいます。やりがいを感じている訪問看護は続けたいものの、「この忙しさが続けばまた体調不良になってしまうのでは」と不安に思うようになり、「レバウェル看護」へご相談くださいました。キャリアアドバイザーは、Yさんが希望の条件で訪問看護の仕事を続けられるよう、さまざまな事業所の情報を収集します。
▼詳しくはこちらから
このままでは体調を壊してしまう…今の給与を維持しながら理想の職場へ!
一般企業に勤めながら救急救命士を目指していたTさんは、公務員試験に合格できなかったことから救急分野の看護師への道を志して免許を取得し、急性期病院に転職しました。しかし、その職場ではサービス残業が当たり前で、有給休暇も取りにくい労働環境に疑問を感じたそうです。上司に相談しても改善されないことに納得ができず、5カ月で病院を退職し、次の職場を探すために「レバウェル看護」へご相談くださいました。看護師として理想の働き方を実現したいTさんのために、キャリアアドバイザーは普段から懇意にしていただいている病院に連絡してみることにします。
▼詳しくはこちらから
会社員から看護師になるも、労働環境が疑問で早期退職。見つけた打開策とは
ここでは、レバウェル看護【公式】Instagramで看護師さんに向けて行った、残業に関するアンケートの結果について紹介します。
1ヵ月の残業時間に関するアンケートでは、「10時間以下」と回答した看護師さんが54%で半数以上を占めました。詳細は以下のとおりです。
| 1ヵ月の残業時間はどれくらい? | 割合(回答総数:715票) |
| 10時間以下 | 54% |
| 10~20時間 | 29% |
| 20~30時間 | 11% |
| 30時間以上 | 6% |
割合で見ると少なめなものの、「30時間以上」という回答も一定数ありました。具体的な残業時間を質問すると、月40~60時間以上だという看護師さんもいました。看護師の残業時間の多さは、職場によって大きな差があるようです。
「前残業をしている?」と質問したアンケートでは、約80%の看護師さんが「してる」と回答しました。
| 前残業してる? | 割合(総数:1,270票) |
| してる! | 79% |
| してない! | 21% |
前残業は時間外手当が支給されずサービス残業との声もあり、前残業が仕事の負担感に少なからず繋がっていることが分かります。前残業の必要がなければ、「もう少し朝の時間に余裕ができるのに」と悩む看護師さんも少なくないでしょう。
ここでは、看護師のサービス残業に関する質問をQ&A形式でお答えします。
法律上、過去3年分の未払い残業代は、さかのぼって職場に請求できることになっています(2026年時点)。手続きとしては、まず職場に未払い残業代の請求通知を送るのが一般的です。それに応じてもらえなければ、法定手段で訴訟や労働審判を行うことになります。未払い請求をする際は、労働基準監督署にもあわせて相談・申告することで、職場へ残業代の支払いをするよう指導してもらえる可能性もあるので活用しましょう。
前残業自体は、違法ではありません。ただ前残業は、勤務時間前に業務を行わなければいけない状況があるからこそ、発生しているケースがほとんどだと考えられます。時間外労働にあたるのであれば、職場はたとえ短時間の前残業でも残業代を支給しなければ違法になります。
前残業を減らせるよう、一人ひとりが意識を変えていく姿勢が大切です。たとえば、誰が見ても理解しやすい書き方で記録をつけて確認しやすくしたり、作業が早い人の取り組み方を真似てみて、記録や申し送りが短時間で終わるように工夫しましょう。記事内の「サービス残業が多過ぎると悩む看護師向けの対策方法」も参考にしてみてください。
職場によっては、「新人は残業申請できない」と言われているケースもあるかもしれません。しかし、法律上、時間外手当の支給に経験年数は関係ありません。サービス残業について管理者へ相談しても現状が変わらないという場合は、転職を検討しましょう。転職の際は、残業状況や手当の支給といった点も情報収集をすることが重要です。
看護現場では、サービス残業が当たり前になっている職場もあるのが現状です。時間外労働に対する残業代が適正に支給されない状態が続くと、仕事に対する意欲が低下してしまうことも考えられます。時間外労働にあたる場合、職場はサービス残業のある環境では、できるだけ残業を減らせるように意識したり、周囲に協力を仰いだりして、内部から変えていく姿勢が必要です。サービス残業が避けられない環境に悩みを抱えている場合は、転職を検討した方が良いかもしれません。
「サービス残業が発生しないように対策している職場へ転職したい」という方は、「レバウェル看護」へ相談してみませんか?
「レバウェル看護」では、病院・施設へのヒアリングをこまめに行っているため、職場の様子や残業の状況について詳しくお伝えすることが可能です。求人紹介と職場の情報提供の両方を受けられるので、納得したうえで応募を決めていただけます。相談のみの利用も可能です。「現在の職場でサービス残業がなくならない」「残業代がきちんと支給される職場に行きたい」とお悩みの方は、「レバウェル看護」へお気軽にお問い合わせください。
記事の制作について
「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。
キャリア
働く場所
選考対策
資格
その他
読みもの
連載