
「職場で前残業が当たり前になっている」「前残業は減らせないの?」と悩んでいる看護師もいるのではないでしょうか。勤務時間前に業務を行う前残業は、看護師の職場でサービス残業化している実態があります。
この記事では、看護師の前残業が発生する理由と減らす方法を解説。実際の看護師さんの声や、前残業で残業代を請求できるケースも紹介しています。前残業による負担を減らして快適に働きたい方は、ぜひ参考にしてください。
前残業とは、労働契約上の勤務時間よりも前に出勤して時間外労働を行うことです。看護師の働き方においては、交替制による申し送りや患者の情報収集のため、早めの出勤が必要になる場合も見られます。
状況によっては、公共交通機関の混雑や帰宅時間が遅くなるのを避けることを目的に、進んで前残業を行う人もいるようです。一方で、早めに来ないと業務が終わらないという焦りから、やむを得ず前残業をする場合も考えられます。
前残業と一般的な残業は、目的と対応する時間帯が異なります。
前残業は勤務時間前の情報収集がメインなのに対し、一般的な残業は勤務時間後に対処しきれなかった業務を進めるのが基本です。余裕を持って業務を終わらせていたとしても、退勤間際に緊急対応が発生すると残業になってしまうでしょう。
残業をしている事実に変わりはないため、どちらも時間外手当の支給となりますが、前残業の場合はサービス残業として扱われやすいのが現状です。
労働基準法に基づいて判断すると、残業と同じように、前残業があること自体に違法性はありません。この項では、前残業に関する労基法の条項と、実際に扱われ方について解説します。
前残業や残業については、労基法第36条「時間外及び休日の労働」の内容が関連します。
労働基準法でいわれる「時間外労働」とは、法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超える時間のことです。以下のように、使用者が、労働者に時間外労働をさせられる時間には上限があります。
| 法定労働時間 | 基本的に1日8時間、1週40時間の労働基準法が定める労働時間の基準 |
| 時間外労働 | 「法定労働時間」を超える時間分の労働(原則、月45時間、年360時間が上限) |
| 所定労働時間 | それぞれの職場で定められる勤務時間 |
早く出勤して前残業した時間は、勤務時間後に発生した残業時間とあわせて法定労働時間を超えた分を、「時間外労働」として扱われるのが基本です。時間外労働の上限が守られていない場合は、法律違反になります。
前残業が労働時間と該当する状況には、下記のような内容が挙げられます。自分が行っている前残業が、時間外労働にあたるかどうかを確認してみてください。
・使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
・使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
・参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(3p)」
看護業務以外に、片付けや掃除、制服への着替えなども労働時間にあたる場合があります。時間外労働としてみなされるには、職場の管理者や上司から行うよう指示があったかどうかが、重要な焦点となるようです。
看護師が前残業を行っている実態があるにもかかわらず、サービス残業化している職場もあります。「2019年 病院および有床診療所における看護実態調査 (35p)」より、各病院で前残業を時間外勤務として取り扱っているかどうかを調査した結果は、以下のとおりです。
| 選択肢 | 割合 |
| 前残業を時間外勤務として「取り扱っていない」 | 62.9% |
| 前残業を時間外勤務として「取り扱っている」 | 21.5% |
| 前残業の実態はない | 12.4% |
参照:日本看護協会「2019年 病院および有床診療所における看護実態調査」
このデータから、6割以上の病院で前残業を時間外労働として扱っていないことが分かります。本来、上司から指示を受けていたり、前残業を行わなければ職場全体の業務が回らなかったりする場合、労働時間にあたることを覚えておきましょう。
▼関連記事
看護師に適用される労働基準法とは?残業や休憩、夜勤にまつわる実態を解説
ここでは、レバウェル看護の独自調査をもとに、看護師の前残業の現状を確認してみましょう。「前残業のために早出する時間」「前残業に対する残業代」「前残業で行う業務」などの情報もまとめました。
レバウェル看護 Instagramでは、看護師さんを対象に「前残業していますか?」というアンケートを行いました。その結果、79%もの看護師さんが前残業をしていると回答。以下は、アンケートの内訳をまとめたものです。
| 前残業をしてる?してない? | 割合(総数:1270票) |
| 「してる!」 | 79% |
| 「してない!」 | 21% |
参照:レバウェル看護【公式】Instagram (@levwell_kango)
また、日本看護協会の「2019年 病院および有床診療所における看護実態調査 (116p)」によると、業務の開始時刻より前に出勤して仕事を始めた経験のある看護師は65.6%となっています。なかには、勤務時間より早く出勤するのが当たり前と捉え、前残業を受け入れている方もいるかもしれません。
アンケートの回答のなかから、「前残業をするためにどれくらい早く出勤しているか」に関するものを以下にまとめました。
・1時間前は当たり前です。
・出勤時間の1時間半~1時間前出勤です
・情報収集、経管栄養準備、点滴チェック、内服チェック等…。夜勤は2時間前から病棟にいます
・30分前に行って点滴チェックとミキシングをしてます。
・日勤は50分前、夜勤は1時間半前に来て夜勤は残り時間で外回りやっちゃいます、その間お金欲しい
レバウェル看護【公式】Instagram (@levwell_kango)
業務開始よりも1時間ほど早く職場に入るという声が、看護師さんから多く寄せられていることが分かります。夜勤シフトの日は、さらに早く出勤して前残業をしていると回答した看護師もいました。
「ほかの人は前残業の残業代をもらっているの?」と気になる方もいるかもしれません。以下は、前残業の残業代に関する回答をまとめたものです。
・情報収集点滴準備などに約1時間。もちろんタダ働きです。ユニットは前残業ないイメージ
・診療所です。9時スタート!9時からしか時給が発生しません。前残業しないと9時スタートは無理だ!
・情報収集は始業開始30分前からしていいことになっているが残業代はない
・残業代はもちろんつかない…始業前なのに…
・前残業も残業代出ます!
レバウェル看護【公式】Instagram (@levwell_kango)
前残業に残業代が出ない、時給が発生しないという回答も複数寄せられました。前残業に伴う残業代の支給は、職場によって異なるようです。
下記では、「前残業で看護師はなにをしている?」という回答についてまとめました。ほかの職場で、前残業の状況はどうなっているのかを知る参考にしてみてください。
・情報収集しないと仕事にならないし点滴や内服準備してます
・情報収集、点滴ミキシングなど
・情報収集、内服のチェック、先生ごとにカルテ仕分け、物品準備は始業前の仕事!
・情報収集はないが、就業前より薬配りや下膳、食事介助が暗黙のルール
・施設勤務のナースです。スタッフ連絡の確認やバイタル測定したり処置したり。半ば強制的に前残業です
・電カルからの情報収集
・そもそも、先生からの申し送りが始業前に始まる。そこに遅れると師長に睨まれる
レバウェル看護【公式】Instagram (@levwell_kango)
前残業では、業務開始までに情報収集をするという回答が多数寄せられました。組織の暗黙の了解として、進めなくてはならない作業もあるのが現状のようです。
厚生労働省の「法定労働時間と割増賃金について教えてください。」によると、使用者が労働者に時間外労働をさせる場合、割増賃金の支払いが必要です。時間外労働に該当する前残業・残業を行った時間分は、手当が支給されなければならないといえます。
なお、時間外労働に対する割増賃金(時間外手当)は、通常の賃金の2割5分以上と定められています。たとえば、通常1時間当たり1,000円で働く人の場合、時間外労働1時間につき1,250円以上の時給となるのが基本です。
前残業による残業代の有無は「労働基準法に照らし合わせて、労働時間としてみなされるかどうか」がポイントとなります。残業代を請求できる具体的な例は、以下のとおりです。
上司や職場からの指示による前残業は、業務上必要な就労と認められるため、残業代を支給する必要があります。
一方で、以下のように自主的に早く出勤している場合は労働時間としてみなされず、残業代が請求できない可能性もあります。
勤務時間よりも早く出勤しているからといって、必ずしも残業代が発生するわけではない点に注意しましょう。
▼関連記事
看護師の残業代って実際どのくらい?計算方法や請求までの流れをご紹介
新人看護師は残業代が出ない?業務が終わらない原因や定時で帰る方法とは
看護師の働き方では、なぜ前残業が発生しやすいのでしょうか。ここで、その理由と原因を確認してみましょう。
看護師のなかには、勤務時間になったらすぐに業務へ取り掛かれるよう、あらかじめ情報収集をする人もいます。受け持ち患者の治療スケジュールやバイタルサイン値の変化、その日に行う検査の詳細など、事前に確認しておかないと業務に支障が出てしまうからです。
前日に目を通していたとしても、状況によっては当日に医師の指示内容が変更されている場合もあります。受け持ち患者数が多かったり、夜勤明けに休みが入っていたりする場合は、確認作業に時間がかかりやすいのも要因といえるでしょう。
1人あたりの業務量が多く、勤務時間中はひたすら患者の対応に追われてしまう職場もあるようです。このような環境では、看護記録の作成が後回しになってしまうことも考えられます。家庭の事情によっては勤務時間後の残業が難しい方もいるため、できるだけ定時で退勤するため、やむを得ず前残業で対応するケースも少なくありません。
前残業が慣習化されている職場では、ほかの看護師の勤務時間に合わせて出勤しなくてはならないという状況もあるようです。看護師長や主任をはじめ、先輩看護師の出勤時間が早いと、前残業が病棟内の暗黙のルールになっているケースがあります。
職場によっては、新人看護師が早く出勤し、情報収集や業務の準備、事前学習などをしなければならないところも。前残業で30分~1時間の対応が求められると、疲労が積み重なってしまうでしょう。
日中に研修や病棟カンファレンスが行われる場合、夜勤の看護師は早めに出勤して参加しなければなりません。臨床経験の浅い看護師は、自己研鑽のために勤務時間外の研修や勉強会への参加を余儀なくされるケースがあります。任意の院内研修であっても、参加の可否が評価につながることから、ほぼ強制的に向かわなければならない職場もあるようです。
▼関連記事
看護師のサービス残業は当たり前?その理由と回避する方法を解説
前残業の時間を減らすには、勤務中に情報収集する時間を確保したり、職場に改善を求めたりすることが重要です。前残業を負担に感じている方は、以下の方法を取り入れてみましょう。
これまで業務開始前に情報収集をしていた看護師は、勤務開始後にその時間を設ける方法を試してみてください。たとえば、通常のシフトが9時~18時で8時30分から前残業をしている場合、シフトそのものを8時30分~18時に設定すれば、業務時間内に情報収集をすることが可能です。前残業ではなく通常の残業時間として扱われれば、時間外手当を支給されるようになります。
前残業を減らすためには、前残業を当たり前とした働き方を変えることが必要です。部署のマネジメントを行っている上司に相談して、職場単位で見直せると働きやすさに繋がります。
▼関連記事
看護師が残業を減らすための工夫とは?残業時間が少なめの職場も紹介
看護記録の作成時間を短縮できると、前残業を減らせる可能性があります。必要な情報に特化して記載すれば、自分の負担を減らすだけでなく、ほかの看護師にも患者情報を共有しやすくなるでしょう。
職場全体で改善できるよう提案すると、前残業の時間が削減して効率的に業務を回せるようになります。フォーマットを守りつつ、簡潔かつ要点のみをまとめるように意識すると、簡略化が定着していくでしょう。
前残業が病院全体の暗黙のルールとして課せられている場合、労働時間として認めてもらうための行動を取る必要があります。具体的には、主任看護師や看護師長に相談し、業務体制を見直してもらうことが望ましいでしょう。そのほかの相談先には、病院の人事課や労働組合も挙げられます。
前残業削減のため、看護助手の雇用や残業代の請求などを提案してみましょう。
職場に訴えても状況が改善しないときは、地域の労働基準監督署に相談する方法もあります。行政指導を検討してもらう際は、職場側から前残業を指示されている明確な記録を残しておきましょう。主な例として、就業前に対応した業務内容やメールの履歴、タイムカードの時間などの情報が挙げられます。
法令違反かどうか分からないケースや、労働基準監督署に相談しにくい場合は、各地にある「総合労働相談センター」や労働条件相談「ほっとライン」に連絡してみるのもおすすめです。
「勤務開始後の情報収集をするようになったら、ほかの看護師との折り合いが悪くなった」「病院側に業務体制を見直してもらえなかった」という場合は、前残業の少ない職場へ異動・転職を視野に入れましょう。規模の大きい病院なら、異動によって新しい人間関係を構築できたり、希望に近い働き方を実現できる可能性もあります。職場によっては、看護師として働きながらも前残業がほとんどない環境を見つけることが可能です。
▼関連記事
看護師の賢い働き方を職場別・目的別・状況別に紹介!転職のポイントも解説
現在の職場で前残業を減らすのが難しい場合は、前残業が発生しにくい職場へ転職するのがおすすめです。この項では、前残業が比較的少なめな職場について情報をまとめました。
健診・検診センターでは、受診される方の健康診断や検診の対応がメインとなり、前残業の必要がほとんどありません。1日の予約件数や施設の営業時間が明確に決められているので、イレギュラー対応が少なく、残業も発生しにくいでしょう。健診数の多い繁忙期以外は、落ち着いて業務に取り組めるのが魅力です。
介護施設では身体介助や生活援助、リハビリテーションの提供をメインとしていることから、医療行為による大きな負担がありません。容態が落ち着いており、比較的長く入居・通所している方が中心なので、情報収集のために早く出勤を迫られることはほとんどないでしょう。
介護施設には介護職員が複数人配置されており、医療面や健康状態に関して不安な点があれば情報共有がしやすいのもポイントです。また、デイサービスなら日帰りのため、日勤のみのシフトで働けるのも魅力といえます。
▶「特別養護老人ホーム(特養)」の看護師求人一覧
▶「有料老人ホーム」の看護師求人一覧
▶「デイサービス」の看護師求人一覧
訪問看護では、利用者の情報や医師の指示書を確認したうえで、必要なケアやサービスを行います。提供内容は基本的に大きな変動がないことから、前残業をしなくても訪問の合間に情報収集をすれば、問題なく業務を進められるでしょう。むしろ、利用者さんの健康状態や日常生活で生じている困難などは、訪問してからの確認作業が重要となります。
病院の外来やクリニックでは、その日に来院した患者に都度対応します。予約不可の医療機関の場合、出勤した時点ではどのような症状の患者が来院するか分からないため、情報収集が必要ありません。ただし、前残業がない職場であっても、混雑状況によっては残業が発生する場合もあるので注意が必要です。
保育園で働く看護師の仕事は、園児の健康管理がメインです。看護師の配置人数は1名の園がほとんどのため、交替による引き継ぎ連絡がなく、自分で業務の進行状況を管理できます。園児の健康状態について気になる点があれば、保育士と相談することも可能です。
▼関連記事
看護師が転職先を選ぶ決め手は?理想の職場の探し方とおすすめの求人を解説
ここでは、看護師の前残業に対してよくある疑問について、Q&A形式でお答えします。
医療現場で前残業を完全になくすことは難しいですが、少しでも負担を減らせるよう体制を整えている職場もあります。条件に納得しながら勤務するには、「働き方改革を積極的に行っている」「前残業にも残業代が支払われている」といった環境を調べるのがおすすめです。また、「看護師の前残業が少ない傾向にある職場」で紹介しているように、前残業が発生しにくいところを洗い出しておくと、転職後のミスマッチを避けやすいかもしれません。
前残業をしたくない旨を申告する際は、「どの業務のために、どれくらいの時間を掛けているのか」という現状を振り返りましょう。そのうえで、前残業によって困っている点や、改善してほしい点を明確に伝えることが大切です。同僚と協力し、複数人の意見として相談すると、説得力が増して事実を訴えやすくなります。
多くの職場で看護師の前残業が当たり前になっており、前残業を負担に感じている看護師も少なくありません。前残業の負担を減らすには、勤務が開始してから情報収集の時間を設けたり、病棟・病院に業務体制の見直しを相談したりしてみましょう。介護施設や訪問看護ステーション、クリニックなどのように、早く出勤する必要のない職場に転職すれば、前残業による負担を軽減できるかもしれません。
「前残業がつらい」「職場の悩みを誰かに相談したい」という方は、レバウェル看護を利用してみませんか?看護師に特化した転職支援サービスのレバウェル看護では、キャリアアドバイザーが現状をヒアリングし、働き方やキャリアプランに関する相談に対応します。
ここにしかない職場情報も多数保有しているので、前残業が比較的少ない求人の提案が可能です。働きやすい環境を探したいという看護師は、ぜひお気軽にご登録ください。
記事の制作について
「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。
キャリア
働く場所
選考対策
資格
その他
読みもの
連載