
なんらかの理由で体内の水分が減少してしまう「脱水症」。適切に対処しないと生命に関わることもある危険な状態です。
本記事では看護師であれば必ず理解しておきたい、脱水に関する知識をまとめています。ぜひ最後までご覧ください。

脱水とは、血管内の水分や電解質などが不足している状態のことです。
水分出納において、IN(体内に入ってくる水の量)よりもOUT(体外へ出ていく水の量)が多いと脱水となります。
脱水には以下の3種類があります。
1つずつ解説しますが、内容理解を深めるために一度体液について確認しておきましょう。
人間の体の60%は水分、40%は固形物でできています。さらに水分60%の内訳は、40%が細胞内液、20%が細胞外液(うち15%が間質液、5%が血しょう)です。
細胞内液と細胞外液は細胞膜で隔てられ、細胞膜を介して水などが移動します。
細胞膜は水や尿素をよく通すため細胞内と細胞外間を自由に移動しますが、Na(ナトリウム)やK(カリウム)などの電解質は通しにくい性質をもちます。そのため水分は濃度の低い方から高い方へ移動し、この水分を引き込む力のことを浸透圧と呼びます。
細胞内にはいくつかの陽イオンと陰イオンが存在します。
脱水を理解するうえで大切なのが、ナトリウムです。
Naは約50%が細胞外液に存在しており、浸透圧の調節と細胞外液量の維持を担っています。
浸透圧が変わる原因のほとんどはNaによる影響なので、脱水を理解するうえでNaは重要です。
高張性脱水は、嘔吐や下痢、発汗などにより身体から水分が多量に失われる状態です。「水欠乏性脱水」とも呼ばれます。
細胞外液のナトリウム濃度が上昇するため、浸透圧も上昇します。
尿崩症でも高張性脱水を引き起こしやすいです。腎臓での水の再吸収が障害されて、多量の水分が尿から排出されるためです。

等張性脱水では、嘔吐や下痢、出血や熱傷などにより水とNa両方が失われるため、浸透圧は正常に保たれます。細胞内から細胞外への水の移動を伴わないため、循環血液量の減少が著しくなります。

低張性脱水は発熱や下痢、嘔吐などにより、水分よりも電解質が多く失われる状態で「ナトリウム欠乏性脱水」とも呼びます。浸透圧は低くなります。

脱水の症状は、水分がどれだけ失われたかによって異なります。
以下に、失った水分量とそれに伴って出現する可能性のある症状について示します。
| 水分損失量 | 症状例 |
| 1% | 大量の発汗、口渇感 |
| 2% | 強い口渇感、めまい、頭痛、ふらつき、吐き気、食欲不振、尿量減少、ぼんやりする、重苦しい |
| 4% | 全身脱力感、皮膚の紅潮化、疲労感、吐き気、感情鈍麻 |
| 6% | 手足の振戦、ふらつき、頭痛、体温上昇、脈拍数上昇、呼吸数上昇 |
| 8% | 呼吸困難、めまい、言語不明瞭、チアノーゼ、錯乱、幻覚 |
| 10%~12% | 筋痙攣、ロンベルグ徴候、失神、舌の膨張、興奮状態、不眠、循環不全、血液減少、腎不全 |
| 15%~17% | 嚥下不能、目の前が暗くなる、排尿痛、聴力損失、皮膚の感覚鈍麻、舌のしびれ、眼瞼硬直 |
| 18% | 皮膚のひび割れ、尿生成の停止 |
| 20% | 生命の危機、死亡 |
また、小児や高齢者、高血圧や心臓病、腎臓病などの既往がある人は脱水のリスクが高いことも覚えておきましょう。
小児は腎機能が成熟しきっていないことや発汗量が多いこと、また高齢者は成人よりももともとの体内の水分量が少ないことや加齢に伴い口渇を感じにくくなることなどが脱水をきたしやすい原因です。
本章では、脱水の診断と治療について解説します。
脱水は、症状や診察結果で診断されます。
皮膚の張りがない(ツルゴール※の低下)、バイタルサイン値の変化(血圧低下、脈拍上昇)などは、看護師であっても脱水を発見しやすい所見です。
※ツルゴール:
手背や胸骨上の皮膚をつまんで放した後、2秒以内にシワが消えるのがツルゴール正常。元の状態に戻らずシワが残った状態ならツルゴールが低下する、と言います。
血液検査ではNa値の変化が見られ、高張性脱水では上昇して、低張性脱水では低下します。
また血液が濃縮されることによって、赤血球数やヘモグロビン値、アルブミン、総蛋白、クレアチニンなどは上昇することがあります。
下痢や嘔吐が原因で起きている脱水の場合、NaだけでなくKやClなどの電解質も低下しやすいです。
脱水が進行すると腎臓で十分な尿が作れずに老廃物が溜まるため、腎臓に不可逆的なダメージが加わってしまうこともあります。
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治療の基本は、不足した体液を輸液や飲水で補うことです。
飲水が可能であれば、経口補水液(OS-1)などを脱水状態に合わせて飲みます。医師の指示に従いましょう。
飲水が困難な場合や、飲水では脱水の補正が追いつかない場合には輸液を行います。
選択される輸液は、脱水の種類により異なります。
| 脱水の種類 | 治療 | 薬剤例 |
| 高張性脱水 | 細胞内液の補充 | 低張電解質輸液 ・5%ブドウ糖溶液 ・2号液など |
| 等張性脱水 | 細胞外液の補充 | 等張電解質輸液 ・リンゲル液 ・生理食塩液など ※重症の場合はNa濃度の高い高張食塩液から開始する |
| 低張性脱水 | 細胞外液の補充 | 低張電解質輸液 ・生理食塩液 ・リンゲル液 ・生理食塩液 ※重症の場合はNa濃度の高い高張食塩液から開始する |
水・電解質補給に用いられる輸液には、等張電解質輸液と、ブドウ糖を付加した低張電解質輸液の2種類があります。
等張性電解質輸液は、生理食塩液や乳酸リンゲル液・酢酸リンゲル液などのことで、体液と浸透圧が等しいため細胞外液の補給ができます。
一方低張電解質輸液は、ブドウ糖が配合された体液より浸透圧が低い輸液です。細胞内液を含む体全体に水分を補給でき、1号~4号までの4つに分けられます。
| 1号液(開始液) | 0.9%の生理食塩水を水で半分に薄めたもの。 病態不明時の水分・電解質補給に投与する。 Kを含まず、腎機能障害のある患者さんに対しても使用できる。 |
| 2号液(脱水補給液) | 低張性脱水に用いる。 Na・Clの含有量は1号液と同等。KやP(リン)も含む。 腎機能障害や高K血症には投与しない。 |
| 3号液(維持液) | 最も良く使われる。 1日に必要な水・電解質の補給に用いる。 |
| 4号液(術後回復液) | 電解質濃度が低く、細胞内への水分補給に使う。 |
どの輸液製剤にしても、不足した水分を補うために急速投与してしまうと心臓への負担が大きくなるため、医師の指示のもと、輸液の投与量や投与速度が患者さんにとって適切かどうかを判断して投与することが重要です。
心臓への負担が大きくなることを「心負荷の増大」といいます。心不全などの心血管系の既往がある患者さんでは、左室の心拍出力(心臓から全身に血液を送り出す力)が低下していることがあります。そのような状態で輸液を急速投与すると、増加した循環血液量に左室のパワーが追いつかず、さらに心不全が進行してしまうことがあります。
このような患者さんに輸液を投与する場合には、より一層INOUTバランスに注意が必要です。

ここでは、「#下痢・嘔吐により水・電解質が不足する可能性がある」という看護問題に対し「水・電解質が補給され、脱水症状が改善する」という看護目標を立案した例を想定した看護計画をご紹介します。ご紹介するのはあくまでも一例のため、患者さんの状態に合わせた看護を行いましょう。
・バイタルサイン(体温、脈拍、呼吸、血圧)
・皮膚の乾燥、ツルゴール
・脳神経症状(意識レベル、精神状態、痙攣、麻痺、嚥下障害など)
・下痢と嘔吐の程度と頻度
・IN-OUTバランス
・尿量
・尿性状
・口渇感
・倦怠感
・血液検査データ:赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血清タンパク、アルブミン、クレアチニンなどの上昇、Naの上昇あるいは低下
・医師の指示のもと、適切な輸液管理を行う
・輸液が確実に投与できるよう、点滴の漏れに注意する
・点滴の固定を十分にする
・飲水可能な場合は、こまめに飲水を促す
・IN-OUTバランスにおいてOUTバランスが続く場合は医師へ報告する
・下痢や嘔吐の悪化があれば医師に報告し、輸液量について相談する
・輸液療法の必要性について指導し理解してもらう
・飲水可能な場合は、少量ずつこまめに飲水してもらうよう指導する
症状が辛い時は無理をしないが、落ち着いたタイミングがあれば頑張って飲水してもらう
・患者さんが自覚しやすい脱水症状(口渇感や倦怠感、頭痛、めまいなど)について指導し、それらの症状があれば看護師に知らせてもらう
・輸液などによりある程度脱水が補正された後も、再度脱水傾向とならないよう飲水の必要性を説明する
・下痢や嘔吐などの症状が悪化したと感じたら、看護師に知らせてもらう
本記事では、脱水とその看護について解説しました。
脱水はごく軽度で済むものもあれば、重症の場合は生命が脅かされる状態にまで陥ってしまうこともある、大変怖い病態です。
入院してからも、治療が遅れると脱水症状が進行してしまうことがあります。
脱水により起こり得る症状はしっかりと理解しておきましょう。
また患者さんが3つの種類のうちのどのタイプの脱水になっているのか、そしてどのような治療がされるのかを十分に理解し、ケアを提供しましょう。
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