
高額療養費制度の負担上限額が、2025年8月から引き上げられることが決まりました(※後日追記:8月の引き上げに関しては、一旦見送りとなりました。2025年の秋頃に方針が決まるようです)。
看護師として働いていると、患者さんの金銭面の悩みや社会的背景に直面することも少なくありません。悔しそうに「金銭的に厳しいんで、諦めます…」って言う患者さんに出会ってきました。
本記事では、今まさに世間を賑わせているこの制度変更について、医療者目線で考えてみます。
まず高額療養費制度についてざっくり説明すると…
保険適用の治療で、1ヶ月に支払った医療費が高額になった場合に、上限額を超えた分が払い戻される制度です。
上限額は以下のように、年収によって変わってきます。
| 適用区分 | 1ヶ月の上限額(世帯ごと) |
| ア:年収約1,160万円~ | 約25万3,000円 |
| イ:年収約770~約1,160万円 | 約16万7,000円 |
| ウ:年収約370~約770万円 | 約8万円 |
| エ:~年収約370万円 | 5万7,600円 |
| オ:住民税非課税者 | 1万5,000円~3万5,400円 |
たとえば、長期的に抗がん剤などの治療が必要ながん患者さんたちは、毎月この負担額を払っています(※4ヶ月以降は少し安くなります)。
どんなに高額な手術を受けても、保険適用の治療ならば高額療養費制度が適用されて、一定額で済むわけです。
…という世界に誇れる国民皆保険制度ですが、この負担額の上限が、段階的にではありますが、今年2025年の8月から引き上げられることが検討されています。
▼直近、2025年8月での変更予定額がこちら。
| 適用区分 | 2025年8月から |
| ア:年収約1,160万円~ | 約29万円 |
| イ:年収約770~約1,160万円 | 約18万8,000円 |
| ウ:年収約370~約770万円 | 約8万8,000円 |
| エ:~年収約370万円 | 6万600円 |
| オ:住民税非課税者 | 1万5,400円~3万6,300円 |
たとえば世帯年収が「ア:年収約1,160万円~」に該当する場合は現状よりも1ヶ月の負担額上限が約3万7,000円、「イ:年収約770~約1,160万円」に該当する場合は約2万1,000円上がります。
これが、2027年までにさらに上がっていく見込みです。
このニュースを見た時、真っ先に頭に浮かんだのはがん患者さんたちのことでした。
大きな病気をしないと普段は意識しないかもしれないけど、みんなが思ってる以上に、医療現場では、高額な治療費用を払っている患者さんに出会うんです。難病患者さんや、慢性的な長い付き合いになる膠原病、リウマチの患者さんとかね。
たとえばがん患者さんで、年収区分=イ(年収約770~約1,160万円)の場合の支払い額を考えてみます。
がん治療で、1ヶ月にかかった総医療費が100万円だとします。
3割負担の方が支払う金額は本来30万円ですが、高額療養費制度を使うと、1ヶ月の自己負担額は約16万7,000円に抑えられます。
これが2025年の8月以降は、約18万8,000円を負担することになるイメージです。2026年8月からは、上限額がさらに上がる見込みです…。
「4ヶ月目以降は負担額が安くなるじゃん」とか思う人もいるかもしれないけど、4ヶ月どころか、実際は治療がずっと続くこともあるんですよ。そんな方々の救済措置である高額療養費制度が大改悪。
もう、意味が分かりません。悲しいです。
実は私の父は元がん患者だったのですが…(奇跡的に手術と補助化学療法で完治しました)、思いっきり、高額療養費制度に助けられた人です。
父が内服していた抗がん剤は、当時最新のもの。1ヶ月の薬代は10万円以上だったそうです。
父の場合は高額療養費制度を使えた上に、民間がん保険に入っていたためどうにかなりましたが、それでも母は「5年間ヒヤヒヤしていた」と言っていました。
もし高額療養費制度が無かったら、父は治療を受けられず、命を諦めていたかもしれない。
このように、働き盛りの世代にとっての大病は、本人だけでなく、家族への影響も大きいんです。
今までに出会った患者さんの例から考えてみます。
現に病棟で働いてるとき、検温にまわったら、涙目でスマホの家族写真を眺めている患者さんがいて。
「どうしました…?」って声を掛けたら「治療を続けたいけど、自分の医療費が家計を圧迫してるから、申し訳なくて…」って涙ながらに話してくれたことがありました。
病気が分かって仕事を辞めたから、旦那さんの稼ぎ一本になった。先の見えない治療、毎月かかる高額療養費負担額マックスの支払い、育ち盛りの子どもたち、これから掛かる学費…それを考えたら「治療を諦めなきゃいけない…?」って気持ちになってしまったんだとか…。
ほかには、「毎月の医療費が負担だから…もう、治療は辞めて好きなことをして生きる。限界になったら緩和医療だけは受けたい」と言って、高額な鎮痛剤や処置などの治療を諦めてしまった患者さんにも出会ったことがあります。
一方で、「高額療養費制度のおかげで治療を続けられて…無事に病気が治りました!」って笑顔で話してくれる患者さんにも出会うことがあって。この言葉を聞くたびに嬉しくなります。
恐らく読者の看護師さんの中にも、同じような場面を経験したことがある人はいるんじゃないでしょうか。
今回の制度変更では、世帯年収の高い家庭ほど、自己負担額上限の上昇幅が大きいです。稼げば稼ぐほど自己負担額も上がって…、結果、治療を諦めなきゃいけない人も出てくる。
こんなのって、無いよ。おかしいよ。
現段階でもそんな理不尽な光景を目にしてるのに、これからそんな患者さんがもっと増えるってこと…?そう思うと、不安で仕方ないです。
「世帯年収が1,000万もあるなら、高額療養費の自己負担額くらい余裕で払えるでしょ」そう考える人もいるかもしれない。
でも、それは違うと思ってます。頑張って稼いで税金もたくさん払って社会貢献しているのに、良い治療が受けられないのはなぜでしょうか?
収入が高ければ、その分、税金も高い。子どもがいれば養育費も教育費もかかる。家のローンだってあるかもしれない。たとえ1,000万稼いでても、高額療養費の引き上げですぐに生活が破綻してしまう。
これって、頑張れば頑張るほど損するシステムになっていますよね!?そんなの生産性が落ちる一方だし、このままじゃ、日本はますます後進国になっていくだけじゃないかな。
私は、高額療養費制度は現状のまま変わらないでほしいです。
むしろ、4ヶ月目以降に自己負担額が軽くなる仕組みだって、長期治療が必要な方のためにもっと手厚くしてほしい。たとえば治療期間が半年を超えたら、限度額が半分くらいになったらな…と思います。
さらに言ってしまえば、生活保護受給者の医療費無料もそろそろやめてもらいたい、というのが本音です…。
とは言え…医療現場にいると、医療資源が無限ではないってことも分かるんです。
実際、私が働いている病院では、経費削減の波が広がっています。
やたらと医療資材のお試し品を使うように言われて、「あのメーカーの防水テープの開け口はこっちだけど、このメーカーの防水テープはこっち」とか、「ディスポの生食ロックシリンジはコストが高いから…」って、わざわざ500mlの生理食塩水ボトルから生食ロックシリンジを作成したこともあるほどです。
人員削減も進んでいて、「日本の医療は安全」と言い切れない瞬間が増えてきた昨今。
「医療現場が好きで、看護師の仕事が好きで頑張ってるのに。」「患者さんの笑顔が見たいのに…。」そんなことを思うときがあります。
皆さんは、高額療養費制度の変更についてどう思いますか?
医療従事者も、そうでない方も、ぜひコメントをお待ちしています。
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さんふらわあ
2025年3月4日 11:11
一時は凍結になったけど結局決定なんですかね?子ども手当なかったりや保育園料が高かったり、税金も高いし本当に高所得世帯の負担が多すぎる…!!働き損!?
poyoo
2025年3月18日 13:55
仕方ないと思っている人って、上限金額しかかからないって多分思ってますよね。そこに足されて、入院したらその準備とか差額ベッド代金、食事代、テレビ代などもかかって嵩むのに。月をまたぐか?で上限に至らないとかのトラップだってある。病気しないと分からない部分は多いのかもしれません