
「2025年問題により看護師が余る」という話を聞いたことがある方もいるでしょう。一般的には人手不足だといわれる看護師業界において、そのようなことがあるのか疑問に感じる方も多いかもしれません。2025年問題への対応のため、急性期病棟から在宅医療への移行が進む中で、一部の職場で看護師が余る可能性もあるようです。
この記事では、公的なデータを参照しながら「2025年問題」や「医療・介護分野の変革」、「将来的な看護師の需要」について解説していきます。2025年問題に対して看護師が自分でできることも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
2025年問題とは、第一次ベビーブーム(1947年~1949年)のときに生まれた「団塊の世代」の方々が後期高齢者(75歳以上)となり、医療・福祉・雇用のほかあらゆる産業に大きな影響を与えるとされる問題です。
「令和4年版厚生労働白書(概要)6p」によると、2020年時点で65歳以上の方の割合は29%にのぼり、日本は超高齢社会といわれています。2025年には後期高齢者の割合が約18%に達すると推定されており、社会保障費の急増や医療・介護分野での人手不足が見込まれるでしょう。
ここでは、「2025年問題で看護師が余る」といわれた経緯や理由を解説します。
2014年に、医療コンサルティング会社「グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン」が、「2025年に14万人の看護師が余る」との試算を発表しました。この試算は、「平成26年度診療報酬改定」に基づくものでした。
同改定では、2025年問題に関する本格的な検討がなされ、医療分野におけるさまざまな取り組みの方針が定められました。内容を一部抜粋すると、在宅医療の強化や、病床の機能分担の明確化、病床の再編の目標などが挙げられます。
つまり、上記の試算は「改定で定められた抜本的な方針を実行すれば、医療体制の変化に伴い、将来的に看護師が14万人余る事態になる」と指摘するものでした。
前述の診療報酬改定では、高度急性期・一般急性期の病床の削減する方針も示されています。当時は、診療報酬が高い「7対1」の急性期病床が増え過ぎている状態とされており、病床再編を行って需要の見込まれる回復期病床・地域包括ケア病床の割合を増やす方針が固められました。
つまり、試算において「余る」とされた14万人の看護師は、同改定によって削減が決められた急性期病床で働く方を指していたのです。
実際に、急性期病床の数は減少してきています。厚生労働省の「地域医療構想、医療計画について(23p)」によると、2015年から2020年にかけて、高度急性期病・急性期の病床は約76.5万床から約70.3万床に減少しました。一方、回復期病床は約13.0万床から約18.9万床に増えています。確かに、急性期病棟の削減に伴って看護師が余る可能性もありますが、徐々に配置換えが行われているため、職を失う看護師が急増することは考えにくいでしょう。
2025年問題により、全体として看護師の需要は高まると考えられます。その理由は、主に以下の4点です。
後期高齢者の増加に伴い、慢性疾患や生活習慣病、認知症などの患者さんも増加すると予想されます。長期的に医療を必要とする方や、複数の疾患がある方が増える分、看護師の需要も高まるでしょう。
後期高齢者が増加すると、亡くなる方の数も増える傾向にあります。これまで看取りを行ってきた病院や施設、在宅医療の事業者だけでは対応しきれなくなり、看取りの場が多様化することも考えられるでしょう。看取りに対応するために、より多くの看護師を必要とする職場も増えると予想されます。
高齢者の割合が高まって医療ニーズが増加する一方で、社会保障制度を維持するには、医療費の削減も必要です。そのため診療報酬改定では、病院病床を減らす代わりに在宅医療が重視されるようになりました。高齢の方が地域で暮らせるようにサポートする介護施設や訪問看護ステーションの役割は今後さらに大きくなり、看護師求人も増加していくでしょう。
また、健康寿命を延ばすには、予防医療に力を入れることも必要です。自治体や企業、学校などで健康維持・疾病予防のための取り組みが行われており、予防医療に従事する看護師も求められています。
核家族化に伴う高齢者単身世帯の増加や現役世代の減少により、高齢の方の療養生活をサポートできる家族は減ってきています。そのうえ、少子化のため新たな医療の担い手も増えにくく、医療業界の人手不足は進行すると考えられるでしょう。
厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ案(概要)2p」によると、2025年に必要な看護職員(保健師・助産師・看護師・准看護師)の人数は「188万人~202万人」と推定されています。
一方、2022年に就業している看護職員数は、厚生労働省「令和4年度衛生行政報告例(隔年報 付表)」によると約166万人でした。保健師・助産師・看護師・准看護師の人数の推移については、以下の表をご覧ください。
| 就業医療関係者数 | 保健師 | 助産師 | 看護師 | 准看護師 | 合計 |
| 2016年 | 51,280 | 35,774 | 114,9397 | 323,111 | 1,559,562 |
| 2018年 | 52,955 | 36,911 | 121,8606 | 304,479 | 1,612,951 |
| 2020年 | 55,595 | 37,940 | 128,0911 | 284,589 | 1,659,035 |
| 2022年 | 60,299 | 38,063 | 131,1687 | 254,329 | 1,664,378 |
2020年~2022年に増加した4職種の人数は約5千人で、増加のペースが落ちているといえるでしょう。2025年には厚生労働省が推定した必要人数に満たないと推測されます。
准看護師は、毎年減少する傾向にあるようです。准看護師資格に関して、正看護師との一本化や、棲み分けなどさまざまな検討がなされていることから、今後の方針次第では事情が大きく変化する場合もあるでしょう。
また、人手不足の影響により、職場でICT化やロボット導入が進む可能性もあります。もし看護師の需要が減るとすれば、ICT化による部分的な影響が考えられるでしょう。
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2025年問題への対策として、政府や地域は医療・介護分野で次のような取り組みを進めています。看護師と関わりが深い内容を中心に確認していきましょう。
厚生労働省は、ご高齢の方が住み慣れた地域で自分らしく暮らせるような支援体制「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。各自治体が地域の特性に合わせ、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する体制を実現するのが目標です。
限られた医療資源を効率良く投入するために、地域医療構想による病床機能の再編が進められています。地域医療構想とは、2025年に必要となる病床数を4つの医療機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)ごとに推計したうえで、「地域医療構想調整会議」にて医療機関の役割分担と連携について協議する取り組みです。たとえば、医療機能の低下した急性期病床を他病院の病床と併せて病床数を減らしたり、回復期病棟に変更したりして、地域全体の医療機能の向上を図っています。慢性期病床は在宅医療への移行が進んでおり、減少する傾向にあるようです。
看護師として就業する方を増やすため、新規養成・離職防止・復職支援の3つを推進しています。厚生労働省がまとめた「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」によると、ナースセンターと連携した潜在看護師の復職支援や、処遇の改善、看護師の資質向上のための研修などを実施。人材養成・確保を目的とした地域の事業の支援も行っています。
人手不足の中、医療従事者が健康を保ちながら働き続けるには、勤務環境を改善して負担を減らすことも重要です。
日本看護協会は国の「働き方改革」を受けて「就業継続が可能な看護職の働き方の提案」を発表しました。内容は勤務間インターバルの確保、時間外労働の削減、評価・処遇改善、暴力・ハラスメントの防止などです。看護師の働き方改革は、離職防止にもつながると期待されており、積極的に導入する職場も増えてきています。
社会保障制度を維持するためには、医療の効率化・適正化により、コストを削減することが必要です。前述した在宅医療の推進や7対1病床の見直しに加え、医薬品の適正使用・価格適正化、重症化の予防、介護保険制度・医療費における患者負担率の検討などが行われています。
2025年問題に対処するため、医療分野では大規模な変革が進行しています。「看護師として自分にできることはないか」「今後安定して働くには何をしたら良いか」と考えている方もいるでしょう。以下に看護師個人ができることをまとめたので、ヒントにしてみてください。
特にニーズが高まると考えられている慢性疾患や緩和ケア、在宅ケア分野について学んでおくと、活躍の場が広がるでしょう。
また、替えが利きにくい、専門的な強みがあれば、周囲の環境が変化しても一定の需要が見込まれます。たとえば、特定行為研修を受講したり、診療看護師(NP)の資格を取得したりすると、医師の判断を待たずに特定の医療行為を行えるようになるため、医師が近くにいない現場でも力を発揮できるでしょう。
専門看護師や認定看護師の資格を取得すると、キャリアアップできるうえ、給料アップの可能性もあります。ケアマネジャーや救急救命士なども、看護師が取得する資格として人気です。
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医療に関する国や地域の方針や、看護師の需要が高い分野は、今後も変化していくと考えられます。新たな情報に関心を払い、変化を見据えたキャリアプランを立てていくことが看護師としての活躍にもつながるでしょう。
医療従事者の人手不足解消や業務の効率化のため、ITCの活用を図る職場が増えてきています。たとえば、オンライン診療や電子お薬手帳、介護ロボット、見守りセンサーなどを導入している職場も。パソコンの基本操作や新しい機器の使用方法を学び、ICTを使いこなしていくことが円滑に業務を行ううえで重要になるでしょう。
在宅復帰の支援やリハビリを重視する地域包括的ケア病棟・回復期病棟は増え続けています。これらの病棟で退院支援やリハビリのサポートに携われば、在宅医療に関する知識も身につきやすくなり、幅広いニーズに対応できる看護師を目指せるでしょう。
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看護師の需要が増えている訪問看護や予防看護の職場に目を向けることも有効です。日本看護協会「2022年度 『ナースセンター登録データに基づく看護職の 求職・求人・就職に関する分析』 結果(13p)」によると、訪問看護ステーションの求人倍率は3.88倍でした。この求人倍率は、1人の求職者に対し3.88件の求人があることを意味しています。訪問看護ステーションの求人倍率は病院や介護施設など、ほかの施設形態を大きく上回っており、就業のチャンスが多いといえるでしょう。
予防医療に携われる職場としては、企業や福祉施設があります。看護師としての知識や経験を生かし、医薬品・医療機器メーカーやヘルスケア関連の企業などで活躍するのも一つの方法です。
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ここでは、2025年問題で看護師が余るのか心配な方からの質問に回答しています。
少子化の影響もあり、新たな看護師の養成が需要に追いついていない状況が続いています。今後さらに高齢化が進み、医療を必要とする人の割合が増えると考えられているため、将来看護師が余る可能性は低いといえるでしょう。
より専門的な知識を身につけることや、ICTへの対応が求められるでしょう。需要が高まっている在宅医療分野や回復期病棟に目を向けると、活躍の場が広がります。在宅医療に携わる際には、ご家族の支援や心理的サポートも重要です。詳細は本記事の「看護師が2025年問題に対して自分でできること」をご確認ください。
2025年問題とは、団塊の世代が後期高齢者となり、医療・福祉・雇用のほかあらゆる産業に大きな影響を与える問題のことです。
2025年問題により一部の急性期病棟では看護師が余る可能性はありますが、回復期病棟や訪問看護ステーション、介護施設などで看護師の需要が高まっており、全体として看護師は不足する傾向にあります。
2025年問題に向けた医療・介護分野での対策としては、地域包括ケアシステムの構築や病床再編、人材確保、社会保障費の見直しなどが進行中です。
看護師が自分でできることとして、専門的な知識の学習や資格取得、ICTスキルの向上などが考えられます。回復期病棟や地域包括ケア病棟、訪問・予防看護の職場に目を向けるのも良いでしょう。
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