
「もし自分や家族が末期がんと診断されたとして、最期を迎えたい場所はどこですか?」そう聞かれたら、あなたはどう考えるだろうか。
厚労省の「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査報告書」によると、「病気で治る見込みがない場合に、最期を迎えたい場所」で「自宅」を選んだ一般国民は43.8%で1位、続いて2位が「医療機関」で41.6%だった。
確かに、病棟や外来で働いている看護師さんは、「最期は在宅で」とか「家族を在宅で看取りたい」と言われた経験が一度はあるんじゃないかな。
実際の状況を調べてみた。厚労省の「人生の最終段階における医療・介護参考資料」によると、「死亡の場所の推移」については、「病院・診療所」が6割以上を占めており、「自宅」は上昇傾向にはあるものの2021年の段階では2割に留まっているようだ。
在宅で看取るべきか、病院が良いか。終末期を過ごす場所の選び方に関して、みんなと語りたい。
私はこれまでの看護師キャリアのほとんどが病院勤務なのだけど、「患者さんが、自宅でどんなふうに暮らしているのか?」が気になって、一度派遣看護師として訪問看護や訪問入浴で働いた時期がある。
そのとき気付いた“病棟と在宅の違い”をまとめてみたい。
まず大きく違うのは、時間の流れ方だ。
病院では、清潔ケアは「午前中」もしくは「昼ご飯の後すぐ」やるといったルールがある。でも在宅では、清潔ケアや処置の時間は、利用者さんの生活スタイルにある程度合わせた計画になっていた。
物品の充実度も異なる。病院では、体位交換クッションや移乗時のスライダー、除圧マットなどが一通り揃っている。でも在宅では、そうした物品がない家庭も多い。金銭的に余裕があるとは限らないからだ。
代わりに、家庭ごとのオリジナルな工夫が見られることもあった。忘れられないのは、患者をベッド上で持ち上げる際に、スライダー代わりに大きなゴミ袋を引いて滑らせる方法や、ギャッジアップしたときに枕がずり落ちないように紐で固定する方法だ。「なるほど~!こんな工夫ができるのね!」と感動したのを覚えている(笑)。
在宅では利用者さんのスタイルに合わせて、工夫しながらケアを行う。そんな違いを肌で感じた。
一概には言えないが、患者の満足度も違うんじゃないかと思う。
訪問看護の利用者さんって、みんな綺麗なの。お肌がツヤツヤに保湿され、良い表情をされている方が多い。病棟に長くいる患者さん特有の匂いも、在宅療養中の方にはあまり感じられなかった。

そりゃそうだよね。在宅医療では、患者と「1対1」で向き合う時間が確保されているから。病棟みたいに複数の患者をケアするのではなく、じっくり寄り添える。素敵な仕事だなぁ…なんて感じた。もちろん家族側の懸命なケアもあってこそだと思うけどね。
それに私の経験上、「家で看取らなきゃ良かった!」と後悔する家族に出会ったことがない。
在宅に移行してしばらくして亡くなった後、家族が病棟や外来に寄って、晴れやかな顔で報告してくれる。
「無事に見送れました」
「家に帰ってから元気になって大好きなペットにも会えて」
「◯◯も行けたんですよ!」
そんな話を聞くたびに、私も頑張らなきゃな!と励まされるのだった。
とはいえ、在宅療養は家族の覚悟・準備がないとやっぱり難しい。
いくら自宅に医師や看護師が来るとはいえ、家族も胃ろうや高カロリー輸液の管理を覚えなきゃいけないから。それを伝えると「そんなの無理です。入院でお願いします!」って答える家族も多いのが現実だ。
実際、私の親がそうだった。
祖父が入院していたときに、「死ぬ前に祖母の仏壇を綺麗にしたい」と自宅に帰りたがっていた。でも祖父は中心静脈栄養(CV)挿入中で、私は管理できるから外泊させたかったのだけど…母は「そんな医療機械つけてたら入院してなきゃ無理!」の一点張り。

結局祖父の願いは叶わず、病院のベッドで亡くなった。面会制限もあって、誰にも看取られることなく静かに息を引き取った。少し前まで「みんなで自宅に帰って、コーヒーでも飲みたいな」って話していたのにね。母は未だにこのときの決断を後悔している。
そもそも、「在宅看護」って言葉にすると構えてしまうけれど、昔のドラマや映画で見なかっただろうか?布団の上に横たわる人に医師が聴診器を当てて「ご臨終です」って伝えて、家族がすすり泣くシーン。昔は家で人が亡くなる事が当たり前だった。ここ数十年のことだよ、人が病院で死ぬことが普通になったのは。
看護師としてインフォームドコンセントに何度も立ち会って思うんだけど、「死ぬことイコール良くないこと」って考えている人が多い。生まれた瞬間から、人は死ぬことが決まってるのにね。
だから昔のように、死は自然なものという考えが広まらない限り、「最期の時間を家で過ごす」選択を取れない人も多いままじゃないかな。
在宅看護の難しさは、受け入れ側に限った問題ではない。
看護師資格で開業できることもあってか、近年、“理想の看護”を追って訪問看護ステーションを立ち上げる人が増えている。私の友達でも2人、ステーションを立ち上げた子がいるんだけど、面接に来る看護師さんは、「病棟の夜勤や不規則なシフトから逃れたい」って理由が多いみたい。
そんな事情から、おのずと「365日24時間対応」じゃない訪問看護ステーションが生まれる。だから患者が在宅に移行しても、夜間や土日祝日に対応してくれるステーションがなくて、結局、後方支援病院に運ばれてくるというオチだ。
それに、国は在宅医療を推進しているけれど、訪問看護・訪問介護って本当にギリギリの人数で回しているからね。1人体制だからもちろん危険もあるし…。
こんなふうに、制度面での難しさはまだまだある。
訪問看護をやって、「何て良い仕事なんだろう…在宅医療…!」なんて思った私だけど、それでも今は病院で働いている。これには理由がある。
患者や家族が「在宅療養をしよう」って思えるまでのサポートが、私たち病院(病棟)で働く看護師の力の見せどころだと思ったから。
もし何の準備もなしに在宅に移行したら、何かトラブルが起こったとき家族がパニックになっちゃって、救急車を呼んで…結局、望まない形で病院で亡くなる、みたいなことってあるよね。
そうならないために、入院中にちゃんと準備して、訪問看護や訪問診療にしっかり繋いで、安心して在宅医療を受けられるようにする。そして、自宅で最期を迎えてもらう。
最期の瞬間だけでなくて、それを受け入れられるまでのケアも、私たち医療従事者の大切な役割なんだと思う。

看護師さんの大半って、新卒で病棟に就職すると思うけど、やっぱり病棟経験だけだと見えないことも多い。一歩外へ出てみると(たとえば在宅看護の世界ね)、病棟で見てきた患者って普段はこんな生活してるんだ…とか見えてきて、視野が一気に広がるはずだ。私も経験してみて初めて、病院と在宅、それぞれの良さに気づいたから。
だからこそ、派遣でも転職でも何でも良い、一度は外の世界を経験してみるのも、看護師キャリアにとって良いことかもしれないね。
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まど
2025年3月19日 18:28
80代の祖母が、家からすぐの老人ホームに入所したばかりです。「家で看取らなきゃよかった」と後悔する家族がいないという言葉が印象に残りました。それだけ、家族が納得する看取りができるケースが多いってことですよね。でもいざ自分の家族となると、決断は簡単じゃないなと・・