看護師は退職金をいくら貰える?知っておきたい算定方法や相場を徹底解説!

2022.8.16

コインとペン、電卓のイメージ

「退職金が貰えるのか」「貰えるとしたらいくらなのか」と気になっている看護師の方も多いはず。そんな疑問に答えるべく、このコラムでは看護師の退職金制度について詳しく解説していきます。
一般的に、退職時、大金が一括で貰えるイメージのある退職金。労働者であればその金額に期待してしまうものでしょう。しかし、実は退職金制度は事業所によってさまざまで、必ずしも期待した額が貰えるとは限らないのです。

退職金について

退職金とは、労働者が退職時に受け取ることのできる金銭のことです。
まずは退職金制度について詳しく確認してみましょう。

退職金の受け取り方は主に3種類

退職金にはさまざまな種類があり、法人によって採用している制度が異なります。
本項では看護師が退職金を受け取る主な方法を3つ紹介しましょう。

退職一時金制度

退職時に退職金が一括で支払われる制度です。金額は就業規定に応じます。現在、最も普及している、一般的な退職金の受け取り方法です。

企業年金制度

退職金を、一括ではなく年金として受け取れる制度です。先の退職一時金制度と併用している法人もあります。

前払い制度

退職時に支給が無い代わりに、給与や賞与に退職金相当額が上乗せされる制度です。手取りが増えるメリットがありますが、税金や社会保険料が多くなりがちなデメリットもあります。

退職金と退職金共済の違い

「退職金」は、企業から直接支払われるものです。一方、「退職共済金」は企業が共済に掛金を納付し、労働者は共済から退職金を受け取れる仕組みを指します。大企業は退職金を、中小企業は退職金共済(中小企業退職金共済)を利用するのが一般的です。また両制度を併用することもあります。
退職共済金は、支給元が共済機関であるため、企業の倒産や経営状況の悪化に退職金の額が左右されにくいという特徴があります。

退職金が支払われないこともある

そもそも退職金制度は法律に定められたものではありません。退職金制度が無い職場もあります。
労働基準法には、退職金制度がある場合、就業規則にその旨を記載することが規定されていますが「退職金制度を設けなくてはいけない」とは規定していません。そのため、退職金の有無について就業先へ確認しておきましょう。

ほかにも、就業規則に定められた勤務年数に達しない場合や、懲戒解雇された場合には、退職金が支払われないケースもあります。

退職金制度のある企業の割合

厚生労働省の就労条件総合調査によると、退職金制度のある企業は全体の“80.5%”でした。内訳をみると、従業員数別に以下のような割合です。

  • 1,000人以上:92.3%
  • 300~999人:91.8%
  • 100~299人:84.9%
  • 30~99人:77.6%

このように、従業員規模の縮小とともに退職金制度の割合が低下しています。従業員の多い企業ほど、退職金制度が充実しているようです。

なお、産業区分「医療・福祉」でみると、退職金制度のある企業は“87.3%”でした。医療・福祉業界の退職金制度は、比較的整備されているようです。他方で、サービス業や運輸業ではこの割合が低くなっています。

退職金をもらうには

まずは退職金制度があるか就業規則や賃金規則を確認しましょう。退職金制度があれば、明記されています。
次に、自分が退職金を受け取れる条件を満たしているか確認しましょう。退職金の支払い条件は主に勤続年数ですが、ほかにも退職事由によって金額が違うこともあるので詳細の確認が必要です。

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看護師の退職金が“ある病院”と“ない病院”がある?

看護師の退職金制度は、一般企業と同様に、ある場合とない場合があります。
それでは、どのような事業所に退職金制度が設けられているのでしょうか。雇用形態や設置主体別による退職金制度の有無について解説します。

看護師の雇用形態による退職金の有無

看護師の退職金の有無は、雇用形態によっても分かれます。正規職員であれば、退職金制度は充実していることが多いでしょう。しかし、夜勤専従看護師などの非常勤やアルバイトで働く看護師の場合、退職金制度が適用されないことがほとんどです。

退職金制度のある病院の特徴

退職金制度の整っている医療機関には、以下のようなものが挙げられます。

  • 設置主体が国公立の病院
  • 地方自治体などが運営している病院
  • 地方都市の中核を担う大型医療施設
  • 福利厚生の手厚い都市部の美容クリニック など

とくに国公立や地方自治体の運営する病院では、ほとんどの場合で退職金制度が設けられているでしょう。一方、小規模な診療所やクリニックには退職金制度がないこともしばしば。
今後、退職金のある病院で働きたい看護師の方は、ぜひ参考にしてください。

看護師の退職金の算定方法・事例

看護師の退職金制度は事業所によって異なるため、調べたい場合は自身の就業規則を確認する必要があります。
ただし、退職金(一時金)の算定にはいくつかの基本的なタイプがあるので、その中でも主なものを本項で紹介しましょう。

基本給と勤続年数で退職金を算定する方法

毎月の基本給に、勤続年数をかけて退職金を算定する方法です。単純な乗算式ではありますが、勤続で基本給が増えると計算が複雑化するケースもあります。
たとえば基本給18万円で3年務め、3年目からは基本給が20万円になった看護師が5年勤務した場合の退職金は以下の通りです。

  • 18万円×3年+20万円×5年=154万円(退職金)

毎年の固定額と勤続年数で退職金を算定する方法

病院の就業規則に「毎年の固定額を積み立てて退職金にあてる」と規定している場合の計算方法です。この方法だと、退職金の見積もりはしやすいものの、基本給の上昇は反映されません。
毎年の固定額が12万と規定されていて、10年勤務した場合の退職金は以下の通りとなります。

  • 12万円×10年=120万円(退職金)

勤続年数により退職金が規定されている場合

勤続年数によって、退職金が規定されているケースもあります。たとえば、5年以上で◯万円、10年以上で◯万円といった具合です。この場合、病院が独自で定めた基準に依存するので、退職金がどのくらいもらえるのか就業規則をよく確認しておきましょう。

基本給と勤続年数と業績給で退職金を算定する方法

「基本給と勤続年数で退職金を算定する方法」に、業績や病院への貢献度を合わせて退職金を算定する方法です。業績をどのようにして金額に換算するかは病院によって異なり、なかにはマイナスになるケースもあるでしょう。このような算定方法の場合は、できるだけ円満に退職して、少しでも多くの退職金がもらえるように心掛けてください。
たとえば基本給18万円で4年間勤務し、貢献度130%と評価された場合の退職金は以下のようになります。

  • 18万円×4年×1.3(貢献度130%)=93.6万円

なお、就業規則によって役職や退職事由が算定方法に影響することがあります。

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公務員看護師の退職金の算定

公務員の退職金は原則1年目から支給され、算定方法も決められています。これは公務員として働く看護師も同様です。そこで本項では公務員看護師の退職金について確認していきます。なお、公務員看護師の区分や職場は以下の関連記事で紹介しているので、参考にしてみてください。

関連記事:公務員看護師になるには?給料やメリット・デメリットも紹介!

国家公務員

国家公務員とは、国が運営している施設で働く公務員のことです。国家公務員看護師の場合だと、宮内庁病院や刑務所、自衛隊などが職場となります。

国家公務員看護師の退職金は以下のような算定方法です。

【国家公務員看護師の退職金算定方法】
退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給率×調整率)+調整額

複雑な式にみえますが、あくまで“基本給と勤続年数の乗算”が基本形になっています。
退職事由や仕事ぶりで金額が上下する点においては退職金制度としても一般的なので、理解しやすいのではないでしょうか。
では、それぞれの項目について補足していきます。

俸給

公務員の俸給は、会社員の基本給に当たるものです。手当は含まれませんが、特殊な労働条件などに対し、“俸給の調整額”が支給され割増になるケースもあります。俸給は職種ごとの俸給表に基づいて算出され、看護師が該当するのは「医療職俸給表(三)」です。

退職理由別/勤続期間別支給率

退職理由や勤続期間によっても倍率が異なります。こちらは「国家公務員退職手当支給率早見表」でチェックすることが可能です。

調整率

調整率は官民均衡を図るために設けられたものです。その倍率は概ね5年毎に見直されており、平成30年1月の改正では83.7/100の倍率となっています。

調整額

調整額とは、在職中の貢献度によって支給額が変化する「職責ポイント」に相当します。一般企業で、貢献度が退職金の額に大きく影響する“ポイント制”が広まりつつあることを受け、設けられました。

地方公務員

地方公務員とは、都道府県や市町村など地方自治体で働く公務員のことです。地方公務員看護師の場合だと、公立病院・診療所、公立看護学校、保健所・保健センターなどが職場となります。

地方公務員の退職金制度は、各地方公共団体の条例に定められるものです。
ただし、基本的には国家公務員の退職金制度に準ずるとされており、総務省は以下のような算定方法を条例案として挙げています。

【地方公務員の退職金算定方法(条例案)】
退職手当額=基本額+調整額

基本額=退職日給料月額×退職理由別・勤続年数別支給率
調整額=調整月額のうちその額が多いものから60月分の額を合計した額

算定方法自体は基本的に国家公務員と同様です。
ただし退職理由別・勤務年数別支給率の倍率表は異なります。

準公務員/みなし公務員

準公務員とみなし公務員は同義で、公共性や公益性のある仕事をする会社員のことです。看護師の場合、独立行政法人化した病院に勤める人などを指します(国公立大学病院等)。準公務員・みなし公務員の待遇は公務員とほぼ同様であり、退職金の制度や額も公務員看護師とさほど変わりありません。

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看護師の退職金の相場

看護師の退職金の相場として、一般に用いられる目安は以下のようなものです。

  • 勤続3年:~30万円
  • 勤続5年:50~100万円
  • 勤続10年:250~300万円
  • 勤続20年:450~600万円
  • 定年退職:1,400万~2,000万

看護師の退職金の額は、就業規則や退職事由、役職などさまざまな要因に左右されます。その振れ幅の大きさから“相場”を算出しづらいのも事実です。そのため本項に挙げる金額はあくまで参考程度としてください。

※なお退職金算定の都合上、勤務年数が1年増える毎に退職金が数十万円増えることもあります。そこで本項では、あくまで勤続◯年“時点”での相場として紹介します。

勤続3年

多くの事業所で「勤続3年以上」が、退職金を貰える条件になっているようです。そのため勤続3年の場合、退職金は貰えるものの最低基準というのが一般的。額はおよそ給料1ヶ月分前後になるでしょう。

勤続5年

勤続5年の退職金は50~100万円が目安です。一般的な生活費の数カ月分にあたる額であるため、退職後に転職活動をするのに備えられる程度の金額だといえるでしょう。

勤続10年

看護師は女性の割合が極端に多い仕事です。勤続10年にもなると、結婚や出産を理由に退職する方が少なくありません。退職金の相場は250~300万円。ライフスタイルの変化に合わせ、今後の身の振り方を考える間の生活に充てられる程度の金額だといえるでしょう。

勤続20年

勤続20年の退職金相場は450~600万円とされています。勤続20年といえば、40~50代前半のミドル世代になるでしょう。キャリアの折り返しを迎え、今後を考える時期です。退職金を今後の人生設計の予算に充てることもできるでしょう。

定年退職

定年退職時には、退職金が満額出ます。相場は1,400万~2,000万程度です。ただし前述の通り就業規則によるところが大きく、場合によっては退職金がほとんど出ないこともあり得ます。
定年退職時、数十年のキャリアに見合う報酬は大いに期待したいものです。その一方で、自身の退職金制度を把握していない看護師の方も少なからずいるでしょう。就業規則を確認しておくことが重要です。

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看護師の退職金について知っておきたいポイント

一般に、給料を増やすなら資格を取ったり役職に就いたりするのが有効ですが、退職金はどうなのでしょうか。退職金制度について、以下のようなポイントを抑えておきましょう。

役職に就くと増える?

退職金は、看護師長や看護部長などの管理職に就くと上がる可能性があります。
特に「算定方法に功績倍率が組み込まれている場合」や「役職に就くと基本給が上がる場合」には、役職になることで退職金が増えるといえるでしょう。一方、主任クラスでは退職金にあまり影響しないようです。

資格を取得すると増える?

一般に“資格手当”が付与されがちな「認定看護師」や「専門看護師」といった資格は、基本給が増えない限り、退職金への影響は小さいとされています。
他方で、基本給が増えるような資格は退職金も増えることが期待できます。たとえば「助産師」や「保健師」の資格を取得して助産師・保健師として働くと、基本給が増え、退職金も増えることが多いようです。また、同様に准看護師の方が正看護師になると退職金が増えることがあります。

退職方法で変わる?

定年前に“自己都合”で退職すると、退職金が7割程度に減額されることが少なくありません。退職金は額が大きくなりがちなだけに、自己都合退職による差は数十万~数百万円になることもあるでしょう。
これも就業規則に記されているので、「退職金を貰ってから転職しよう」と考えている方は、自己都合退職に際する退職金の扱いを確認しておくのが重要です。

退職金を受け取れるタイミングは?

退職金が貰えるのは、事業所によって異なりますが、概ね退職から1~6ヶ月後です。もし退職金が事業所の定める期日を超えても貰えないようなら、事業所側の法律違反にあたる可能性も。担当者に問い合わせましょう。

税金がかかる?

退職金を一括で受け取る際、所得税や住民税が課税されますが、他方で過度に課税されないように「退職所得控除」を受けることができます。退職所得控除の額は以下のとおりです。

【勤続20年以下】
40万円×勤続年数 (80万円に満たない場合には、80万円)

【勤続20年超】
800万円+70万円×(勤続年数-20年)

実際には、退職金から控除額を差し引き、2分の1をしたものが退職所得として課税されます。なお、退職所得は他所得と分離されます。
退職所得控除を受けるには「退職所得の受給に関する申告書」の提出が必要です。同申告書を提出すれば、源泉徴収などの手続きは会社が行うこととなり、原則確定申告を個人で行う必要はなくなります。

他方で、退職金を年金として受け取る際には、雑所得として課税されるため退職所得控除を受けることはできません。ただし、公的年金等控除があるため、一定金額までは控除を受けることができます。

退職金の算定には“勤続年数”が要になっています。そのため、「今の職場環境に不満があり、転職を考えている」という方がいれば、早めに行動することが重要だといえるでしょう。

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まとめ

看護師が退職金をもらえるかどうかは、職場や入職年数によって変わります。退職金の支給方法も取り入れている制度によって異なるため、入職前や退職前にしっかりと確認することが大事です。

転職するときも、求人票に退職金について明記されているか忘れずに確かめましょう。退職金は勤続年数によっても変わるので、長く働ける職場を探すことが退職金をしっかりもらうポイントにもなってきます。

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