
正直、高齢者の看護ってしんどいことが多い。言葉が通じづらかったり、理不尽に怒られたりすることがある。
でも最近、「高齢者には興味がありません」とはっきり言う若い人に出会うことがあって、戸惑ってしまった。高齢社会のいま、看護と高齢者ケアは切り離せないのに。
だからこそ今回は、私が高齢者の看護の大変さを感じた瞬間と、そこからどう工夫するようになったかを、素直に書いてみたい。
福祉業界から医療業界に飛び込んだ系看護師。2歳の息子がおり、時短勤務中。「人生死ぬ事以外はかすり傷さ」をモットーに生きていたら、人生そのものが黒歴史になりかけたけど、紆余曲折あって今は我が子と2人で強く楽しく逞しく生きている。夢は、看護業界からパワハラ・モラハラ・マタハラフェスティバルを撲滅させること。
X(Twitter):@siroyoshi88
看護師として働くなかで、確かに「高齢者のケアって、ほんと大変だな…」と感じる場面には何度も遭遇した。もちろん、すべての高齢者がそうではない。だけど現場では、理不尽な対応をされることは少なくない。
たとえば、患者さん自身の身体のことなのに、治療方針を医師・看護師に丸投げするケース。こちらが丁寧に説明しても、聞こうともしない。
造影CTで「検査の5時間前から飲食しないでください。」と説明したら「覚えてられるか分からない」と言われたり、手術や抗がん剤などをどうしたいか?という選択肢を伝えると「そんなこと言われても困る」って言い出したり。
同意書に自分でサインをしたのに「やりたいのはそっちだろ!」って医師に向かって言ったりね。そもそも自分よりも年下の看護師や医師から指導されるのが気に入らないみたいな感じもある。

長く生きてきたぶん、経験で物を言いたいのは分かるけどさ…。こちらの話をまったく聞き入れず、怒りをぶつけられると、正直、嫌になってしまう。
元気に文句を言う人もいれば、自分の意志を伝えられないまま延命治療で生かされる人もいる。
たとえば寝たきりで、食事もとれず、体を動かせない。自分の意思ではない延命治療。そんな方々を見ているとやりきれない気持ちになってしまう。「無理な延命治療は、必要ない」というのが私の考えだ(※この点は以前の記事「その延命治療、必要ですか?看護師が実体験から語る、本人と家族が後悔しない”死”の考え方」でも書いた)。
そんな考えを持っていても、日々の現場では、意思表示のできない高齢者や、どこまでケアをすべきか分からないケースと向き合うこともある。かつて高齢者ケアが“好き”だったはずの私も、気づけば「もう、深く関わりすぎるのはしんどい」と思ってしまう瞬間が増えてきた。
それでもやっぱり、原点に帰ると私が好きなのは介護だし、すべてを抱え込まないように、自分なりに工夫していることがある。
そんな私がいま働いているのは、基本的に認知症の方がいない、外来・検査室。高齢者ケアに疲れてしまった部分があって選んだ職場だけど、「もう高齢者は見たくない!」みたいに拒絶する気持ちはない。
大変だなと思ったところで避けられないのは分かっているから、「やるしかない」って腹を括ってる感じかな。
だって、高齢者と医療や福祉業界って、絶対に切り離せないじゃんね…?
最近では、核家族化や世代間の交流減少もあってか、ネットでは「老害」なんて言葉が流行り、高齢者に対する偏見やヘイトが目に付くことも増えてきた。そんな風潮のなかで、「高齢者を見たくないから美容に行きたい」という学生や「高齢者のケアには興味ないんで」とはっきり言う新人に出会うことがある。そんな人が増えている気がして、少し怖くなる。
だって、私たち看護師は学生時代から老年看護を学んできたんだから。何より今の日本は高齢社会で、総人口に占める65歳以上は29%もある。看護師という職業を選択したら、高齢者のケアは切っても切り離せない、その感覚が今の子たちにはないのか…と不安を覚える。
ここからは、そんな大変な老年看護でも、私が実践していておすすめできるコツを伝えたい。
まず私が実践してるのは…とにかく早口にならないこと。歳を重ねて、情報処理能力はやっぱり落ちていると思うので。
あとは、絶対に子ども扱いしないこと。敬語で話すこと。
たまに、高齢患者さんに対して親しみを込める意味で、ちょっと子ども扱い風にしたりタメ口で話す看護師さんっているじゃないですか…。あと認知症の患者さんを可愛いって言ったり。
私、アレは絶対にやらないようにしてます。
自分の祖父母がそんな扱い受けてたら嫌だなって思うし、どんなに理解度が良くない高齢患者さんだって、自分よりは年上なわけで。
そんな扱いをして「馬鹿にしやがって!」って激昂されても嫌なので、あくまでもフラットな対応を心掛けています。そんな感じで接していれば、こちらのテンションも一定になって、心穏やかになれるなとも思ってる。
福祉大学時代に教わった「バイスティックの7原則」(援助の基本原則)を意識してます。これは老年看護だけでなくすべての患者さんを対象に使えるコミュニケーション技法だと思ってます。
ですが、看護学校では授業で一切触れなかったのでもったいないと思います。
▼バイステックの7原則
| 個別化 | 個別性の理解 |
| 意図的な感情表出 | 自由な感情表出の意図的な援助 |
| 統制された情緒的関与 | 援助者の感情は自覚的にコントロールして利用者理解に務める |
| 受容 | 利用者の感情や言動をそのまま受け入れる |
| 非審判的態度 | 援助者の価値観で利用者の評価や批判をしない |
| 自己決定 | 利用者の自己決定を尊重し援助する |
| 秘密保持 | 利用者の情報守り、不必要に外部に漏らさない |
内視鏡の説明用紙って、私たち看護師から見れば分かりやすいけど、高齢患者さんにとっては字が小さくて読めないことも多い。
そんなときは、大きく・簡潔に書いて、ゆっくり説明するようにしてる。
あとは、説明するときに説明用紙に書いてあっても、あえて二重に手書きで患者さんの目の前で書いて渡すと、大切に持って帰ってくれる方が多いです。
話しながら蛍光ペンでマーカーだけ引いて渡すよりも、たとえば胃カメラのオリエンテーションのときに「◯時間前から禁食です!」とか「◯時までに晩ご飯を食べてください!」とか、患者さんの目の前で手書きで書いた説明用紙を渡すと、検査の日に持って来て、「よっしーさんが書いてくれてたからご飯食べずに来たよ!」って話し掛けてくれたり。
「検査そのもの」だけじゃなくて、「検査を安心して受けられるようサポートすること」も看護の大事な役割だと思ってる。

老年看護が苦手でもいい。でも、関わり方は自分で工夫できるはずだ。
さてさて…ネガティブな話題になりがちな老年看護だけど、実は学びも本当に多いんだよね。やっぱり皆さん、人生の大先輩だから。関わりの中で、私自身が学んだことを書いてみる。
昔に比べたら減ったけど…私は以前、戦争を経験した患者さんに出会ったことがある。B29へ搭乗していた方、戦争で子どもや配偶者を亡くした方。国からの恩給で生活している人たち。
リアルな戦争体験記は、聞いていて辛くなる。中には「自分の本当の誕生日を知らない」っていう人や、「戦争にちなんだ名前をつけられたから、自分の名前が嫌い」って人にも出会った。
こういうまったく違う時代・生活を経験してた方々の話って、高齢者の看護に携わってなかったら知ることのなかった世界だ。
私は人生の最大の学びは「経験」だと思っていて。その人が歩んできた経験を聞かせてもらうって、有意義な時間だなと思っている。
そして、高齢患者さんの中には、若輩者な私たちを逆に敬ってくれるような人もいる。
私が産休・育休を経て復帰したばかりの頃。
ある患者さんと話してるとき、ふと「息子が…」と話題に出したら、「あなたお子さんいるの!?」「何歳なの?」と聞かれた。「2歳です」って答えると、「小さいお子さんを育てながらこんな立派な仕事をして…素敵ね!」ってすっごく褒めてくれた。
「私たちは子どもを産んだら仕事をするという選択肢を与えてもらえなかったのよ。今のお母さんたちは凄いよ」「お子さん自慢のママだね!」って。そう言ってくれたとき、大好きだった祖母のことを思い出して…ちょっと泣きそうになった。

自分の親だって、いつかは高齢者になる。そして、自分もいつかは高齢者になる。
そんなふうに考えると、老年看護って決して他人事じゃないんだよね。
確かにこれまで「しんどいな…」って思ったことはあった。でも、人生経験が豊富な高齢者の方たちに、救われた場面もたくさんあった。
知らなかった世界を教えてもらったり、思いがけない言葉に励まされたり。
誰もが、誰かの大切な人であることを忘れずにいたいなって、心から思う。
看護師として、そして1人の人間として、これからもそういう気持ちを大事にしていきたいなと思っています。
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まみ
2025年7月2日 10:08
高齢者は長年培ってきた習慣とか性格、好みとかがあるからなかなか環境の変化とか受け入れられないことが多く、それが故に看護師にあたることも少なくない。
共感して受け入れることも看護の1つだと思いつつ、こっちにも感情あるだよなーと思ったり。難しい!