産業看護師とは?保健師との違いや仕事内容・給料相場を解説!

2023.7.24

体調不良のビジネスマンを診察している女性看護師のイメージ

「産業看護師とはどのような職業?」「保健師との違いはある?」と気になる方も多いのではないでしょうか。産業看護師とは、企業において従業員の健康管理を担う仕事です。この記事では、産業看護師の仕事内容や、産業保健師や病棟看護師との違い、働くメリットなどを解説します。産業看護師として転職する際のポイントも紹介しているので、詳しく知りたい方はチェックしてみましょう。

目次

産業看護師(企業看護師)とは?

産業看護師(企業看護師)とは、企業に勤める看護師のことで、従業員の健康管理を行うのが主な役割です。常駐看護師は1人から数人というケースが多く、少人数制で業務を行います。すべての企業で産業看護師が常駐しているわけではありません。

産業看護師と産業保健師の違い

産業看護師と産業保健師は似た職種に捉えられがちですが、メインの業務が異なります。産業保健師の場合、メンタルヘルスケアや休職者の復職支援などを主に担うのが仕事です。「保健師助産師看護師法」によると、保健師は厚生労働大臣の免許を受け、「保健指導に従事することを業とする者」であり、看護師は「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」を指します。
「産業保健師」として働くには、保健師の資格が必要です。実際に産業保健師としての募集している企業が多く、看護師免許のみの方は産業保健師として働けないので注意しましょう。

出典
e-GOV法令検索「保健師助産師看護師法」(2023年7月20日)

産業看護師と病棟看護師の違い

産業看護師と病棟看護師は、勤務先や仕事内容、働き方が異なります。以下に、病棟看護師の詳細をまとめました。

【病棟看護師の勤務先】

  • 急性期病棟
  • 療養型病棟
  • 精神科病棟
  • 回復期リハビリテーション病棟
  • 緩和ケア病棟
  • 地域包括ケア病棟

病棟看護師の勤務先は、病院内にある上記のような病棟になります。一方、産業看護師の勤務先は基本的に企業内にある医務室や健康管理センターなどです。企業によっては総務課や人事課といった部署で働くケースもあります。

【病棟看護師の仕事内容】

  • 身体介護
  • バイタルサインチェック
  • 体位変換
  • 点滴や注射の管理
  • 夜間帯の巡回
  • ナースコール対応
  • 移乗や歩行の介助

病棟看護師は、治療や療養が必要な入院患者を担当するのが主な仕事です。産業看護師のメイン業務は企業で働く従業員への健康相談やメンタルヘルスケアなどであり、基本的な業務が異なります

【病棟看護師の働き方】

  • 日勤のみ
  • 夜勤ありの2交代制もしくは3交代制
  • 夜勤専従

病棟看護師も日勤のみで働くことも可能ですが、多くの職場では夜勤業務があるでしょう。その分、「夜勤手当が支給される」「平日に休み(連休)がとりやすい」といったメリットがあります。産業看護師の勤務時間は企業の従業員とほぼ同じ場合が多く、日勤メインです。休日も土日祝休みが多く、一般的な会社員のような働き方といえます。

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産業看護師になるには

ここでは、産業看護師として働くうえで必要な資格や求められるスキルを紹介します。産業看護師への転職を検討していて、働くために何が必要か知りたい方はチェックしてみましょう。

資格

産業看護師として勤務するには、まず看護師免許が必須です。さらに保健師の資格も保有していると応募可能な求人も増えるため、転職の幅が広がります。
また、必須ではないものの「労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント」「産業カウンセラー」「メンタルヘルス・マネジメント検定」などの資格があると、産業看護師の業務に役立ちます。「保健師の資格は持っていない」「産業看護師として長く活躍したい」といった方は、プラスの要素として取得を検討しても良いでしょう。

求められるスキル

産業看護師は看護職でありながら企業の一員として働くため、社会人としてのビジネスマナーや基礎的なPCスキルが求められます。具体的にはWordやExcel、PowerPointが使えるとスムーズです。また、一般常識やメールや電話のマナーなどビジネスシーンにおける礼儀作法を身につけておくと良いでしょう。

出典
今の病院で満足していますか?

産業看護師の仕事内容

産業看護師の主な仕事は、健康診断の実施やメンタルヘルスケアなどがあります。病院やクリニックとは異なるので、気になる方は以下をチェックしてみましょう。

健康診断の実施やサポート

産業看護師として、健康診断の企画から事後フォローまでを担います。受診対象者へ案内をして、健診を行う医療機関へ連絡や調整をするのも産業看護師の仕事です。実施後は結果の管理・分析をし、従業員へ指導したり、産業医に連絡して面談日を設定したりします。

メンタルヘルスケア業務

従業員が心の健康を維持して日々過ごして働けるよう、メンタルヘルスケアを行います。具体的な業務は、「不安や心配事などの相談に乗る」「ストレスチェックを実施する」などです。産業看護師として、必要に応じて「セルフケアを促す」「産業医と連携をとる」など、適宜対応することが求められます。

健康相談

従業員の健康相談にのることも、産業看護師の重要な役割です。健康相談ができる環境を作り、個別で相談にきた従業員へ対応します。看護師の視点から、生活習慣のアドバイスや気をつけるポイントを伝え、環境改善をすることが主な仕事です。ただし、医師ではないので看護師として行える範囲での業務となります。

医務室や健康管理室内での看護・処置

従業員が体調を崩してしたときや、怪我をしてしまった場合、産業看護師として状況に合った処置を行います。ただし、病院やクリニックとは異なり、長時間にわたって怪我や病気の対応に追われることは少ないでしょう。

産業看護師の1日

ここでは、一般的な産業看護師の1日の流れを紹介します。企業に勤める産業看護師のおおまかなスケジュールが知りたい方は、参考にしてください。

時間仕事内容
午前8時30分始業、当日の仕事内容の確認
午前9時メールや連絡事項のチェック
午前10時健康診断の結果を確認
午前11時30分医務室で看護業務
午後12時30分お昼休憩
午後1時30分健康診断の結果の分析
午後3時健康情報資料を作成
午後4時産業医と健康診断後のフォローに関する会議
午後5時30分終業

上記はあくまで一例なので、就業先の業種や規模によって具体的な業務内容は異なります。職場によっては、複数の企業へ訪問するケースや、同じグループの別の事業所へ出向いて業務を行うこともあるようです。

産業看護師の給料・年収相場

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、看護職員全体の平均給与額が約35万円で平均賞与額が86万円であり、年収相場は約500万円です。産業看護師は基本的に夜勤がないため、年収は450万〜500万程度といえるでしょう。夜勤常勤や手当が充実している職場と比較すると低めな傾向にあるものの、一般企業勤務と考えると「安定した収入を得られる」と感じる方も多いはずです。
また、就業先によっては夜間帯の勤務や企業独自の手当が支給されることもあり、高収入を望める場合も。基本給や賞与の回数なども異なるので、実際の待遇面については求人情報で確認しておきましょう。

出典
厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(2023年7月20日)

産業看護師として勤務するメリット

産業看護師は土日祝休みの職場が多く、プライベートと仕事を両立させやすいのが特徴です。以下で、産業看護師として働くメリットを詳しく解説します。

土日祝休みが多くワークライフバランスがとりやすい

産業看護師の職場はカレンダーどおり土日祝休みの企業が多く、仕事とプライベートのバランスが取りやすいのが魅力です。休日出勤の可能性も少ないため、予定が立てやすいのもメリットの一つ。週末は、「家庭の時間を大事にする」「習い事や趣味に没頭する」「友人と会う」など、有意義に過ごせます。オンオフを切り替えて働ける仕事といえるでしょう。

基本的に夜勤がなく体力的な負担は少なめ

産業看護師は企業の営業時間に合わせて勤務するため、基本的に夜勤はなく体力的な負担が少なめです。生活リズムを維持しやすく、夜はしっかり体を休められるでしょう。「病棟勤務は体力的にハードできつい」「家事や育児もあるので仕事は負担少なく働きたい」とお考えの方に、適しています。

病院と比べると難しい医療行為は少ない

産業看護師は病院と比較すると医療行為の機会が少ないため、比較的ゆとりを持って仕事に取り組めます。医療処置を行う場面が発生しても、命に関わる状況へ直面することは少ないでしょう。また、病院のように身体介護をしたり患者さまを抱えたりといった、身体的にハードな業務も基本的にはありません。心身ともに落ち着いた環境で働くことが可能です。

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産業看護師として勤務するデメリット

産業看護師として働くデメリットには、「医療現場の感覚を忘れやすい」「デスクワークに慣れない」といった点が挙げられます。以下で詳しくまとめました。

病院と比較すると求人が少なめ

産業看護師の必要な人員は1つの企業に1〜2人程度と少なく、医療機関や介護施設の求人数よりも少ない傾向にあります。また、企業によっては産業看護師経験を応募条件にしていたり、優遇していたりする場合も多く、未経験の方は応募先が限られるかもしれません。

医療現場の感覚を忘れやすい

産業看護師の職場は基本的に企業内なので、重症患者のケアや急変時の対応、身体介助といった医療現場の感覚を忘れてしまいやすいといえます。そのため、将来的に産業看護師から病院やクリニックへ転職を考えた際、経験不足によって不利になる恐れも。特に臨床経験が浅いまま産業看護師になった場合、次に転職する際は職場探しに悩むかもしれません。

人によってはデスクワークに慣れない

産業看護師は資料作成やデータ管理、メール対応といったデスクワークが多く、事務作業やPCの扱いに慣れていない方は、負担に感じることもあるでしょう。病院やクリニック勤務でも事務作業はあるものの、カルテ整理や書類管理程度といえます。産業看護師の仕事をスムーズに進めるには、一から新しいことを学ぶ意欲が必要です。

産業看護師に向いている人の特徴

ここでは、産業看護師に向いている人の特徴を紹介します。産業看護師の仕事が気になってはいるものの、「自分に向いているのか分からない」とお悩みの方は、参考にしてみましょう。

コミュニケーションスキルの高い人

コミュニケーションスキルが高く、相手の悩みや思考を上手く汲み取れる人は、産業看護師に向いています。産業看護師は患者さまや同僚など多くの人と話す機会が少ないイメージであるものの、実際は多数の人と関わる仕事です。職場によっては看護師が自分一人という状況の中、企業の従業員や産業医とスムーズに連携を取りながら業務をこなすには、人と円滑な関係を築くことが求められます。

メンタルヘルスケアに興味がある人

産業看護師はストレスチェックや精神的な不調者の相談業務などを担うため、メンタルヘルスケアに興味がある方は適性があります。働く人の心の健康をサポートすることは、産業看護師だからこそ経験できる仕事といえます。このような業務にやりがいを感じられる方は、向いているといえるでしょう。

企業勤務ならではの経験がしたい人

看護師の資格を活かしながら一般企業での経験を積みたい方は、産業看護師に向いています。企業では、健康診断の企画や健康相談など、病院やクリニックにはない仕事に携わることが可能です。「一般社会と関わりながら働きたい」「幅広いフィールドで活躍したい」という希望を持つ方は、産業看護師の職業を選択肢に入れても良いでしょう

産業看護師の求人は人気?

ここでは、産業看護師の求人について現状をまとめました。産業看護師の仕事が気になっているものの、実際の求人がどのような状況か知りたい方はご確認ください。

近年は「産業保健師」として募集されることが多い

先述したとおり、産業看護師ではなく産業保健師として募集する企業が多いのが現状です。
そのため、転職では保健師資格をもっている方が有利といえるでしょう。求人によっては、「臨床経験◯年以上の方優遇」「精神科経験者歓迎」といったケースもあるので、まずは求人の応募条件を確認してください。

なかなか空きが出ないため倍率が高い

企業勤務という安定したイメージから産業看護師・保健師の人気は高いようです。特に「給与が高い」「残業がほぼない」「土日祝が完全に休み」といった条件の良い企業はなかなか辞める人がおらず、欠員が出てもすぐ埋まる傾向にあります。そもそも求人が出るのは稀なため、応募の際は急いで行動しましょう

産業看護師へ転職する際のポイント

産業看護師へ転職する方は、求人内容を十分にチェックし、選考対策を念入りに行うことを意識してください。以下で転職のポイントを詳しくまとめました。

求人内容を十分確認する

産業看護師は職場によって勤務時間や細かい仕事内容などは異なるため、応募前に勤務条件を確認することが重要です。たとえば、勤務時間や休日、福利厚生をはじめ就業先の場所や出張の有無など、細かくチェックしておきましょう。そのうえで自身の生活スタイルやキャリアプランと照らし合わせて、ピッタリの転職先を探してください。

選考対策を念入りに行う

産業看護師は人気の職業なため、転職を成功させるには十分な選考対策が必要です。重要なポイントは、「一般的な看護師ではなくなぜ産業看護師になりたいのか」という点を明確に伝えることです。応募先によっては企業勤務経験や保健師資格の有無ではなく、仕事への意欲を重視しているケースも。応募書類や面接で、産業看護師への思いをアピールすることが大切です。

産業看護師の志望動機例文

「前職の心療内科では仕事の悩みを抱えている患者さまが多く、社会で働く方をさらにサポートしたいと強く感じたのが、産業看護師を目指した理由です。御社ではストレスチェックやセルフケアの強化などメンタルヘルス対策に力を入れていることを知り、共感いたしました。私も一員となり、社員の心身の健康を支え、御社に発展に貢献したいと思っております。」

転職エージェントを活用する

「産業看護師に向いているか分からない」「まずは産業看護師の仕事内容を知りたい」など不安がある方は、転職エージェントを利用すると良いでしょう。転職エージェントでは仕事探しの相談ができ、自分のキャリアや適性に沿った求人を紹介してくれます。転職に関する情報量も増やせるので、「産業看護師は未経験」「転職が初めて」という方も安心です。

まとめ

産業看護師とは、企業に勤務して従業員の健康相談やメンタルヘルスケアなどを行う看護師のことです。産業保健師として募集をかけている企業が多く、安定した働き方から人気のある職業といえます。また、病院看護師と仕事内容や労働環境が異なるため、応募条件や自身に適性があるか考えてから転職を検討しましょう。
しかし、一人では具体的に産業看護師と病院看護師の求人を比較したり、産業看護師が自分に合っているのか判断したりしにくいかもしれません。
看護業界に特化した「レバウェル看護」では、キャリアアドバイザーがお悩みを丁寧にヒアリングしますので、個々に合った働き方が見えてくるでしょう。必要に応じて、産業看護師以外の職場を提案することも可能です。
実績のある転職のプロがマンツーマンでサポートするため、効率良く転職活動を進められますよ。「何度もやり取りするのが面倒…」という方は、LINEやメールでも対応可能です。空いた時間を有効に使いながら、ピッタリの求人を探せるでしょう。

産業看護師に関するよくある質問

ここでは、産業看護師についてよくある質問をQ&A方式で解決していきます。

大手企業の産業看護師になるのは難しいですか?

大手企業は待遇面や福利厚生が充実している傾向にあり、そのような企業は人気があるため、倍率が高めといえます。「病院と比較すると求人が少なめ」にもあるように、一般的に産業看護師自体の求人が少なめです。さらに人気企業だと、経験者が有利になることも多く、採用されるのにハードルが高いケースもあるでしょう。

産業医と連携をとることはありますか?

面談設定のために連絡をとったり、ともにカンファレンスを行ったり、産業看護師は産業医と関わることがあります。病院の医師と看護師ほど顔を合わせて働く機会は少ないものの、従業員の健康を守り促進するという同じ目的のため、上手く連携をとることが必要です。具体的か関わり方は就業先によって異なるため、応募時確認すると良いでしょう。

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