怒られないための看護、早く帰れるための看護になっていませんか?マリアンナの忘れられない患者・田中さんが気づかせてくれたこととは。【ナースが物申す第18回】

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看護師をやっていると、

「この患者さんの看護で何かが変わった」

という、忘れられない患者さんとの出会いがあります。

わたしにもそんな患者さんがいます。

※1※2 調査方法:インターネット調査/調査期間:2024年2月7日~2月13日/調査概要:「看護師転職サイト」を対象としたユーザー満足度調査/調査対象:男女、全国、看護師・准看護師資格保有者かつ対象看護師転職サイト利用経験者、20~29歳 107s(※1)、20~34歳 175s(※2)/調査実施:株式会社エクスクリエ/比較対象サービス:「看護師転職サイト」主要10サービス(専用サイトのあるサービスのみ・求人結果の表示ページは除く)

忘れられない患者さん「ひとりぼっちの田中さん」

田中さん(仮名)は70代後半のおじいちゃん。

COPDの終末期の田中さんは、わたしが働いていた病棟に入院してきました。

結婚はしておらず子どももいない、ひとりぼっちの男性でした。

猫背の背中に経鼻カテーテルでつねに酸素をつけているような人でした。

高齢だけど頭はクリア。達筆すぎて何を書いているか読めないけど、毎日日記を書く習慣がある。朝起きて机で日記を書いている、無口な男性でした。

\ 今の病院で満足していますか? /

田中さんの最期がきた日

家族もいない田中さんを病院で看取る方向に。

わたしがまだ1年目くらいで夜勤の日だったか。

その夜、急激に田中さんの容体は悪くなったんです。

起き上がれなくなり、呼吸状態が悪くなっていって。

だいたい先が読めてた。

もってあと数時間。1日も持つか、持たないか・・。

田中さんの近くを通りすがると、田中さんが力を振り絞ったようにわたしに手招きしてきた。近寄って「どうしました?」って聞いたのよ。

田中さんは息も絶え絶えで、もう声も出せない状態。

でも何かを言いたそう。

目でなにかを訴えてる。

そしたらいきなり、田中さんがわたしの手をつかんで離さない。

でもなんとなく恐怖におびえたようなその目をみて、悟ったというか。

「不安なんですか?」

と聞くと、

必死に何度もうなずいた。

すごく不安みたい。

自分に死が迫っていることを悟ったのか。

もしくは寂しさだったのかはわからないけど、

最期をできるだけ不安なく過ごせるよう、

ベッドサイドに座ってしばらく田中さんの手をさすってたのよ。

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そしたら目を閉じて少し安心した様子だった。

数十分経ってから、先輩たちが詰所でバタバタしだした。

同僚が定時で回っているおむつ周りや点滴ラウンドとかを始めたの。おむつ交換とかみんなで協力してやらないとほんと大変。田中さんはそばにいてほしそうだけど、ペーペーのわたしはそこを離れるしかなかった。

「田中さん、わたし一回仕事に戻らないといけないの。でもまたあとで戻ってくるね。」

そう言ったら少し不安そうな顔をしたけど、田中さんはそっとわたしの手を離した。

そのままわたしは仕事へ戻ったんだけどね。

数分後、田中さんとこに戻ったら、田中さんはもう呼吸をしてなくて。

不安でそばにいてほしかっただろうけど、

田中さんは最後の最期に、ひとりで亡くなってしまってたの。

田中さんより看護業務を選んだわたし、そして心残り

それからしばらく、田中さんに最後の最期、1人で苦しい、辛い思いをさせてしまったことを後悔した。

でもどっかで、仕事だったんだから仕方ないって自分に言い聞かせてたんだけど、なんか腑に落ちなくて。

あんときのわたしの看護は果たして正しかったのか?みたいな。

看護師の言い訳

数年たってみて、あの時のわたしの心情を振り返って気づいたんだよね。

あのときは本当は、仕事だから田中さんのそばを離れたっていうより、こんな忙しい夜勤中に患者の手をつないでたりしたら、

「こんな忙しいときになにしとんねん!」

って同じ夜勤の先輩にわたしが怒られるから、忙しいのが収まってから来ようって。

仕事っていうのは言い訳で、

本当は新人の自分が怒られるのが怖いから、田中さんのそばを離れた。

なんかそのときのそういう自分の心情に向き合うのが嫌で、「仕事だったから」で言い訳してたっていうか・・・そんな感じ。

でもそのことを振り返って、本当に申し訳ないことしたな。

というか、

田中さん、辛くて寂しかっただろうな、とか。

他にもきっとできることあったのに、とか。

いろんなことを考えるようになって。

誰のために看護はあるんだろう?

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いざ看護師として働き出すと、業務に追われたり、職場の人間関係が優先になったり、本心から患者を中心にした看護なんて、なかなかできなくなってたりする。

今思えばその時期のわたしは、わたし中心の看護だったのよね。

わたしが怒られないための、わたしが早く帰れるための、いつもわたしが主語の看護って言うか。

田中さんの一件があってから、

自分にとって看護とはなんぞや?っていう、

いわゆる看護観を振り返るようになった。

ああ、看護って、患者さんのためにあるものだなって思って。

当たり前なんだけど、仕事が忙しくなったり、人間関係がいびつだったりすると、そんな当たり前にも目が向けられなくなるっていうか。

でもそうじゃいけないって、わかってる。

看護学校1年目のはじめての実習のとき、

わたしは看護目標に、「患者さんに笑顔でいてほしい」っていうのをあげたの。←バカ

看護展開ちゃんと勉強してないのバレバレで、教員にすごい怒られて。

でも看護実習担当さんがその点を良いように評価してくれて、

「その気持ちを忘れないでね。そういう気持ちはどんどんなくなっていくことが多いから。」って言ってくれたの。

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今になったらその実習担当さんの言ってることがわかる気もする。

人間って、初心を忘れるものなんだなー、みたいなね。

初心忘れるべからず

看護師って異常なくらい忙しいよね。

ゆえに人間関係もクソだし、どことってもストレスしかない。

つい「はよ帰りたい」とか、「円滑に仕事を終わらせたい」って思いが先立って、そこに患者がいることを忘れがちになるんだけども。

患者さんあっての看護師であることを忘れちゃいけないよね。

患者にとってはときに、病院が人生の最期を過ごす場所であったり、看護師が人生最後に関わる人だったりすることもある。そんなときに、看護師が自分のことしか考えてないとか、患者にとって辛すぎる。

田中さんのことがあってから、わたしは

「この患者さんにとって今なにをすることが一番いいのか」っていう、「患者中心の看護」をするように心がけている。

たぶんそれが今のわたしの看護観で、

忘れちゃいけないなーと思う「看護の初心」みたいなものになっています。

以上、わたしの忘れられない患者さん「田中さん」のお話でした。

マリアンナさんの公式ブログもぜひ読んでみてくださいね。
〈マリアンナさん公式ブログ『看護師になったシングルマザーのブログ』〉
https://nurse-singlemother.jp/?page_id=11

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〈イラスト:Kaoll〉
https://kaoll0719.wixsite.com/illustrator

プロフィール
ライター:マリアンナ
20歳で未婚の母になり、子育てしながら看護学校入学。看護師になったシングルマザーのマリアンナのコラムです。
反抗期息子の子育てと看護の仕事に奮闘中。
イラストレーター:Kaoll
美学美術史学科を専攻。博物館学芸員資格取得後、イラストレーター・DJとして活動。ユニークな視点とタッチで医療・保育などからファッション雑誌、カルチャーコンテンツなど多様な分野でイラストを制作。
サイト:Kaoll
Instagram:@djkaoll
X(旧Twitter):@djkaoll
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