
看護師の中には「妊娠・出産を検討している」「妊娠中で産休に関する知識を得たい」という人もいるでしょう。妊娠は非常に喜ばしいことですが、仕事を続けられるか心配になることもありますよね。身体を動かすことが多い看護師だからこそ、身体的な不安も大きいかもしれません。本記事では、看護師の産休制度について詳しく解説。育休や手当の種類、スムーズに取得する5つのコツも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
産休とは、正式名称を産前・産後休業といい「労働基準法第六十五条」で定められている制度です。産休の期間は原則として最長14週間で、産前と産後に分けて取得できます。産前休業は出産予定日の6週間前(双子の場合は14週間前)、産後休業は8週間までの間に利用することが可能です。ただし、公務員看護師の場合は、出産予定日の8週間前から出産後の8週間までとなるため注意しましょう。
なお、産休取得による「不当な配置転換」「解雇」「給料減額」などは法律で禁止されています。万が一、職場で不当な処遇を受けた際は、ハラスメントに該当する可能性があるため、最寄りの都道府県労働局に相談するようにしてください。
前述のとおり、産休は労働基準法で定められている休業のため、条件なしで取得することが可能です。就業規則や雇用形態を問わず、職場に申請すれば誰でも取得できます。多忙な職場であればあるほど、産休に対して後ろめたさを感じる人もいるかもしれませんが、引け目を感じず早めに報告相談することが大切です。なお、職場によっては、産前産後休暇届の提出を求められる場合もあります。
育休とは、正式名称を育児休業といい、産休と違って男性も利用できる制度です。「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)第五条」で定められています。産休同様、雇用形態は問いません。
育休の期間は原則1歳までですが、子育てが困難な場合は最長で2歳まで延長することが可能です。また、パパ・ママ育休プラスの要件を満たす場合は、1歳2か月に達する日まで延長可能となります。分割で取得することにより、仕事と育児も両立しやすくなるでしょう。
育休は、育児・介護休業法の第六条において「事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。」と定められています。申出期限は原則1か月前までです。
ただし、職場と締結している労使協定次第では、雇用された期間が1年に満たない場合、適用除外となる可能性があります。労使協定の例は、厚生労働省「育児・介護休業等に関する労使協定の例」で確認できます。また、有期雇用労働者においては、子どもが1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかな場合、適用対象外となるため注意しましょう。
▼関連記事
派遣看護師は育休を取れる?取得条件と産休から受け取れる手当を確認しよう
男性看護師は、通常の育児休業制度とは別に「産後パパ育休」も取得することが可能です。産後パパ育休とは、2022年10月に新設された新たな育休制度です。期間は、配偶者の出産後8週間以内で、4週間を限度に2回まで取得できます。休業中の就業が可能なため、柔軟に育児休業を取得できる点がポイントです。なお、休業中の就業を行うには、労使協定の締結が必要となります。
▼関連記事
院内初!男性看護師の僕が、師長とバトって育休を勝ち取った話
看護師の職場によって異なりますが、基本的に産休や育休中には給料の支払いは行われません。その代わりに、主に4つの手当が支給されます。手当を申請できるかは、保険加入状況で左右されるため、職場や役所の担当者に問い合わせると確実です。また、ボーナスも同様に就業規定や勤務状況、査定期間によって支給の有無は異なります。
▼関連記事
看護師は産休中に給料をもらえる?受け取れる手当と支給の条件を解説
出産育児一時金とは、経済的負担を軽減するための保険給付のことを指します。健康保険や国民健康保険の被保険者が対象で、金額は子ども1人につき50万円です。加入している健康保険組合へ必要書類を提出し、手続きを行います。
なお、直接支払制度を活用すれば、加入している健康保険組合から医療機関へ直接一時金が支払われるため、まとまった額を準備せずに済むという利点も。利用できるか否かは医療機関によって異なるため、気になる方はチェックしてみると良いでしょう。
出産手当金とは「産休中の給与の支払いがない人」かつ「職場の健康保険加入者」が対象となる手当です。扶養に入っている人は対象外のため注意しましょう。支給対象期間は出産予定日の42日前〜出産後56日までで、支給金額は標準報酬日額(賃金)の3分の2相当額となります。
一般財団法人女性労働協会「働く女性の心とからだの応援サイト」では、質問項目に回答するだけで、給付金額を確認することが可能です。一般的な計算方法のため、あくまで参考程度にはなりますが、実際のイメージがつきやすいかもしれません。
育児休業給付金とは、雇用保険の被保険者が対象となる手当です。手続きは基本的に勤務先が行います。支給金額は、育休開始日〜180日までは休業開始前の賃金の67%、181日目以降は50%です。また、給付期間は、育休開始日から子どもが1歳になった日の前日までが基本となります。ただし、子育てが困難な場合は1歳6か月、もしくは2歳まで延長することが可能です。
なお、支給要件は以下のとおりです。厚生労働省「Q&A~育児休業給付~」では、育児休業給付金に関する質問一覧と回答内容を確認することができるため、あわせてチェックすると良いでしょう。
※ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の完全月が12か月以上ある
児童手当とは、15歳までの子どもがいる人が支給対象となる手当です。児童手当の額は子どもの年齢によって違い、3歳未満の場合は1万5,000円です。手続きの際は、現住所の市区町村に「認定請求書」の提出を行います。なお、公務員看護師の場合は勤務先へ提出してください。原則として申請月の翌月分の手当から支給されるため、迅速な対応が重要です。
また、2024年10月から児童手当制度の内容が拡充されます。現状から拡充される点は以下のとおりです。前述の支給対象も変更になるため、注意するようにしてください。
▼関連記事
こども家庭庁ってなに!?看護師も知っておきたい日本の少子化対策【奥さんは看護師vol.37】
看護師が産休を取得する主なメリットとしては「経済的な安定を得られる」「出産前の職場に復帰できるため安心感がある」の2点が挙げられます。産休を取らずに退職することを検討している人は、参考にしてみてください。
妊娠中の生活や身体に戸惑いを抱える看護師にとって、経済的な安定は大切なポイントですよね。出産手当金はもとより、場合によってはボーナスが受け取れる可能性もあるため、不安の緩和に繋がります。経済的な余裕は、精神面にも少なからず影響を与えることから、より安心して出産に臨むことができるでしょう。
看護師が妊娠・出産を機に退職すると、再就職を希望するタイミングで一から仕事探しをしなければなりません。家事や育児をしながらの転職活動、また入職後の環境に慣れるまでの期間を考えると、働くことに対して足踏みをしてしまう可能性も。その点、元の職場に戻れる産休制度は、心身の負担の軽減に繋がるといえるでしょう。
ここでは、看護師が産休・育休をスムーズに取得する5つのコツを紹介します。産休・育休に入る際は、代わりのナースを探してもらったり、ほかのナースへの負担を懸念したりと、気苦労を感じることもあるでしょう。周囲の理解や協力を得るためには、感謝の気持ちを忘れずに、用意周到な準備を心がけることが大切です。
産休や育休の取得自体は当然に認められた権利ですが、職場の風潮によっては「言い出しづらい…」と感じる場合もあるでしょう。中には、嫌味を言ったり、冷たくしたりする人もいるかもしれません。そのようなときは、将来を見据えて、産休・育休制度を取りやすい環境が整備されている職場に転職しておくのも一つの手です。制度に関する教育が浸透しているため、復帰後の融通もききやすいといえます。
▼関連記事
妊娠の予定のあるナースが、働き続けるために知っておきたい5つのこと
ナースが妊娠前にチェックすべきは貯金より職場環境 【マネー講座】第4回 ~出産編~
看護師が産休・育休を取得する際は、仕事を引き継いだり、業務量を調整したりする必要があるため、早めに職場へ報告・相談しましょう。余裕を持って動くことで、周囲にかかる業務負荷を軽減できるといえます。なお、実際に産休・育休に入る際は、復帰後に部署が変わったり、育休中に退職したりする可能性を考慮して、ロッカーや私物の整理もしておくと良いでしょう。
▼関連記事
看護師が子供を授かった場合、どのくらいまでの期間なら働ける?
母性健康管理指導事項連絡カードとは、主治医の指導内容を職場へ的確に伝えられるカードです。通称「母健連絡カード」といいます。看護師が勤務先に母健連絡カードを提出した場合、勤務先は記載内容に応じて適切な措置を講じる必要があります。身体的な症状で不安な点が生じた場合は無理をし過ぎず、主治医等に相談し、職場に申し出を行ってください。時差通勤や休憩時間の延長、勤務時間短縮等の対策を取ってもらえるでしょう。
帝王切開や切迫早産などで高額な費用が見込まれる場合は、限度額適用認定証の申請を行いましょう。申請を済ませておくと、自己負担限度額までの支払いで済みます。支払い後の申請も可能ではありますが、一時的な負担を抑えたい人にはおすすめの制度です。
産休に入る前日になったら、職場の挨拶回りを行います。挨拶回りで肝心なのは、心配りや気配りを忘れないことです。菓子折りを置く際は手紙も添えると良いでしょう。なお、看護師がスピーチや挨拶メールに取り入れたいメッセージは以下のとおりです。
日々多忙を極める看護師だからこそ、いざ産休に入ると「どう時間を使って良いのか分からない」と感じることもあるかもしれません。出産後は自分の時間を取りにくいため、以下の内容を押さえながら、産休中を有意義に過ごすと良いでしょう。また、陣痛時の移動手段も考えておくと安心です。あくまでも自分の体調を第一に行動するようにしてください。
出産を終えた看護師は、復帰に向けて以下のステップを踏みましょう。休業中も職場とは定期的に連絡を取り、出産の報告を忘れないようにしてください。
まずは、役所に出生届を提出します。出生届とは、戸籍に記載するための書類のことで、提出期限は出産後14日以内です。手続き対象者は家族も該当するため、手が離せなかったり、体調が優れなかったりする場合は、ひとりで抱え込まず依頼するようにしましょう。
次に、各種手当の申請・手続きを行います。「看護師の産休・育休中に支給される手当の種類」を参考にして、手続き方法や期限を頭に入れておきましょう。最新情報や詳細は自治体のサイトなどでご確認ください。上記同様、周囲にサポートを求めながら、必要なフローが漏れていないかを適宜確認することが大切です。
仕事と家庭の両立をサポートする制度には「短時間勤務制度」「子の看護休暇」などさまざまな種類があります。支援制度の概要については、一般財団法人女性労働協会「育児中の女性労働者への配慮」に詳しい解説があるため、気になる人はチェックしてみると良いかもしれません。状況に応じて支援制度を上手く活用しながら、仕事復帰に向けて準備を進めていきましょう。
▼関連記事
看護師が育休明けにつらいと感じることは?不安や悩みを解消する方法も解説
看護師の働き方は多種多様!職場・雇用形態・勤務形態ごとの種類を解説
子どもが小さいうちから職場復帰をしたいと考えている看護師は、早めに保育園に関する情報収集を行いましょう。翌年4月入園を希望する場合は、見学は夏〜秋ごろ、入園募集は秋ごろから開始するのが一般的です。職場に復帰すると、生活環境もガラリと変わるため、ライフスタイルについてパートナーや家族と十分に話し合っておくことが大切といえます。
▼関連記事
看護師が安心して仕事を続けるために、ポイントを押さえて保育園を選ぼう!
ここでは、看護師の産休についてよくある質問を紹介します。
看護師の職場によって異なりますが、基本的に産休や育休中には給料の支払いは行われません。その代わりに「出産育児一時金」「出産手当金」「育児休業給付金」「児童手当」などが支給される場合があります。詳しくは「看護師の産休・育休中に支給される手当の種類」をご覧ください。
退職することは可能です。ただし、退職する前提で産休や育休を取得するのはルール違反となります。育休後の退職は、職場に大きな影響を与えることを念頭に置いておく必要があるでしょう。詳しくは「看護師は育休明けに退職できる?仕事を辞める理由や注意点をチェック!」を参考にしてみてください。
お子さんの預け先を考える必要があるため、保育園や職場の託児所に関する情報収集は早めにしておいたほうが良いでしょう。保育園の場合は役所、職場の託児所の場合は担当者や同僚に問い合わせてみてください。「看護師の育休明けは不安が多い?仕事と子育てを両立する準備やコツを解説」の記事も参考になるかもしれません。
ママさん看護師がおらず実績がなかったり、看護師の補充が難しかったりする場合は、スムーズに取れない可能性もあるでしょう。また、取得できた場合でも、早期の復帰を希望されるかもしれません。子育てしやすい職場については「看護師が子育てしやすい職場や勤務体制は?支援制度や仕事と両立して後悔しないコツ」で詳しく解説しています。
産休とは、正式名称を産前・産後休業といい「労働基準法第六十五条」で定められている制度です。産前と産後に分けて取得でき、産休中には出産育児一時金や、出産手当金などの手当を受け取ることもできます。妊娠中もできる限り仕事をしたいと考える人は、自身の体調やご家族と相談しながら、ぜひ有効活用してみてください。
なお「将来的に産休を取りたいと考えているが、現職では言い出しづらい」「家庭と両立する上で、自身の看護スキルにマッチした働き方が知りたい」という方は、レバウェル看護に相談してみませんか?レバウェル看護は、看護師専門の転職支援サービス。職場の内部事情を詳しく知れるため、ママさんナースの声も参考にしながら、伸び伸びと働ける職場に転職することが可能です。
「まだ妊娠していないため、相談するのに気が引ける」という場合は、情報収集のみのご利用も可能です。さまざまな求人を比較検討することで、現在の勤務先を客観視できたり、新たな気づきを得られたりするかもしれません。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
記事の制作について
「レバウェル看護 看護師さん向けお役立ち情報」では、
記事の制作・公開にあたってのポリシーを定めています。
詳細は下記よりご確認いただけます。
キャリア
働く場所
選考対策
資格
その他
読みもの
連載