特集
2020.3.5
長いこと看護師をやっていると、看護学生のときに感じたあの患者への熱い想いはどこへいったんだろうと思うことがある。
患者さんのことを思って書いた看護研究、なつかしいなぁ。
年々自分の責任が重くなるたび、
「わたしって看護師ほんと向いてなくね?」
って感じる場面が多々あったりするの。
優しくしようと思っているけど、忙しさや余裕のなさゆえ、
患者にイラっとしてしまうことがある。
しかも、結構頻回にある。(笑)
なんならデイリーにある。
認知症で100回やめてと言っても何度も同じことをする。
しょうもないことでクレームみたいなことを言う。
死ぬんじゃないかってくらいに忙しいときに、
空調とか給茶機のこととか、
「もういいやん明日でも」ってことで質問攻めにしてくる。
「もう言うこと聞いてーー!!!」
「そんなこと後にしてーー!!!」
って心のなかで叫びながら、なんとか笑顔をつくろって対応するけどね。
どんだけ頑張ろうとしたって、時々顔にでちゃうこともきっとあるんだと思う。
よく看護師が怖いって言われる原点って、こういうとこにあるんだろうなぁ。
でも、どれだけ患者さんに理不尽なことを言われても、天使のような笑顔で終始対応できるナースもまれにいるのよ。これをナースの逸材と呼ぼうか。
あんた人生で怒ったことあるのかい?って聞きたくなる、素敵な素敵な天使のナース。
そういう子を見て自分と比較したらね、
あー、わたし看護師向いてねーわって思うんだよね。(笑)
わたしクズじゃん、みたいな。(笑)
理不尽な患者や、大変な認知症の患者にもイライラしない、優しくできる。そういう天使のナースみたいなひとこそ、天職なんだと思うわ、この仕事。
病気で入院している自分の家族を思うと、心配でたまらない。
家族を大事に思うからこそ、患者家族さんって看護師さんにああしてほしい、こうしてほしい、っていう気持ちが芽生えて当たり前だと思う。
わかってる。そんなことは。
でもね、そんな気持ちを悟りながらも、
実際看護師として働くと、患者家族さんにイラっとしてしまうこともある。
器が小さい看護師でごめんなさい。
たいていの患者家族さんにはそんなこと思わないんだけど、
ときどき当たる、
l 患者の介護方法やケア手順を細かく指示してくる家族さん
l クレーマーな家族さん
l 神経質な家族さん
看護師的にちょっと対応が辛くなる「患者家族のタイプ」。
こういうタイプの患者家族さん、私、正直めんどくさいと思ってしまう(笑)。
看護師をイラっとさせてしまうツボをストライクで押すから。
でも冷静になって考えれば、
どれだけ看護師に威圧的な態度をとる家族さんだって、患者を大切に思うからこそ。
そんな家族さんの気持ちは十分わかっているのに、心から優しくできない自分がいたりする。
患者家族の思いを汲めても、患者家族に正しい看護ができない。
この器の小ささ。
看護師向いてないと思う。
看護師たるもの、ひとの命を守る仕事。
常に向上心を持って、医療の勉強をしないと成り立たない。
わかってる。知ってるよそんなこと。
でもぜんぜん勉強する気もない。
わりとしないでも成り立ってたりするから、余計する気なくなるっていうか。
だから、今以上なかなか知識もつかない。
看護師ってさ、勉強する範囲なんてすごく広い。
本気でやりだしたらね、1年365日で足りない。
特に急性期なんて、やたら範囲が広いって言うか。
でも何回勉強しても忘れるんだよね(笑)。
検査データのアセスメントをひとつ覚えたら、心電図の波形をひとつ忘れて。
心電図の波形をひとつ覚えたら、メジャーな薬の禁忌とか副作用を忘れて。
ひとつ覚えては、ひとつ忘れ、
覚えられない自分に嫌気がさして、もう勉強する気すら失う。
もうぎりぎりでいいわ、みたいな。
とりあえず今日が終わればもういいわ。みたいな。
看護師って本当に向上心が強くないとダメだと思う。
わたしはたぶん向いてないんだろうな。(笑)
バリバリの看護師=夜勤ありき。
でもね、わたし最近悟った。
30才越えてからの、急性期病院の夜勤は「マジで無理」。
体力・気力ともに揃ったひとじゃないと続けられないのよ。
2交代夜勤明けの朝7時の眠たさ。
いや、「眠たい」とかじゃないな。
意識がない。
この意識レベルで申し送りしろっていう無理難題。
申し送らなあかんこと、抜けまくる。
脳梗塞でも起きてるのかなってくらい、申し送りのとき呂律まわってない。
たぶん相手も聞き取れてない。
でも相手もそこを察してくれるチームナーシング。
明け休み1日で足りない。3日くらいほしい。
急変とかあった夜には、こっちが急変しそうになる。
でも同じくらいの年代でもさ、淡々と疲れた様子なく仕事をこなせるナースがいるのよねー。
活気も体力もあるようなひと。
そういう同僚をみたときに、
あ、わたし急性期系はもう無理なんだろうなって悟る。
勤勉、優しさ、体力に気力・・・。
わたしどれも当てハマってないかもしれない・・苦笑。
でもね、やっぱり看護師ってイライラするし、
常に勉強しないといけないし、
タイムリーな仕事ゆえ、体力・気力をキープしないといけない。
看護師さんって本当にこの仕事がこころから好きじゃないと、患者さんに優しくするのも、バリバリ働き続けるのも、しんどい仕事かもしれない。
看護に対して勤勉で、どんな患者さんにも優しくできて、体力も気力もある。
そういうのって、根本的にこの仕事が好きじゃないと生まれないからね。
〈イラスト:Kaoll〉
https://kaoll0719.wixsite.com/illustrator
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〈マリアンナさん公式ブログ『看護師になったシングルマザーのブログ』〉
https://nurse-singlemother.jp/?page_id=11
〈編集部より〉
いかがでしたか。
深くて、考えさせられる記事でしたね。
多くの看護師がぶち当たる「私、看護師向いてないかも」。
それはつねに、弱音や愚痴やらを内包している言葉。
でも、こうして冷静に列挙されると、自分のことも冷静に考えちゃいますよね。
大きな壁です。
・・・でも、
向いてないかもしれないけど、
やっぱり「好きかも」が10回に1回か、100回に1回あって、
それで持ちこたえてる。
それでいいのかもしれません。
看護師はいなきゃいけない、減ってはいけない、
尊い職業なのですから。
看護されて幸せになる人がいる限り。