「終末期の拘束、反対です!」看護師としてやむを得ない理由もわかるから…マリアンナの涙の訴え【ナースが物申す第35回】

2020.10.1

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わたし、看護師をするうえですごくイヤだった仕事があります。

それは、「終末期の患者を拘束すること」

もちろん患者さんにとって、安全のために拘束をせざるおえないからこそ拘束をしているわけなんだけど….。正直、老い先長くない数日で亡くなることが目に見えている患者さんの手足をくくりつけるってことに、わたしはすごく罪悪感を抱いてしまうのです。

だって、わたしだったら人生の終わりに、手足をくくられて終わりたくないって思うもの。

それってすごくつらい。

だからそれを見るのもイヤだけど、拘束する側になるのはもっといやだと感じるのよ。

ごめんね、と思いながら、仕事だと割り切りつつも、わたしのしていることは間違ってないのかなぁと自問自答する。

まだ意識がある患者さんを拘束するとき、憎むような、恨めしいような、なんでそんなことするのって言いたいような目でじっと見つめられたりするんだけど、そのときは本気で仕事やめようって思うから。そうだよね、相手から見たらわたしはすごく悪人だと思うもん。

あの役割、すごく精神的にしんどいなーと思う。

拘束はしたくない、でも看護師は限界である

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だからって、医療現場で拘束はしなくてもいいのか?

って言われたらそんなことはなくて。

認知力が低下していたり、興奮状態の患者に致し方なく安全のために拘束するのは、医療現場では必然なことなのです。

というよりも、医療現場では拘束なしで看護することに限界を感じる、といったほうが適切かも。

倫理的にはできるだけ拘束はしないほうがいいと思う。自分がされる側になったと想像したとき、やっぱり拘束されるってすごく辛くて、尊厳を傷つけられる行為でもあると思うから。

とはいえ、ただでさえも人手不足のなか、一人の患者さんを見守っていてあげられる余裕なんかないのは事実。マンパワーさえあれば、患者さんに見守りできる人をつけて、拘束せずにいさせてあげられるんだろうけど。

そう考えたら人手さえあれば、拘束されずに済む患者さんも増えるのだろうか?

終末期に拘束されて意識を失っていく患者さんをたくさん見てきたけど、彼らには拘束が必要なんじゃなくて、人手がないから拘束しているっていう理由もどっかにあるよね。そばで見守るひとがいたら、別に拘束する必要がない患者さんってたくさんいるから。

 
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患者さんの「尊厳」ってなんだろう???

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医療現場で一番忘れてはいけないのは尊厳だなーって思います。

拘束ってやっぱり、ひとの自由を奪うこと。

いくら医療の法律で「してもいいよ」って言われても、そこに疑問を持たないといけないと思うのです。

考えてもみてください。

自分が死ぬとき。

手と足をベッドに括り付けられ、涙のひとつも自分でぬぐえない。

まして、人生の最後が「拘束されてました」


なんて、、ああもう辛すぎる。

私だったら耐えられない。

終末期の拘束って、すごく尊厳に触れることなんだと思うのよね。

終末期って人が人生を終える、大切なクライマックスじゃない。

もっともっと、手厚くケアされるものであってもいいと思うんだよね。

終末期の患者さんが、もっと手厚いケアを受けられるように

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人が死ぬ前、ターミナルの時期ってもっと手厚いケアができる環境があってもいいと思う。医療保険制度のお金のことは詳しく知らないんだけど、でももっと終末期のケアにお金が投資されてもいいと思うんですよ。そしたらそこに、人員や設備を増やせるんだろうから。

病院も、終末期の患者さんに手厚くしてあげたくても、経済的にそこまで人件費を使えないっていう現状があると思う。

でも、わたしは人生を終えるとき、できれば手や足を自由に動かせる状態でありたいと思うなぁ。

高齢化社会が進みすぎて、医療現場の倫理みたいなものが追いついていない

そんな気がする今日この頃です。

皆さんは医療現場でどう感じていますか。

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〈イラスト:Kaoll〉
https://kaoll0719.wixsite.com/illustrator

 
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プロフィール
ライター:マリアンナ
20歳で未婚の母になり、子育てしながら看護学校入学。看護師になったシングルマザーのマリアンナのコラムです。
反抗期息子の子育てと看護の仕事に奮闘中。
イラストレーター:Kaoll
美学美術史学科を専攻。博物館学芸員資格取得後、イラストレーター・DJとして活動。ユニークな視点とタッチで医療・保育などからファッション雑誌、カルチャーコンテンツなど多様な分野でイラストを制作。
サイト:Kaoll
Instagram:@djkaoll
X(旧Twitter):@djkaoll

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