患者さんの「死にたい」の声にふれた経験から延命治療、緩和ケアを考える。マリアンナの『ナースが物申す』【第40回】

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京都で起きたALSの女性の嘱託殺人事件を見ていて、いろいろ思うことはありました。

あの事件を見ていてわたしが一番気にかかったことは「死にたいと思いながら毎日を生き続けた彼女の苦しみ」です。

あの事件の後、関与した医師への批判とALS患者の生きる権利を訴える報道がよく流れていたけど。生きることに苦しみながら生きた彼女の気持ちにはフォーカスされることはなく。それもすごく気になったなぁ。

終末期の倫理って触れちゃいけないような感じもしているけど、臨床で働いてたら明らかになんか間違ってない?って思うことがよくあるんですよね。

参考ニュース記事:https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/314861

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「死にたいのに。」望まない延命治療やケアを受ける患者さんたちの声

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「本当は死にたいんです。」

「死にたいのに、自分で死ぬこともできないことが辛い。」


「死ぬのを手伝ってほしい」

今まで看護してきた寝たきりの患者さんが何人かそんなことを言っていました。どちらかといえば、若年層のほうが死にたいという思いを強く訴えてくることが多かった気がします。

間近看ている看護師だからこそ、そういう患者の気持ちを聞くたび、その思いは否定できないなって思っていました。まだ人生これからって年齢で、寝たきりになってしまう。長くない余命がわかってしまう。自分が衰弱していくのを理解しながら生きることは、決して精神的に楽なものではないだろうと察します。わたしも同じ立場なら「死にたい」って言うかもしれない。

わたしは、患者が望まない延命や治療は反対派です。経管栄養も、本人がいらないといったらそのときに中止してもいいと思う。健常なひとでも食べることを拒絶するときがあるんだから。生きたいと思うのも自由だけど、生きたくないと思うのも自由じゃないんでしょうか。

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延命治療で問題に思うこと

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臨床で患者さんをみていると、「終末期」に関して問題に感じることがふたつくらいあって。

ひとつは、患者の延命に対して「家族の意思が一番に尊重される」こと。

患者さんは「もう生きたくない!」「もうそっとしといて!」っていうんだけど。「生きててほしい!」と思う家族の意見が尊重される場面はよく見ます。苦しい治療を受けるのは患者なのに、認知症だから、高齢者だからと言って本人の意志は尊重されず、延命治療に至る患者さんを見ていると看護師として正直悲しいものがある。

本人が望んでする分にはいいけど、望んでいない治療をされるって、患者さんからしたら辛いよね。

もうひとつは、たいてい「延命を始めたらやめられない」こと。

元気なときは延命を受けて、少しでも生きていたいと思うこともあると思う。でも体が衰弱していくなかで、もう積極的な治療は止めたいって思う患者はたくさんいるんじゃないかな。今回起きた嘱託殺人事件のALS女性も、治療を中止できないことをすごく辛いと言っていたと、記事で読みました。

今の日本では、基本的に延命処置を一度してしまうともう中止できないことは多い。

治療をやめたいときを選べない。治療に苦痛が伴うにしても、それを受け続けなければならない。一度積極的に生きることを選んだあとは、生きることに消極的になることが許されない。それって、すっごい一方通行な選択肢だと思う。選択肢が少なすぎて過酷すぎる。

治療は「本人の意思」のもと、あるべきものだと思う

日本の医療の全体において、「生きること」が目標になりすぎているというか。そんなに死ぬことが悪いことなのか?っていうくらい、死を忌み嫌う感じがすごく気になるよね。生きている限り、いずれ死ぬことは当たり前のはずなのに。

本人が死を受け入れたうえで、ホスピス病棟みたいに、時期がきたら最期を自分らしく過ごせる環境がもっとあったらいいんだけどなって思う。

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わたし、ホスピスのケアが結構好きで。

積極的な治療はせず対症療法のみ。患者が感じる最大限の苦痛は取り除いてあげて、あとは「その人らしさ」を尊重した最期の生活を応援する。人の最期にふさわしい環境だなぁと。

死ぬことを準備したり、受け入れたりすることは、ダメなことなんだろうか。からだは死を準備していくのだから、心も準備していくのは自然なことでもあると思う。死の受容は終末期にすごく大切な課題。からだは死に向かっているのに、周りに「生きろ」といわれんばかりに望まぬ延命処置をされる患者さんの気持ち。すごく辛いんじゃないかな。

今の医療は、患者が亡くなったあとに残された家族に訴訟されるリスクを恐れて、家族の意志を尊重しがちになってる感じ。患者が迎える死に対して、まず尊重すべきは「患者自身の思い」のはずなんだけどね。

患者さん本人が「積極的な治療されたくない」というのなら、それも意志。これからはもっと、患者さんの気持ちを尊重したケアが提供されるようになっていけばいいなーと思っています。

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〈イラスト:Kaoll〉

https://kaoll0719.wixsite.com/illustrator

プロフィール
ライター:マリアンナ
20歳で未婚の母になり、子育てしながら看護学校入学。看護師になったシングルマザーのマリアンナのコラムです。
反抗期息子の子育てと看護の仕事に奮闘中。
イラストレーター:Kaoll
美学美術史学科を専攻。博物館学芸員資格取得後、イラストレーター・DJとして活動。ユニークな視点とタッチで医療・保育などからファッション雑誌、カルチャーコンテンツなど多様な分野でイラストを制作。
サイト:Kaoll
Instagram:@djkaoll
X(旧Twitter):@djkaoll
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