
テレビで戦争の報道が流れるようになってから、看護学校のときの講師に言われたことを思い出した。
発展途上国で数年看護師をしていたその講師は、
「日本の看護ってね、すごく遅れてるんだよ」
って言ってたの。
海外の看護学校では、銃弾に打たれた患者の処置をはじめ、日本ではなかなか起きないエマージェンシーを想定した教育を受けるらしい。発展途上国のほうがよほど技術は進んでいるんだと。

そのときは「へー」ってくらいの気持ちで聞いていたけど、そんな紛争とかテロが起こりそうな国の看護の話、どこかで他人事だと思ってた。でも今の世界情勢ってあながち他人事でもないような気がしてきたよね。そういえば、ピストルで撃たれたひとの観察項目とかリスクとかよくわからないなぁ・・・なんて考え始めた。
日本の医療はとても進んでいる、なんて言われていたのはだいぶ前の話で、今の時代日本の医療っていうのはすごく遅れているのかもしれないね。
もしも日本が他国に攻め入られることがあったら、日本の看護師はどれくらいその状況に対応できるスキルがあるんだろうか。即戦力になる看護師はどれくらいいるものなのか。
リアルに救急や重症患者を看れる看護師って、そんなにはいないと思う。
「アメリカでは抗生剤をショットで打ってるらしいよ」って、感染の認定看護師が言っていたけど、もし日本が外傷の患者で溢れたら、悠長に滴々滴々、数十分かけて抗生剤をひとりずつ滴下していくんだろうか。普通に看護師すぐ足りなくなりそう。考えただけですぐ医療崩壊しそう。

そんな心配ごとを考えだしたらきりがないんだけど、あのときの講師の話をふと思い出して、「日本の看護は遅れてる」っていう話を、今更ながら、確かに納得してしまった。
その講師はJICAで海外に看護師派遣をされていた人なんだけど、他にもJICAや国境なき医師団などの「海外看護師派遣」を経験したひとの話を聞いたことがある。
その人達の話は日本では考えられない話ばかりで、おもしろかった。
たとえば、現地で子どもたちとサッカーとかして遊んでいると、その子どもたちが遊びながらもずっとiPhoneを狙ってたりするらしい。虎視眈々と。気を抜いてたら普通に持っていかれちゃうんだって。だからiPhoneとか高価なものは肌身離さず持っとかないといけないとか。世界の地域によっては子どもたちが侮れないって、すごい世界だよね。
きっと看護する患者層もまったく違うと思うの。
日本では高齢者看護は主だけど、海外にいくとまた対象になる年齢層も違うんだろうな。若い世代の外傷や性感染症なども多いんだろうか。

わたしは人と違う経験をすることに興味があるので、どうしても看護師の海外派遣を経験してみたくて、一度家族に相談してみたんだけど「子どもを置いて母親があえて死ぬリスクの高いところにいくのはありえない」と即反対された。発展途上国って、すごく治安が悪い所も多いから、そう言われたらそうだよね。
海外派遣は、行けるチャンスがあれば行けばよかったって、今でもちょっと未練が残ってる。海外で働くっていうのは、たいてい若くて独身のひとだけが経験できるものだと思うのよね。
昔から日本では、同じ会社でずっと定年まで勤めあげることが良しとされていた時代もあったけど、今はだいぶ違ってきたよね。わたしはずっと同じ場所でいるより、できるだけ多くの経験をしたほうがいいと思うし、できるなら日本以外の国も知っておくと良いと思ってる。狭い世界や職場だけで生きていくのは、ある意味井の中の蛙だし、外の世界を知らないでいるとどんどん考え方も遅れていってしまうと思うから。
時代もニーズも移り変わっていくからね。どんな時代になっても、その時代に適応できる人間でいたい。わたしも子どもが巣立ったら、なんか人と違うことをしてみたい。そんなことを思っている今日この頃です。
〈イラスト:Kaoll〉
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